2012年03月27日
【 クセ取りC 】
こんにちは。
3月も終わりに近付いてきました。
寒暖差激しく、雨も多く、これも春に向かっている証拠なのでしょうが全般的に気温も低く、今年の桜の開花は遅い様ですね。
ピカピカの一年生が入学式を迎える頃には丁度咲くでしょうか。
先日、お花屋さんで桜を購入してきました!
一厘も咲いていないつぼみばかりの物を選んだのですが、店内が温かいせいで早くも開花です!!
やはり桜は良いですよね。とても春を感じます。
さて、この度は久しぶりに技術的なお話しをしたいと思います。
あまり良く分からないかも知れませんが、、、、イメージで感じて頂ければと思います。
今回は HOUSE STYLE ORDER より、K様御注文のスーツからトラウザースをお借り致します。
BESPOKE ORDER では当り前の事が、縫製工場製となるとそうは行かない事が沢山御座います。
だからこその工期の差であったり、お値段などにも反映してくる訳ですが、御注文頂いた皆様に『少しでも良い物を』と 念頭にH・Sの御注文の品一点一点全て検寸・検品後にプレスを施しております。
これらHOUSE STYLE ORDERの様なステージの物作りによるオーダー店は沢山御座いますが、ここまで行っている所はまずないでしょう。
技術もさる事ながら、結構時間もかかりますから・・・・。
ですが、行った物とそうでない物の差はかなり大きく、それを知っていればこそ と頑張っております。
では御覧頂きましょう。
【 股部分の縫代 】
トラウザースの股部分は、フロントからお尻に向かってカーブを描いております。
その方々の身体の厚みやお尻の具合などで幅やカーブ具合は相当違います。
これらを採寸(補正)により型紙的に合わせる訳ですが、その型紙線を縫製が邪魔してしまっては正しき採寸は意味を成しません。
また股やお尻周りに縫代がゴロゴロしていたら、それこそ穿き心地も悪いに決まっていますね!
では、どの様な処理をすれば 手を掛ければ具合が良くなるのでしょうか!?
トラウザースをひっくり返して、お尻の縫い目(尻グリ)のカーブ線を見て下さい。
生地はピンチェックなので生地の縦地・横地が良く見えますね。
赤い線で 逆L字に縦地・横地の線を示してあります。
この時、尻グリの縫い代は ピョ〜ンと起き上っています!!
専門用語で 『 ツレている 』 と表現致します。
簡単に言いますと、この起き上っている縫代は尻に当るという事です。
製図線は縫い目線を指しますから、その縫い目線より内側に縫代が邪魔をしてきていると考えて下さい。
では、ここで技術です!
その縫代をクセ取りにより成形(地の目を移動し、時には伸ばします。)致します。
起き上っていた縫代が マッタリと寝かしこまれ、身頃に吸いついています。
地の目を良く見て下さい。
先の写真での赤線は約90度のL字でしたが、その90度の角度をもっと狭く、、、
言いかえれば、製図線のカーブ具合より もっとRの強いカーブでクセ取りを行います。
強制的な技術により縫い代を殺し込んでおります。
クセ取りは生地の復元力により、ある程度は戻ってしまいます。
ゆえに、強めに取っておいて丁度良いという事に成りますのでカーブのRも強めに!
これで当たってしまうはずの縫代がスッキリ納まりました!!
尻グリ線から股、小股の所と自然な製図線で確りクセを取り、縫い目を割り直します。
では、逆のお尻に行ってみましょう。
やっぱり起き上っていますね!!
ソレッと!!
後は、片足の中に もう片足を突っ込み、後身頃の左右を重ねまして 今の尻グリ縫代を Mの字 に成る様にバッチリ潰し込みます!
これで股から尻周りは製図線通りのラインを描き、縫代が身体に当る事も無く、お尻に付かず離れず綺麗にホールドする事に成ります!!
こんなトラウザースを穿かれた事がありますか?
弊店顧客の皆様は当り前なトラウザースという事に成りますね!
・・・・これは、本当は私が工場さんにもリクエストし、そもそもその工程を施されて仕立て上がってきています。
しかし、、、プレス下さる方はTAILORではありませんから、私から見れば度合いが全く足りないので わざわざやり直している事に成ります。
それこそ、行っている物とそうでない物の差を知っているからです。
どうですか、スッキリと縫代が落ち着きましたね!
