2011年06月21日
【 クセ取りB 】
こんにちは。
気温的には過ごしやすいですが、流石に梅雨、、、陽の光が恋しく成ってしまいます。
さて、久しぶりに今回は技術のお話し、クセ取り(衿編)の御紹介をさせて頂きます。
かなり専門的な内容ですので、サラリと読み流して下さい。
(もしかしたら、眠く成るかも知れません(笑))
言わずと知れた、、、、。
上衿を御覧下さい。そして、読み終えた後 もう一度この写真を御覧下さい!!!
本題に入る前に、時々頂く御質問にも触れさせて頂きながら本題へ入らせて頂きます。
BESPOKEにおき、衿作り等は100%手縫いのみで作られますが、手縫いがどうこう言う前に、こういったクセ取り等の立体成型や、上衿(共生地)を地衿(衿芯)への『据え工程』という馴染ませて躾ける技術の方がはるかにキモと成ります。
ですが、そこまで専門的に掲載される媒体や、むしろ記事に出来る方が居られないので(専門技術ゆえに)表層的な手縫い部分に目がいきがちなのは否めませんね。
だからと言って皆様が専門技術を知る必要も無いかも知れませんが、こういった1つ1つの技術の積み上げの上でTAILOREDが成り立っているとお感じ頂けましたら幸いで御座います。
上衿の作り方(仕立て方)にはレベルによる段階が御座います。
ハンドメイドで仕立てる技術(カテゴリー)の中でさえも存在しますが、洋服を誂える事自体が当り前だった時代の物作り、これら技術の多くはあるべき姿であり、模範でもあります。
縫製工場(機械化)の発展と共に既成服が増え、それらは大量生産され、お値段をも安くする為にどれだけ効率良く作り出す事が出来るかと考えられていきます。
例えば、ハンドホール等は手でかがればそれだけ時間がかかると共に、『かがれる』という技術も必要となります。また、かがる方々の腕により品質にムラが出るとも言えます。
そこで特殊な釦ホールミシンが開発されました。
ガッガッガッと1つかがるのに10秒と掛からないでしょう。品質も当然均一ですね。
様々な個所で多用される『ハ刺し』という縫い方がありますが、これも一針一針手縫いしていたら相当時間がかかると共に、やはりホールと同じ問題が生じます。
そこでルイス・ミシン(すくいミシン)が開発されました。
生地の厚さにより すくい度合いも調節出来ます。
信じられない程の時間短縮です。これらすくいミシンはラペルや地衿(衿芯)、裾上げ(ヘム止め)などにも使われます。≪ヘム=折代…裾や袖口等の折り返してある部分≫
大量生産・工期短縮する前提であれば、これらに代表される機械類は欠かせず、皆様の知る有名なハンドメイド・スーツメーカーやサルトリアでさえルイス(すくいミシン)を使っています。
ルイスが悪い訳ではありません。ただ、ハンドメイド=総手縫いでは無いという事に成ります。
大抵の場合、それらが使われる所は完成してしまえば見えない・分からない内側の部分に成ります。
お客様からも御質問を頂いたりも致します。
弊店では、BESPOKEでもミシンも使用しますし、100%手縫いではありません。
HOUSE STYLEはルイスミシンも使われています。
一番大切な事は、手縫い・マシンのメリット・デメリットを踏まえ、理想とする物作り(服作り)に対する自己の思想に対し、『どの様に構築するか』『思想に対しどの様に筋を通すか』だと思います。
適材適所的な考えや、付加価値的、時間、強度、、、、、手縫いでなくては・手縫いだからこそ という部分は勿論沢山ある訳です。
ただ、クセ取りや各所据え行程、様々な個所のゆとりの入れ方、様々な表裏の関係、人体の可動への理解、、、、全て繋がってきますので、もう本当に沢山の知識や経験等が必要となります。
単純に、『手縫い』だけならお母さん方でも出来ます!
