2014年10月14日
【 SPORTS JACKET → SPORTS SUITS A 】
こんにちは。
早速では御座いますが、
今週は歴史にも触れながら、今となっては結構マニア的!?なスタイルについてお話させて頂きたいと思います。
紳士服の発展に大きく影響を及ぼしてきたのは ミリタリーや貴族の生活様式に伴う事が殆どであると言えます。
今回のテーマは表題の通り【 SPORTS SUITS 】をクローズアップさせて頂きます。
(この度は私のバイブルの一つでもあり、恩師でもあった堀 洋一先生の著書よりお力をお借りさせて頂きます。)
・・・・・1920年代、この時代のイメージを約言すれば『スポーティーなエレガンス』と言えます。
ノーフォークジャケットやニッカーボッカーズ、ホワイトフランネルのトラウザースやコンビの靴、キャメルのポロコート等がそれらに代表されます。
紳士服のトラウザースの歴史を遡ると「半ズボン」の歴史は本当に古く、正に欠かせぬ存在です。
【 BREEECHES 】 ブリーチズと言われる半ズボンの起源は中世まで遡ると言われています。
そのブリーチズの種類だけでも本当に沢山あり、ニッカボッカーズもその中に入ると言えます。
では、ニッカボッカーズだけに定めて説明してみると
『フランス革命以前の宮廷服に似た 膝下を釦や尾錠等で留める形式の袋の様な半ズボン』という事に成ります。
これらは、基本的に野外専用のスポーツウェアであり、その多くはツィードやフラノで仕立てられていました。
イングランドやスコットランドの各地方における貴族の所領を背景とする田園生活からの産物であったそうです。
そもそもこの半ズボンは、当時のライフル小銃隊の義勇兵によって穿かれていたズボンにヒントを得たものであり、1863年頃から流行し始めたそうです。
当時のそれは、宮廷でも履かれていた細身の半ズボンを少しばかりゆったりとさせた位であろうと推測されます。
それが、1920年代にはさらに誇張されバギー・ニッカーズがお目見え、、、
それによってビクトリア朝時代からの細身型は姿を消すようになったそうです。
1926年 の写真です。
どれだけ太いのかがお分り頂ける事と思います!!
綺麗にサイズの合った上着と全く反比例かの様なバランス構成です。このギャップが正に『らしさ』を感じさせます。
要尺は相当かかるでしょうね、、、。
ニッカボッカーズという括りの中には、袋状の裾部の垂れ具合により
プラス ツー・フォー・シックス・エイト とありましたが、
最もポピュラーなのが 【 PLUS FOURS 】であり、膝下4インチのたるみ具合という事に成ります。
ゴルフを筆頭に様々なスポーツに適するスタイルとして愛されてきたスタイルです。
この +4(PLUS FOURS )のヒントと成ったのは、第一次世界大戦の最中に英国近衛旅団将校が穿いていた独特の乗馬ズボンにあったそうです。
この将校が穿いていた物は他の将校達とは違い、とてもたっぷりとしていてゲートルの裾の上にまで裾が垂れ下がるくらいであったとの事。
一般の男たちが穿くニッカボッカーズが一段とぶかぶかに成りゴルフ用に最適なズボンとしてクローズアップされる様になったのも、おそらくはその影響が大きいであろうと推測されているそうです。
長々と歴史的なお話でしたが、+4や前世紀のニッカーズもがミリタリーから生まれたと言われております。
同時に紳士服の歴史を遡れば、当時の生活様式を考えてみても【乗馬】という行為は多大なる影響を及ぼしています。
では、素晴らしくスポーティーエレガンスな紳士達をご覧ください。
左の紳士が穿くのは【 JODHPURS 】と呼ばれる乗馬ズボンの一種です。
右の紳士、千鳥格子の【 SPORTS SUITS 】であり、これが正に【 PLUS FOURS 】です。
若い頃、いつか自身で具現化し味わいたいスタイルであると憧れたものです。
何て格好良くて素敵なのでしょう!
次は、洋服バカのコスプレをご覧頂きましょう。
以前に SPORTS JACKET として この上着の紹介をさせて頂きました。
http://dittos.seesaa.net/article/402759155.html
今回の主役である PLUS FOURS です!!
ウエストコートも裁断だけはしたので、いつかは三つ揃いになる予定です。
この +4 が加わり はれて【 SPORTS SUITS 】としての着用です!