裏側の処理(他にもまだありますが!)が終わりましたら、表に反し、プリーツから腰回りをもう一度確りカーブ線部などのクセを取りながらプレスします。
そして、次に足のクセ取りを行います。
【 股下のクセ取り 】
身体に合った良い服を作る為には、人体を確り把握し理解する必要があります。
では、御自身でも直立した横姿を鏡で御覧頂きますと・・・
足は真っ直ぐな棒ではありません。
太ももや、膝、ふくらはぎの筋肉、そして個人差は有りますが 踵の位置は少し後側にいますよね。
シルエットの太いトラウザースなら、筒が太いですから足と随分布地が離れる事に成りますので、自ずと足のフォルムに対する考慮は必要なくなっていくと言えます。
しかし、細くなればなる程 足に筒が近い訳ですから 形状が合っていなければ当たる所があったり、突っ張ったり、、、そもそも筒が綺麗に落ちません。
写真を御覧下さい。
これが一般的です。綺麗に真っ直ぐですね! 足はカカシの様に棒かっ(笑)。
縫製工場で作られる物はオーダー・既製含め基本的に全てこう成ります。
簡易に作っているテーラーメイドでさえも同じ事です。
では、BESPOKE(ハンドメイド)の様に 手を施し、クセ取りという技術を施してあげると・・・・・
どうでしょうか。
足の形状に成っていますね。膝位置から下のふくらはぎの所ではらんでいます。
かつ、裾の位置は直下位置より少しだけ後側にいかせています。
逆足のストレートの方と重ねてみましょう。
全然違いますよね!!
ハンガーにかけてみても、そのカーブ具合は見てとれます。
先に申し上げた様に、クセ取りは若干戻ります。
ゆえに強めくらいにカーブ線を描き、確りとプレス致します。
クセ取りとは地の目の移動です。時にはイセ込んだり、伸ばしたりもしますが平面である布地の目を強制的に動かし、様々な曲線や2次元での範疇を超える矛盾を3次元で表現する事でもあります。
本当に些細な所でも多々使用される、求められる技術であります。
このクセ取りを施したトラウザース、今迄の顧客様よりの御紹介写真で着用した感じが御覧頂ける事と思います。
【 ターンナップ カフ 】 TURN UP CUFF
その他、裾上げに関しては 折り返しのターンナップ カフがとても多いですが、確りと傾斜を付け差別化をしております!
横地に伴い赤線を入れてみました。右側がフロント側です。
普通のお店では、この赤線で(真っ直ぐ、真横に)裾上げされるという事です。
穿いた時の違いがどれだけ大きい事か・・・・・お分かり頂ける事と思います。
トラウザースの両脇に有る縫い目、その縫い目に対して直角に折り返す事は安易であり、単純な事です。
しかし、斜めに折り返そうとすると矛盾が生じます。
これを補うのが技術であり、クセ取りも行われます。
布地である事=織物である事 だからクセ取りが利くのです!
(上げ足を取れば、織物で無いフエルトでも出来ますが・・・。)
・・・・・・・・・これらは全て必要技術であり、弊店にとっては当り前のレベルでありたい。
BESPOKE ORDERでもHOUSE STYLE ORDERでも、弊店での誂えスーツに変りは有りません。
HOUSE STYLE ORDER では、今回説明を省いた事柄や場所も踏まえ 上着と共に2次加工としてプレスを施しております。
少しでも皆様に誂えスーツの違いを感じて頂きたいからです。
BESPOKEにおきましては、これら同じ考えによる事柄がもっと精度高く、よりレベル高く具現化されております。特に、裁断後 組み立てる前からクセ取りを施し、立体的になったパーツを繋ぎ合せていき、繋げる度にクセ取りで馴染ませ、更に立体的にしていきます。
裁断された布地に対し、完成するまで当てられるコテ(アイロン)の回数が圧倒的に違います。
こちらのステージは、基本前提ハンドメイドです。当り前です。
縫製工場製品、コテが足りないから足しているに過ぎません。
縫製工場製の御仕立がここまでグレードが上がったら嬉しくないですか!?
いくら拘って工場さんへお願しておりましても、扱って下さる方々はTAILORではありませんので求められる限界が合って当然です。
専門技術者との差が合って当り前です。だから私が補います。
専門技術者であるTAILORにおいても その技術レベルは相当差があります。
スポーツ選手を見てもそうですよね!
レベル、、、、私もまだまだ精進中に過ぎません。
技術者は本当に一生勉強です。
果てしないです・・・・・・・。しかし、だからこそ楽しくもあり、遣り甲斐があるという物です!
・・・・・如何でしたでしょうか。
技術の話をすると本当に長くなってしまいます。
一生懸命噛み砕いて書いても、なかなか分かり辛い事と思います。
仕立てる誂え服の本質は、表層的なディテール等では無く、本来はあまり見えなく、目立たない所にこそ宿っているのです。着れば分かります。
色々書きましたが、単純に色々あるんだな〜〜と思って頂ければ それで結構で御座います!!
K様、御協力有り難う御座いました。
お納めさせて頂きましたトラウザースは、御連絡前にこんな事を行っておりました。
次に御注文を頂戴している ブラック・スーツ も是非御期待下さいませ。
そして、最後までお読み下さった方々、、、どうも有り難う御座いました!!!
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