2013年11月12日

【 → BLACK SUITS → 】


 こんにちは。
朝夕は本当に寒くなって参りました。
そろそろ本格的にツィードを楽しめるシーズンであり、オーバーコートの御注文も増えております。


 ツィードの話題も続き、私自身も着用比率は高いのですが、そうなってくると逆にエレガントな装いをしたくもなります。

そこで、2回に分けて 少しフォーマルな装いについてお話させて頂ければと思います。















【 フォーマル・ウェア 】

・・・礼服、礼装の総称であり、昼間と夜間で区別されます。
正礼装、準礼装、略礼装と3種の格付けがなされています。

 このお題はとにかく範囲が広く、様々なルールもあり、それらの多くは歴史的な背景から学ばなければ成りません。


昼間と夜間、その切り替えポイントは時間で表記される事もありますが、基本的に『日没前/後』と御認識下さい。

また、格付けについて、これは時代の移り変わりにより随分変化して参りました。
現代の正礼装と、昔の正礼装では結構違います。
 時代と共にカジュアル化が進み、姿を消してしまったスタイルや、デザインや小物含め省かれたりもしてきていると言えます。




さて、これらを総合的にまとめ上げ御説明しようとすると、とても BLOG で書ける範疇ではないので、、、今回はもう少し身近に感じる所でお話をさせて頂きたいと思います。







【 BLACK SUITS 】


 日本人にとっては、ある意味欠かせないスーツと言えるかも知れません。
冠婚葬祭用として兼用する・されるそのスーツは、日本的に作られたスタイルであり 欧米から見れば大変可笑しな光景に写るという事も耳にされた事があるかも知れません。

ただ、そういった場において、いくら自分自身が正しき格好だからと言っても その場で目立つ様では それも困りものです。この辺りが難しいかも知れませんね。



 現代の正礼装として、
昼間・・・モーニングコート ( MORNING DRESS )
夜間・・・燕尾服 : テールコート ( EVENING DRESS )

 準礼装として、
昼間・・・ディレクターズスーツ : セミドレス・ラウンジ( DIRECTOR’S SUITS )
夜間・・・ディナースーツ : タキシード ( DINNER SUITS )


 略礼服として、ここで初めて BLACK SUITS が出て参ります。


(・・・・・・大体こんな感じで御認識されていれば問題無いと思います。
ただ、正礼装と同等以上には フロック・コート があります。
そして、上記の様に区分けされた着用の仕方ではあるものの 実は例外があったり、各名称なども英・米・仏などで違ったり、、、一概に説明し辛き分野でもあります。)


 では、ブラックスーツにおきまして
そもそもスーツは三つ揃いが前提であり、現代的な上下の 2P-SUITS は簡略化された 更に略式であると御認識下さい。

故に、格が違いますので やはりブラックスーツを着用される様なシーンであれば、三つ揃いの方が本来であれば尚良いという事に成ります。



 さて、ダーク・スーツと呼ばれる類の中で、一番濃い色が黒であるという事です。
日本において冠婚葬祭以外ではなかなか見受けられませんが、ビジネスのシーンにおいてもお使い頂けると言いますか、、、、欧州ではその様なポジションにいます。
 彼らにとっては、正に一番濃い色のダークスーツという認識です。

大切な会議や商談、大切な方に合う時など、本来ではもっとブラックスーツを活用するべきだと私は思います。



 では、御託はこの位にしておきまして、、、















D1.jpg


エレガントで極シンプルなブラックスーツです。
生地は、H.Lesser の OLD であり、今では廃盤と成ってしまっている バラシア・ヘリンボーンで御座います。 (後にご紹介致します。)

一つ釦の、ピークドラペルです。
ベントは切ってありません。



D2.jpg


ウエストコートは、ダブル・ブレストです。
最近では既製服でも出ているようですが、、、、、、
(来年には HOUSE STYLE ORDER でもデビューさせます!)

勿論、シングルでも構いません。 あっ、上着もです!


例えば、ブルーのシャツに、ピンドットのネイビータイを締めれば ON BUSINESS でいけます! そんなコーディネイトであれば、「あれっ、結婚式!?」とは言われないでしょう。

折角誂えたブラックスーツを、冠婚葬祭用だけにしておくのは絶対に勿体無いです。











 ではここで、古い時代のイラストを見てみましょう。
1920年代初頭です。
(写真をクリックすると、大きくなります。勿論今までの掲載分もです!)

D3.jpg


88・92の両端の方々、これらがフロックコートです。
前裾が確りとあり、特徴はウエストの部分で、上下に分断するウエストシームにあります。

90・94 の内側のお二人、カット・アウェイ・フロック=モーニングコートです。
フロックの前裾を CUT AWAY したデザインという事です。
これがラウンジジャケット=現代的スーツの原型に成っております。
(右は、ウォーキング・フロック・スーツとも。)

現代のスーツの様に、モーニングが普段着だった頃には、ビジネスモーニングやハンティングモーニングなど 様々なバリエーションがあり、仕立てられる生地種も多彩でした。

ご覧の通り、94 の方は黒い生地では無いですし、皆様が良く見る一つ釦ではないですよね。

当時良く合わせられていた靴は、ボタンド・ハイシューズと言います。
コンビのブーツ型であり、サイドが釦止めになっております。
 94 の方、この方は黒の短靴にスパッツ( SPATS )を使用しております。


シルクハット、グローブ、ステッキ、そして黒い靴は、正式な礼装には欠かせない物でした。ここまで装った上で、当時のスタイルという事に成ります。






モーニングコートも後側の裾丈だけは長いのですが、それを更に短くカットしたものがラウンジジャケットであり、ディレクターズスーツ(現代的なスーツ)へと繋がります。







何となく お分りに成りましたでしょうか。
紳士服は、歴史です。

その流れがとても分かり易いと思います。 分かり辛いですか(汗)!?
BLOG は自己満の説明に成りがちですよね、、、。













 では、手持ちのブラックスーツに スライプド ドレス トラウザース (日本では縞ズボン、コールズボンとも=コードストライプ・トラウザース。) を誂え足しますと!?

