2014年08月26日

【 COAT < OVERCOAT A 】


 こんにちは。
もう8月も後半です。暑さは十分に堪能しました。
残暑もあるでしょうが、9月を迎えれば流石に過ごし易くなると良いですね。



 早速では御座いますが、先週からの続きを書かせて頂きます!!
かなり書いている本人の自己満的な要素が高いと思いますが、、、宜しくお願い致します。













p0.jpg


・・・こんなにもシルエットが綺麗でエレガント、クラシックなオーバーコートは
もう誂えでなければ手に入らないのではないでしょうか。
ブラウンのダイヤゴナル、激渋です!
 インナーのブラウン系格子のスーツも素敵ですね。











P1.jpg


・・・3者3用 それぞれクラシックで正に伝統的なオーバーコートを着用されております。
ポロ、カバート、チェスターとSTYLE BOOKの様です。
やはりコートスタイルにグローブは必須ですね。
こんなスタイルをサラッと着こなせる紳士に成りたい! 皆様でしたらどのスタイルを選ばれますか!?













 では、早速始めます。
先週はオーバーコート:前身頃の型紙が引き終えたところまででした。



今週は、コート(ジャケット)後身頃のトレースから参りましょう。

奥が背中心の縫い目、丁度背骨の位置にシームがありますよね。
左側が首元、右側が裾と成ります。

p2.jpg




 前身頃と同じ様に、肩傾斜は同傾斜で、ネック周り(首の付け根辺り)含め
適性なユトリを加味し、前身頃と同じ様なバランスで分量を足してまいります。

p3.jpg


首が前付きの方、肩甲骨が強く隆起されている方、
送り腰の方、
肩幅の広い方、狭い方、
後身頃の型紙にも沢山の情報が詰まっております。
背幅含め コート(ジャケット)のバランスを尊重しつつ、ユトリを与えます。







p4.jpg


はい、もう出来ました!
オーバーコートは基本的に丈が長いもの
機能的に足さばきを良くする為にもセンターベントを切ります。
当然位置関係も重要な所です!











これで、前後の両身頃が完成です。
横向きに置かれています。 下が前身頃、上が後身頃。
右側が裾位置と成ります。

p5.jpg


構成されるバランスやユトリ加減は、
お客様がどんなスタイルのコートを求められ、どの位エレガントに
もしくはカジュアルにされたいのか、
丈バランスは!? 選ばれた生地は!?

考慮すべき点は山ほど御座います。












p6.jpg


 こちらは別の方の型紙です。
セシル・ビートン卿の様なカバートコートを、もう若干シェイプを効かせ
ほんの少しだけエレガントさも加味して、、、、

お任せ下さい! 大好物です(笑)。


p7.jpg


胸ポケットもフラップ付です。
流石に胸ダーツまでは入れませんが、ほんのりシェイプが感じられる様なバランスで。





まだこれで終わりではありません。
袖があります!











p8.jpg


前後の身頃を脇で合体させた状態で、肩先・アームホール・バスト線をトレースします。
袖山の高さを計算・設定し、
アームホールを計測し、イセ分量を計算の上で算出、
身頃のアームホールに伴う傾斜(寝かし)のバランスからインナーの袖幅(イセ込み比率)なども考慮し引いて参ります。

また、下袖にどの位機能性を持たせるか、、、これも、このオーバーコートがどれ位エレガントなのか、カジュアルなのかにもよります。


袖は当たり前ですが、BODY のアームホールに準じていなければ成りません。



袖のアームホール部分が引けましたら、コート(ジャケット)の袖型紙をあてがいます。

インナーであるコート(ジャケット)の袖幅を尊重しつつ、BODYと同じく 肘幅や袖口幅に適正なユトリを入れ一回り太く大きくします。 勿論長さ(袖丈)もですね。


その時に、もし今回の様に誂えであれば
袖の振り位置、太さ、肘位置設定、『く』の字度合い など全てインナーに準じて設計出来る事に成ります!!



p9.jpg


インナーとアウター、それぞれの袖がどこにも無理なく落ち着いて落ちますし、
この行為(設計)が どれだけ安定性・合致性が高く成るのか想像がつくと思います。


 更には、袖口にも傾斜が付いております。
床から平行線で設計されている訳ではありません。

こういった所まで細かくインナーの袖と相性を取る事が出来ますし、袖丈にしても インナー袖丈+αで単純に設定に出来ます。

ただ この部分もお客様のお好みは確認させて頂きます!