○○様、如何で御座いましょうか。
注文服は、打合せ・採寸・型紙・裁断・縫製・・・・様々な工程を経て一着の洋服と成ります。
そして一着のお値段は、本当に様々な事柄が含められ決められております。
ここから先は皆様の御判断に委ねられる所で御座います。
一番良い事は、信用・信頼出来るTAILOR(SARTO)を持つ事ではないでしょうか。
そんなTAILORに成れる様、日々精進と共に毎日が勉強でもあります。
さて、本題に入りましょう。
そもそも単純に衿作りと申しましても、その作り方には沢山の作り方が存在します。
一般的にTAILOREDでは地衿(衿の土台です)と呼ばれる麻芯を先に作ります。カラークロスと呼ばれるバイアス地と麻芯(衿等)と重ね合わせ、『ハ刺し』により一体化させます。
(一部に伸び止め効果を持たせますが、その手法も様々です。)
衿の麻芯、業界では昔『エラス』とも呼ばれ、これはエラスティックから来ています。
バイアス地のエラスは、名の如く、弾力性に富み、自由自在に成形する事が可能です。
だからこそ、肩・首回りの複雑な曲面に馴染ませる事が出来るのです。
しかし、エラスはその特性ゆえ衿に適しているかも知れませんが、こと上衿(地衿に被せる共生地)に関してはそうはいきません!!
特に植物繊維(綿や麻)やモヘア等は融通性がかなり低いので、難易度が高く成るのです。
(モードチックなカーブ線の強い衿デザイン等も生地の融通性を超える事もあるでしょう。)
その地衿(土台の衿芯)を身頃に付け、エッジ線(衿の外郭出来上がり線)でカットし、上衿(共地)を乗せていきます。
(この写真はディスプレー用BESPOKE SAMPLEですが、ハ刺しがエッジラインギリギリまで刺されていませんね。この刺されていない隙間に、上衿のエッジ折代を差し込む訳です。大雑把にハ刺しして地衿作りをした場合は、折代が入る所のハ刺し糸を切って隙間を作ります。)
人間の体はとても複雑です。首でさえ、ただの円柱では無いですし、肩周りの筋肉から、骨格的な事、首でさえ頭へ向かい多少細くなりますね。
地衿自体は馴染ませられても、その複雑化したインカーブやアウトカーブに生地を添わせるのは技術でしかありません。
複雑に立体化された地衿に、2次元の生地を乗せても馴染む訳がありませんので、ここで『クセ取り』が必要と成ります。
写真はストライプのLESSLON(モヘア混)です。
生地に白いチャコで矢印があります。
これは、BODYと同じ生地方向を示してあります。生地によっては合わせないとBODYと見え方や色味までをも違って見えてしまいます。
背中心と柄を合わせ、生地の横方向を確りと合わせて、生地方向(毛並み等の生地の向き)をBODYと合わせて先ずエッジラインを作ります。(赤い矢印の所です。)
正確に横地の目を拾う(横地・横糸を揃える)には、横糸を何本も抜きます。
起毛生地等は流石に横糸を抜かないと、正確な横地の目は拾えません(見えません)。
そうすると、縦糸がケバケバと出てきます。
横糸が端まで一本で解ける位まで抜き、それに伴ってケバケバ出た縦糸を切り揃えれば『赤矢印』の線の様に正確な横地の目を導き出す事が出来ます。
次に、必要な所に印を付け、地衿型紙より大体の荒裁ちにより切り出し(裁ち合せ)ます。
(必要な印、慣れれば特に要りませんが、帰り線や中心、肩位置等に伴いクセ取りで成形するカーブのバランス判断を致します。)
写真では上下が反転していますが、赤矢印が横地の目の通ったエッジ線です。
・・・・衿は折返りますので、生地方向はこれで良い訳ですね。
これを、、、UFOの様な形にクセ取りで成形します。
縞があると分かり易いですが、衿腰部を自身に向けて(エッジ線を奥に)見ますと、ここが重要なのですが、エッジ線をUFOの様にアウトカーブさせたからといって、縞が自分に対し放射線状に成ってはいけません。
それでは地衿に馴染ませられないのです。
無理にその上衿を掛けますと、首にあたる内側や帰り線部の生地が余り、波が寄ってしまいます。