D4.jpg


私のアホ面はさて置き、、、この様にディレクターズスーツに成ります!!
簡易に準礼服に成る訳です。


(・・・・・1900年代初頭、当時のエドワード7世が昼間のある集会に参加する際、フロックコートの代わりに黒のラウンジジャケットを着用された事がこの礼服の発端とされています。)


(この着用当日、英国よりある生地商の方が来日されており、弊店に来て下さりました。
「 MORNING DRESS! 」と言って喜ばれ、スパッツにも!!
今では本国でもあまり見ないのかも知れません。
「モーニングドレス」モーニングコートというより、昼間のフォーマルという意味での言葉の使い方でしょう。)












 では、このイラストをご覧下さい。
モーニングコートだけをとっても、時代の流れと共に移り変わりがありますが、これは まさしく『 らしい 』スタイルに見えるのではないでしょうか。

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上着はシングルのピークドラペル、腰ポケットなどはありません。
フロントがリンク釦止めにも出来る仕様になっている事が見受けられます。

上着と共地のウエストコート、コードストライプのトラウザース、そしてグローブにステッキ、シルクハットを被って完結です。

なんてエレガントなのでしょう、、、。







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 同じく、セミドレス・ラウンジジャケットとして、通常の打ち合い釦止めと共に、リンク釦も付けられています。

このリンク釦は、こういったスタイルだけではなく、一般的な2釦や3釦のスーツ(上着)にも付けられていました。

D7.jpg


昔の服は生地も厚く、丈夫でもあり、とにかく長く着用する事を前提とする誂え服です。
長い年月着用する上では、ちょっとしたメリットも御座います。

拡大写真で気付かれた方はおりますでしょうか。
モーニングからの流れを汲めば、腰ポケットのフラップは そっとしまっておくべきでしょう。








D8.jpg


左側の三つ揃いを着た紳士、シングルの2釦 ピークドラペルですが、リンク釦での着用をされています。

しかし、渋い、、、。 モデルの様にスリムでなくとも、こんなに素敵な紳士方は沢山いらっしゃいます!!











D9.jpg


 足元には、スパッツを付けています。
これも今では知る方々も少ない事と思いますが、大切な昼間の礼装用小物として欠かせぬ物でありました。



D10.jpg


教科書の様な装い、エレガントと言えばこの方は外せません。
F.アステア氏  モーニング・ドレスの着こなしにスパッツが使われているのが見受けられます。



D11.jpg


これは、英国製の古着です。
時代もありますが、ご丁寧に釦ホールは全てハンドでかがってあります。

古い裁断書には、スパッツやゲイターズ等の記述もあり、構造も単純なので 作ろうと思えば結構簡単に作れそうです!

その前に、欲しいと思われる方がいないかも知れません(笑)。












・・・・・・・・・如何でしたでしょうか。
デイ・フォーマルの流れから、ブラックスーツの活用にかけてお話させて頂きました。

紳士服は歴史です。歴史の理解無くして正しき服は作れませんし、それらの着こなしも出来ません。
全てファッションという言葉だけで片付けてしまうには、いささか無理があるのも紳士服であります。


 日本は和装文化から、洋装文化を選びました。
それ故に、歴史が無く、洋装への理解度も低い為 ある意味何でもありの目茶苦茶な感じに成ってしまっている事も否めません。

式場などで新郎が選べる貸衣装、、、、正しきに一番近い服は、唯一お父様が借りるであろうモーニングだけです。
クールビズしかり、『 何故!? 』と思う様な事が多々あります。




 装いの原点は防寒であったり、体を保護する為ではあります。
ただ、「装う」という行為は、対人あってこそでもある訳です。TPO 然りですね。


 少しでも多くの方々が洋装に対し興味を持って下さり、装う事に対しての意味、そして楽しさや奥深さなどを知って頂けましたら、そんな嬉しい事はなく、素晴らしい事だと思います。






 前編はこの辺りで終わりにさせて頂き、後編ではもう少しソフト面について触れて参りたいと思います。

是非次回も御読み下さいませ!!






 本当に寒くなって参りました。
どうかお体を壊さぬよう ご自愛下さいませ。

今週も誠に有難う御座いました。






posted by 水落 at 09:00| Comment(2) | TrackBack(0) | Style | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
先日、ミッドナイトの生地でお世話になりました。
今回の一つ釦のピークドラペルの写真を見て、このパターンもありだったな、と今更ながら思いました(笑

Posted by Y at 2013年11月12日 12:18

Y様

 こんにちは。コメント頂きまして有難う御座いました。

 また、先日は 5周年生地:MID NIGHTの御注文を頂きまして、心より光栄で御座います。

宜しければ、今後の誂えに対しての御構想にお役に立ちましたら幸いで御座います。

N様の御注文も必ずエレガントで素敵なスーツになる事と思いますので、どうかご期待されてお待ち下さいませ!!

 どうも有難う御座いました。

Posted by Dittos.水落 at 2013年11月13日 18:28
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