 出来ました! 先に御紹介させて頂いたお客様分、腰ポケットをスラントにされた方です。

p10.jpg









こちらは、C.ビートン卿ばりのカバートコート、
袖の太さや長さも違うのが比較するとお分かりに成ると思います。
当然その方々で色々と違います。

p11.jpg













・・・・・・・コート(ジャケット)と比べると、アームホールのカーブに伴う R が大きくなっている事に気づかれましたでしょうか。
分かり辛いですよね、、、。


インナーはアウターに比べ より身体に近いので、それだけカーブ線のRは小さくなります。
アウターは身体から離れますので、R はその分大きくなります。

これらはアームホールに限りません。
身体に合わせれば合わせる程 強き曲線使いに成り、R の度合いも強くなりますし
カジュアルな物ほど身体から離れるので直線的となり、カーブ線のルーズさへと繋がります。

革靴もそうですよね、、、お安い既成靴と、オーダーにてハンドメイドで作られた靴では
立体度合(カーブ具合)が全然違うのと同じです。
作り込みも含め、FITTING 精度の次元が全く違うという事ですね。








p12.jpg


・・・・・・先週の最後にも載せましたが、古き英国の裁断書です。
昔から足を使い良く集めました。大変貴重で大切な宝物です。

 スーツのカットはそれらから学び、準じていると言えますが
所詮は教科書です。

それに人種違えば、時代違えば、そもそも人が違えば、、、という事であり、やはり参考程度ともいえます。

そんな古き裁断書、
コート(ジャケット)からオーバーコートへの展開が記載されていますね。

先週の裁断書は、1934年の TAILOR & CUTTER 誌より、
これも同じ頃の物です。

両方ともシングルの上着から、ダブルのオーバーコートへの展開が記されています。
ダブルの両釦(打ち合い:フロントの重なり)間隔がとても広いですね。
重厚感と共に とても時代性を感じさせます。


 そのまま教科書通りに展開してもダメと言いますか、、、
全て私自身の経験やある程度の狙いや好み含む私のフィールターを通して古の技術を尊重し大切に実践させて頂いております。









・・・・・・・オーバーコートは、コート(ジャケット)ほど構築的に作らなくても良いと言えます。
芯も強くなく、増芯も軽め、肩パッドは薄く肩先のみ尊重して、、、。

何故でしょう!?

それは、オーバーコートの主体と成る『芯』とは、
インナーである構築されたコート(ジャケット)であると考えるからです。

理に適っていると思いませんか!?

あくまでもオーバーコートは纏うといった類とも解釈できます。
脱いで手に持っている事もありましょう。
仕立て自体は柔らかく作る事もオーバーコートらしさであると言えます。








・・・・・・・今回のお話は、BESPOKEのご注文に対し 生の型紙を使って御説明させて頂きました。

弊店では、HOUSE STYLE ORDER に関しても同じ手法により型紙を展開し、お仕立てさせて頂いております。
やり方や理論は全く変わりません!






・・・・・・・その昔、オーバーコートは富や権力の象徴でもありました。
贅沢な素材に、煌びやかで高価な釦をあしらったりと、、、、。




 人生で欠かす事の出来ぬ 衣・食・住 の『衣』
そこを楽しまなければ勿体無いです!

紳士服は歴史と伝統により成り立っています。
デザインやディテール含め、それら誕生の多くは戦争であったり貴族の生活様式に関わるものから生まれました。


 チェスターフィールドコート、
そのチェスターフィールドとは人の名前であり、チェスターフィールド伯爵の事です。

名前の由来に限らず、大抵の事柄に対し答えがある それが紳士服です。

学べば学ぶほど奥深さが分かり、勉強してもしてもキリがありません。
それが大いなる魅力でもあります。

 防寒具であるオーバーコート、
寒いから着る訳ですが、一歩進み 理解を踏まえ、拘りを持ったのであれば
伝統的で本質的なオーバーコートに袖を通してみたいものです。



しかし、そのオーバーコートは日本だと着用出来る期間は結構短いかも知れません。
移動時の防寒の為に着用されますので、オフィスなどの目的地に着けば脱いでしまいます。

故に、本当に長持ちします!!

だからこそ、数年着て古臭く感じない様な本質的クラシックな物を
長く付き合うからこそベーシックなデザイン、質の良い生地や仕立てで御誂え下さいませ。




 2週に渡り、自分よがりな内容に御付き合い頂きまして
誠に有難う御座いました。

 私自身は心底良いと思っているからこそ本気でお伝えさせて頂きたかったのです。
どうか少しでもご参考に成りましたら幸いで御座います。




 では、どうかこれからも宜しくお願い申し上げます。





posted by 水落 at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 仕立てについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック