2011年07月26日
【 カラゲ縫い 】
こんにちは。
迷惑な被害をもたらす台風でしたが、
その間は気温も下がり随分過ごしやすく快適ではありました。
ですが、、、少しずつ暑い夏が戻りつつありますね。
今年の海は随分空いているそうですが、皆様におかれましては どの様にお過ごしに成るのでしょうか!?
さて、この度は BESPOKE TROUSERSより、普段はあまり気付かれない!? ディテールに付いて御紹介させて頂きます。
その箇所とは、 『 縫い代処理に付いて 』 です。
TROUSERSの根本的な構造は随分長い間変る事なく、変えようも無く!? 続いており、穿きこむ足に対し、外側と内側の縫い目、そして尻縫い目、フロントは釦かファスナーで閉じられるスタイルが一般的です。
洋服は幾つかのパーツで構成されており、それらを縫い合わせる以上は 『 縫代 』 というものが発生致します。
縦糸と横糸で織られた生地を裁断しますと、当然の如く 鋏を入れたその裁ち切り線は解れてきてしまいます。
故に、処置が必要と成ります。
例えば総裏地仕様の上着などは、縫代が発生する内側等は全て裏地で覆い隠される事に成ります。
なので、縫代含め 裁ち切り線が露出する事が有りません。
では、背抜き仕様等ではどうでしょうか。
総裏地であれば、本来隠れていた筈の背中の内側が(縫代類)が露出してしまう事に成ります。
であれば、その露出した縫代を 『 解れない様に 』 『 見映え良く 』 という事を考え処置する必要が出て来る訳です。
その処理のやり方については何通りも手法が御座います。
ハンドメイドやマシンメイドに限らず、物作りの価値観や思想により その何通りもある処理の手法から選ばれて行われる訳です。
これら縫代の処理法に関し、様々な手法が有る分 それらにはメリット・デメリットが存在しますので、それを見るだけで その服作りの価値観が垣間見れる部分でもあると言えます。
では、この写真を見て下さい。
左足の裏返し状態で、センターには内脇縫い目があります。
左側が股、右側が裾側です。下部には膝裏が付けてあります。
様々な理由により、サイズ調整含め お直しに対応出来る様に縫代は多めに取られています。
そんな縫い代(裁ち切り線)は、仕立てる上でどんどん解れが進んでしまいます。
既製服含め、工場生産物、または そこ(縫代処理)に価値観を見出さぬTAILOR仕立て物では、その縫代解れ止めに 『 ロックミシン 』 を掛けます。
皆様も見た事が有る事と思います。
それが極一般的な処理方法であり、安易で楽に処置出来るのが特徴です。
では、昔ながらのTAILOREDでは、どの様に処置していたのでしょう。
手縫いで解れ止めを行います。これを 『空カラゲ』 と言います。
(一方通行の斜線の縫い目が羅列されます。)
カラゲ縫いは所々で使われる縫い方ですが、主に何かと何かをカラゲ止める縫い方です。
要するに、解れ止めを施しつつ縫い止める縫い方でもあります。
空カラゲは、何かに縫い止めるのではなく、単体の裁ち切り線を解れ防止の為にカラゲるので 『 空 』 という事なのでしょう。
生地は、縦糸と横糸の構成から成り、解れる=糸が組織から外れる という事ですね。
であれば、裁ち切り線を縫糸で絡め、織糸が外れない様に押えれば良いという事です。
この手法は、古い英国のTAILOED(古着)でも見受けられます。
(それらは何倍も粗く、かなり適当にカラゲてありますがっ!)
ですが、カラゲてあるのは丁寧に手を掛けた仕立てである証明でもありますが、英国製古着の多くはカラゲ縫いさえ行われず、 『 裁ちっぱなし!=縫代未処理 』 が多いのも事実です。
なぜならば、当時の生地は今で考えれば相当地厚であり、打ち込みもガチガチに密であり、あまり解れてこないのです。
であれば わざわざ手を掛ける必要もないですね!
こんな目立たない所に手縫いで、手間をかけ、、、、
これは穿き心地等には全く影響しません。ロックミシンでも、手縫いカラゲでも変らないのです!
では何故あえてカラゲ縫いを施すのか・・・
それは、今では付加価値でしかありません!
