2012年12月11日

【 イセ込み 】


 こんにちは。
寒いですね! 12月も中旬に差し掛かり、皆様お忙しい事と思います。

 御蔭様で私もです、、、。少しでもBESPOKEの遅れを取り戻さねば!



 さて、メンズプレシャスが発売に成りました!
まだ御覧に成られていない方は是非書店へ! 素敵な写真も満載です。
 弊店はこの度も光栄なる扱いをして頂き、心より感謝と共に恐縮しております。

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誠に有難う御座いました。















 では、今週は K様御注文のブレザーに協力して頂き
久しぶりに技術のお話しです。


【イセ】 【イセ込み】 という専門用語をお耳にされた事があるでしょうか。

広く使われるこの技術は、様々な個所で日常的に使われる事ですが 一言で言ってしまえば強制的に生地を 『縮める』 と言えます。

縫いを利用し縮めたり、コテ(アイロン)によりクセをとる際にもイセ込み技術を使います。
裏地を据える時にも多用します。



上着において代表的なのは、やはり『肩イセ』や『袖イセ』ではないでしょうか。


肩の場合は 前身頃と後身頃を肩で縫い合わせる訳ですが、その肩線の長さにつきまして
あえて前の肩縫い目の距離よりも長い距離をとった後の肩縫い目を前の長さに合わせる様強引に縮めて縫い合わせるという事に成ります。


 肩は肩幅に準じていなければ成りませんが、人間の身体や機能性を考えれば立体的な要素を踏まえなければ成りません。


肩甲骨のボリュームを立体的に包み込み、更に骨格に伴い前側へショルダーラインを回します。
背中側にユトリを入れる事により、立体感もそうですが腕の稼働に伴う適切なユトリ分量も加えられる事になります。



・・・・・あっ、、、今週は袖についてでした!










 では仕切り直しまして、
上着において 袖が付くアームホール(AH)はかなり、かなり重要です。

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K様の BODY が完成です! 本当に遅くなりまして、申し訳ありませんでした。

K様は少々小柄な方です。
着せているトルソーより若干服の方が小さいですね!

沢山あった躾も随分外し、袖を付ける前にあらかた仕上げプレスを行ってしまいます。
袖が付いていない方がより掛けやすいですから、今のうちにクセ取り含め完成形態に!
そして芯や裏地、中綴じなど馴染ませておきます。









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肩パットも見えますね。
お一人お一人に合わせ、綿の詰め具合、サイズ等に至るまで手作りです。ハ刺しにより組み上げます。

2回目の仮縫いも無事に済み、まだ芯や裏地には余分分があえて残してあります。



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後から見たAH、ダキの部分です。写真を見るにピタピタですが、K様が着用すれば適正なユトリが内蔵されています。





機能性が高い袖にとりまして、小さなAHは必要不可欠です。
ビチビチに合わせる訳ではないですが、出来る限り小さく、そして腕の付け根に吸いつく様なAHを作る事が理想的です。(勿論日本人には顕著な前肩にも成っていなければ成りません。)


 これが難しいのです。


AHが小さければ小さい程、正確に身体の腕に付いている位置に合っていなければ当たってしまいますし、皺にも成ります。(左右非対称ではれば尚更 各精度が必要となります。)
そもそも着心地を損ないますね! 正確な採寸と裁断あってこそ、TAILORED(仕立て技術)が生きる訳です。






 ですが、AHが小さいという事は袖自体も細い筒に成るという事に成ります。



これでは窮屈であり、動き易い訳もなく、見映え的にもダメです!


小さく作ったAHに対し、たっぷりとイセを内蔵した ゆったりした袖(AH周りが!)を付ける事が理想的です。


しかし、イセの量に関してはこれも技術となり、ハンドメイドと縫製工場さんで入れられる量には差があります。
直接的に技術力に関係してくるので、その洋服のグレードが一目分かります。
 超お安い既製スーツ等は、ハンドのレベルから見れば無いに等しい位差があります。











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袖も組み上がりました。

袖のAHには『グシ縫い』を裁ち切りに施します。

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身頃の小さなAHに、口径大きな袖のAHを結合させるには、縫い縮めて小さくしなければ合体出来ません。これがイセ込みです。






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グシ縫いの糸を引っ張って絞り込みます。

ただ絞る訳ではなく、縮める個所や配分も大変重要な事なのです。
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立体的に作られたBODYのAHに際し、袖の設計や袖付け、イセの配分が悪ければ まともな袖付けには成りません。



ナポリ服で有名な『雨降り袖』も袖イセによるものです。
雨降りにはしませんので、絞ってギャザー状になった袖AHの縫い代を殺し込みます。




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ギャザー状になったAHはスッキリ綺麗になりました。グジュッと縫い代が重なり合わない様に潰します。

これで袖付け準備OKです!

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御覧の通り 丸み帯び、立体感が出てくる訳です。
これがジャケット特有のイセ袖です。

袖の設計にも色々と裁断者の価値観と思想が宿ります。

赤線が2本ありますが、袖山(肩先)のTOPと脇下です。

このラインの感覚が狭ければ、山の低い袖となり 機能性は上がります。
古き英国裁断などはとても低めです。
 ただ、低すぎると 『袖の座りが悪い』 といって、袖の落ち方・見映えが悪く成ります。




逆にこの2本線の間隔が広ければ、袖山が高いという事に成り、機能性は下がりますが 座り良く、見映え良い袖となります。

そのバランス加減に価値観が宿ります。何をどの位 優先すべきか、、、、

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・・・・技術の話しは難しいというか、かなり表層的な話となってしまう為 これが全てだと思わないで下さい。

今回の話しは表層的な一部に過ぎませんし、まともに書こうとすると論文に成ってしまいます(汗)!!




 ですが、単に袖にも様々な技術や思想が宿り 作り手側は頭を悩ましながら設計しています。
クライアントの御要望も加味しなければ成りません。


例えば、指揮者の方の注文であれば、、、それは設計も作り方も変えねばなりません。


裁断(型紙)をより理想的に具現化する為にTAILORED技術が必要となります。






裁断(型紙)上でイセ分量を多くする事は、紙の上の事なのでたやすい事です。
しかし、仕立てる上でそれをこなせなければ意味がありません。
不必要に過剰なイセを入れても意味がありません。




 カットとテーラードが密接な関係があるのはそういった所にも有るという事です!
これらはBESPOKEだけに限らず、HSでも補正により加減が出来るのも弊店の特徴でもあります。
正に製図が引けるからこそ、作れるからこそ加減が分かるという事ですね!








 K様の釦は、英国より取り寄せたメタル釦です! 色々悩まれながらお選び頂きました。

裏に確りMADE IN ENGLANDの刻印がありますね。なかなか重量感もあります。

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因みに、日本ではこういったプレーンなメタル釦では「アンティークFINISH」等の2次加工を施した物があります。
英国の世話になっている付属屋さんへ そう言った物はあるのか尋ねたところ、
「そんなの無い! 着ていればアンティークになるだろ!」

確かにっ!

 英国らしいですね。








・・・・・・・・・如何でしたでしょうか。
チンプンカンプンの方もいらっしゃる事と思います。

ですが、「色々考えて作られているんだな〜」と思って頂ければ それで充分で御座います!!





 K様、あと袖を付けたら完成です!
年内にお渡し出来る様に頑張りますので、今暫しお待ち頂けます様 宜しくお願い致します。







posted by 水落 at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 仕立てについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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