故に、青矢印の様に逃がす様にクセを取ります。内側に余るであろう生地の分量を出しているとも言えます。
エッジ線がどんな角度であろうと、自分(衿腰側)に向かい、平行に直下線に縞が走る様にクセ取りを施します。
《直線をカーブにクセ取りをする》
上衿に付いて考えますと、これは型紙的に言えば『ネカシ=寝かし』を付けている事に成ります。
例えば、クセ取りしない長方形の生地(紙でも良いですが)を丸めると、単純に筒となり、円柱に成ります。
では、扇型の様に湾曲した物を丸めると、円すい型に成りますね。
これがネカシであり、度合いをネカシ量と言います。
人間の首は単純な円柱ではない という事で御座います。
・・・・・・・・ここからは『上衿掛け』という工程であり、また別の技術を要し、地衿に馴染ませ、躾で据え止めていきます。
・・・・・・・・基本的に一枚衿で作りますので、衿の折返り線の下部である『衿腰部』をクセ取りにより伸ばす事もあります。色々手法やバリエーションもありますので、なかなか一概に御説明出来ませんね。
首の形状や位置、太さ等も様々なので、衿作りもそれらに追従させなければ成りません。
ボウ衿やカマ衿などは有名な所ですが、更に言えば、どの様なFIT性含め衿作りの思想を持つかにより、理想の衿作りはまた技術の世界に入ります。
私には、私の思う着心地、軽さ、FIT性というものがあり、それらに伴う技術により衿作りを行っているという事に成ります。
教科書通りでは無いという事ですね! だからこそ発展が有るのです。
・・・・・・・・では、ここまでの技術や手間を掛けられない縫製工場製などは、どの様に作っているのでしょうか!?
上衿に関し、先ずここまでクセ取りなど出来ませんので、上記写真のUFOの様な形(予めクセ取りされた形)に最初から裁断します。
(ライン生産の工場の方々はTAILORではないからです。職人さんの作るハンドメイドでも技術や工賃次第で簡略化する・出来る個所でもあります。TAILOREDは省こうと思えば、本当に沢山ありますので、それこそ完成してしまえば皆様には分かりませんよね・・・。)
これで、技術有するクセ取りが必要無くなりました!! 考えてみれば大胆な行為です(笑)。
ではクセ取り衿と、そうでない衿、何が違うか!?
それは先ず見た目です。(勿論これだけでは無いですよ!)
格子柄の生地で衿を作りますと、クセ取り衿は綺麗に横地を通す事が出来ますので、グレンチェックやウインドーペーン等は見た目がとても素直にエッジライン(出来上がっている端のライン)がラペルの刻みから逆の刻みまで、常に平行に横地柄が通ります。
しかし、後者の様なクセ取り後の形で裁断した衿は、横地が切れてしまいます。柄が通らないという事ですね。
また、後者は安定した品質を保つ為、上衿に接着芯を貼ります。
それだけ立体複雑な地衿に生地を馴染ませるという事が難しいという事ですね。
(弊店でのクセ取り衿は一切の接着芯を使用しません。)
双方は着心地的に比べれば、衿作り全体的に見て完成度合いのレベル(ステージ)が違いますが、、、
お値段や工期に伴う部分とお考え下さい。そのお値段や工期の差が双方にはあると言わせて下さい。
ただ、私自身はハンドメイドでしたら、このクセ取り衿が当り前だと思っていましたが、そうでは御座いませんでした。
少々驚きましたが、単純に後者の方が簡単ですし、技術差も出ません。
まして、お客様より「衿のエッジは横地通してね!」と言われる方もおりませんので。
ですが、見れば分かりますからね。
この様に、様々なTAILORやSARTORIAがあります。
各店の特色やお値段など、本当に様々です。値段だけで判断されてしまう事も御座いますが、高額には高額なりの理由が必ず御座います。
弊店でも、HOUSE STYLEではクセ取り衿は出来ません。(行えば、現状価格枠では今は無理という事です。)
ですが、上衿作りの品質判断材料としまして『一枚衿』というくくりがあります。