昔ながらの手法で、こんな所にまで手を掛けていますよ!
と、それだけの事です。
糸は主に、白毛という躾に使う太くて安い綿糸が使われます。
しかし、生地が薄地だと この太い白毛ではプレスによる 『 アタリ 』 が出てしまうので、そういう時は生地と相性を合わせ、細い糸でカラゲ縫いをします。
また、フロント周りや、特に尻縫い目の縫代は、着用する事により かなり摩擦を受ける個所でもある為、細めのまつり糸(シルク)等を使い、二重縫いします。
上から下までカラゲて、そのまま上へ戻ってきます。
そうすると、斜線の並びが逆向きで交差しますので 『 ×の字 』 の様に成ります。
この手縫いによるカラゲ縫い、これだけでは 『 ふーんっ 』 で終わってしまいますが、、、
そもそもTAILOREDとは、永い間着用する事を前提とし、お直しがやり易い様に様々な工夫が凝らされてきました。お台場仕立ても その一つですね。
ミシンより、手縫いの方が解くのも楽です!
では、TROUSERSで考えてみましょう。
大抵は 『 膝裏 』 が付いております。
穿き込みや動きによる滑りの効果や、膝の抜けを防ぐ効果もあります。
(古着には無い物も多くあります。)
長きに渡り着用すれば、膝裏が擦り切れる事は自然の道理です。
擦り切れてしまったら交換しましょう! という事に成りますね。
膝裏は、脇の地縫いで縫い込まれていますが、そもそもロックミシンや手縫いによるカラゲ縫いでも前身頃に縫い止められて合体しています。
ロックミシンを手早く、綺麗にほどくにはテクニックが必要です。
また、一度解いたロックミシンを、もとと同じ様に綺麗に繋げ、裁ち切り線に綺麗に掛ける事は大変難しい事です。
では、手縫いであればどうか、、、
部分的に、安易に手早く解け、カラゲ直しも大変楽です!
ハンドホール同じく、このカラゲ縫いも、擦り切れれば安易にカラゲ直しが出来るのです。
如何でしょうか!?
と、言われてもですよね。膝裏交換を行った事が無ければ、どれだけ違いがあるのか いまいち分からない事と思います!
特に穿き心地に影響なく、目立たなく、お穿きに成る方しか分からない個所です。
ハッキリ言って、そんなもどちらでも良いですよね!
だからこそ、物作り・服作りにおける思想や価値観に基づき 手縫い・ミシン踏まえ様々な手法が選ばれ構築されていきます。
スーツが一着出来るまで、、、
型紙作成から、最終プレス、釦付けまで 作り手である私達は様々な想いを馳せ、本当に多くの工程と時間をかけて仕立て上げて参ります。
個所によって理想的な処置方法は違います。
こんな些細な部分でもTAILOREDの一部であり、高額な御代金の一部であると私は思っております。
追伸
・・・・このカラゲ縫い、トニックやフレスコ等には不向きでもあり、私達もあえてロックミシンを使う場合もあります。
それは手抜きでは無く、優先すべくは素材対応です。
ことロックミシンや、ロック糸に関しましても、それらの技術発展は物凄いです!
BR○○○○等のラグジュアリーブランドもロックミシンを使います。
先に説明した通り、ロックは悪い訳ではありません。
あのレベルのブランドには、SUPER 180や200等の繊細な生地も多数扱います。
普通に縫代にロックミシンを掛ければ、プレスによるロック糸の『 アタリ 』がでます。
そんな事は百も承知だからこそ、アタリの出ない糸の工夫が施されます。
単純に極細の糸、、、これは当然 考えますよね! 本当に極細の糸!!
また生地に糸の色合わせをしなくても良い様に透明な糸さえ有ります! 釣り糸みたいです。
はたまた、フワフワな糸で まっ平らに潰れる糸(上手く説明出来ません!?)という攻め方の糸もあり、心底感心したものです!
こういった技術開発もある意味では本当に凄いのです。
ある意味では対極に位置するステージの物同士ですが、それらの持つ価値観が違えば 尊重すべき事柄が変り、攻め方もこれだけ違うのです。
洋服作り、、、、、本当に面白いです。
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