例えばモヘアや、植物繊維物などの融通性低き素材、そしてお安い御値段のスーツや婦人物の衿等は、衿腰部分を別パーツとし、上衿が2枚のパーツにより作られている物が多いです。
簡単であり、馴染ませやすいからです。
一枚衿という事だけで、2枚衿ものより技術を有するのは言うまでもありません。
ここにHOUSE STYLEが属しますが、更に上階が存在するのが技術であり、TAILOREDたる本来あるべき姿なのです。
技術の高度さ、それに伴う習得具合、相反する生産量、、、見合うお値段。
そしてお客様方の価値観も人それぞれです。
TAILORED技術、ずっと残していきたいです。
紳士服を作るうえでは前提となるものです。前提の理解なければ良い服作り等、到底出来る訳がないと思います。
往年のハリウッドスターの方々含め有名人の方々は多くの写真が残っておりますが、今度良く上衿を見て下さい。
皆 良い仕立ての素敵なスーツを着ておられますが、上衿の横地が通っているスーツを着た写真を見る事が出来る事と思います。
街中や、電車内にも居られますでしょうか・・・・。
柄物であれば、一目でハンドか、そうでないか、区別が付いてしまう部分ですね!
一つだけ、念を押させて下さい!
これらは優劣を決めるものではありません。
例えば弊店で言う BESPOKE ORDER と HOUSE STYLE ORDER でも今回の話による違いが有る訳ですが、それらは立ち位置であるステージが違うものであり、同じ土俵で比べられぬものです。
双方に特徴や、メリット・デメリットがあり、皆様方の価値観によりチョイスされているだけに過ぎませんので誤解無きよう 宜しくお願い申し上げます。
・・・・・・・・・・・この度は長文でした。
技術の話は簡単に説明が済まないので、どうしても長く成ってしまいます。
また折を見て技術のお話しをさせて頂けましたら幸いで御座います。
最後までお読み頂きまして、有難う御座いました。
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久しぶりの技術のお話、超絶技巧が駆使されていることをあらためて感じることができ、とてもためになりました。
その技術の話とは関係ないのですが、先日ディレクターズスーツを着用した際に、悩んだことがあり、質問させていただきます。
高尾にある武蔵野御陵を初めて訪れました。大正天皇ご夫妻、昭和天皇ご夫妻に敬意を表しての装いだったのですが、ネクタイは黒の結び下げでよかったのでしょうか?
今後、靖国神社にもディレクターズスーツで参拝をしたいと思っており、そのときにどうするべきかも気になっており、御教授いただきますよう、よろしくお願いします。
こんばんは。こちらこそ大変お世話になっておりまして、誠に有難う御座います。
超絶技巧は言い過ぎで御座います(汗)。
ただ、一つ一つの技術の積み上げにより一着のスーツが出来ていると御感じ頂けましたら幸いで御座います。
さて、御質問の件ですが答え方がとても難しいですね、、、。
先ずは、その様な事柄(行為)に対し、気持ちが重要であり、恰好はそこまで畏まらずとも良いかも知れませんね。
ですが、あえて拘るのであれば、、、例えば小泉元首相が靖国神社を参拝した際には、デイ・フォーマルのモーニングスタイルであり、シルバータイをしていました。
立場もありますし、恰好については確りと助言される方がおられる事と思います。
家族などがお亡くなり、『喪に服す』という言葉がありますが、それらには期間があり いつかは喪が明ける訳ですね。
であれば、葬儀など含め喪に服しているのであれば黒、そうでなければスパイタル・Fやシルバーでも良いのではないでしょうか。
そもそも、そういった時に黒タイを締めるのは日本の文化です。
また、コードストライプTRには様々なバリエーションの色や縞がありますが、厳密には御祝い事や御不幸事で分ける事が可能です。
控えめで、大人しいめのソリッドタイであれば良いのではないかと思います。
・・・・的確なお応えが出来ずに恐縮で御座います。続きはお店でお話し致しましょう。
どうも有難う御座いました。