バックはこんな感じです。
ハイバックの尻尾錠付き、尻ポケットは付けていません。
この生地は春・秋メインの生地であり、麻が少しブレンドされています。
軽くて爽やかな生地で柄は千鳥格子、スポーティーエレガンスな1着と成りました。
+4はツィードスーツでの手持ちもありますので、とにかく春夏にも着用出来る +4 が欲しかったのです!
盛夏には上着は着ず、ポロシャツにスニーカー等でも乙な合わせであり、私自身は十分に現代でも通じるスタイルでもあると思っています。
奥がフロント側です。
腰部分がせり上がっているのが見てとれますね。かなりゆったりとしたシルエットです。
この太い筒を急激に裾口で絞り、裾部に付く帯で留めます。
その帯の締め方は、尾錠や釦などの手法含め色々御座います。
尾錠を付けて鳩目穴をあけ、ベルトの様に調節出来るタイプもありますが、
そもそも誂えで仕立てる以上、自分の足に合わせますからサイズ調整機能はいらないと言えばいらないですね。
裾帯もスマートでシンプル、スッキリしている事、そんな価値観で作るとこんな感じで表現しました。尾錠等も無いので無駄な立体感も出ませんね。
もし 多少サイズを調整したければ、単純に釦を付け直すだけで安易に調節が出来ます。
釦は一つだと打ち合い(ベルト同士の重なり部分)が上下に回転する様に動いてしまうので安定しません。
故に表裏にて2連釦で留められる様にする事により、帯の打ち合いは安定しつつ強度的にも確りととまります!
フロントは釦、股上が深いのでウエストの帯釦を含めると 縦に計6個釦が並びます。
内側はクリーム色の杉綾スレキが裏に付きます。
(これは+4に限った仕様という事ではありません。)
帯の裏は腰裏、腰裏の下にその共地でカーテンの様な腰幕が付きます。
腰幕は腰回りの裏地でもあり、プリーツを畳んでウエストとヒップの差寸調整を担わせる訳です。
TAILOR 業界ではボロ隠しとも言われたりします。
既製服主体の現代的な作られ方では排除されてしまった昔ながらの仕立て方(仕様)でもあります。
この仕様を尊重すべく、HOUSE STYLE ORDER のトラウザースも全て腰幕を付けております。
裾口の部分、前身頃の裾口には3本のダーツが摘ままれており、急激に絞ると共に、フワッと立体的な丸味感を生み出す設計と成ります。
・・・・・ +4 は、とにかく とにかく 目茶苦茶に楽です!!
ぶかぶかでもあるので動きに対してのストレスや負荷が全くありません。
なんて動きやすいのでしょう。 初体験であればきっと感動すると思います!
所詮半ズボンなので裾(足)さばきも良く、とにかく動きやすい。
センタークリース(前後中心の折り目)も付けませんので、クリースが落ちて無く成って来た! なんて事にもなりません。
皺になっても全く気に成りません。
雨や足場が悪い所でも半ズボンなので裾口が濡れたり汚れる事も無い訳です。
雨の日はビーンブーツなんかでも良いですね!
ゴルフ、ハンティング、フィッシング、そして登山などなど正に運動着(スポーツウェア)です。
・・・・・現代の運動着において
ストレッチ製の生地等は発展著しく、野球のユニフォームなどにも言えますが
ベイブルースが活躍した時代のユニフォーム、、、ぶかぶかでまたあれが味わいでもあり魅力的ですが時代も感じさせます。しかし、現代のユニフォームは全く違いますね。
運動量をぶかぶかなユトリで確保していた時代から、今では素材自体がストレッチ性により動きに追従出来るわけです。
あの味わいあるブカブカ感は見られなくなってしまいました。
では、建設現場などで働かれておられる方々(鳶職人など)のワークウェアはどうでしょうか。
ニッカーズに似たスタイルは御存じの通り今でも健在です。
伊達にあのスタイルではないという事でもあり、生き残っているのは理由があるからです。
(これも調べてみると面白いですよ!)
ウインザー公も +4 を穿いてゴルフを!
ウインザー公のコレクションがオークションにかけられた時の写真です。
ツィードのスポーツスーツ、公は他にも沢山のニッカーズを合わせたスポーツスーツをお持ちでした。
1950年の TAILOR & CUTTER より
20年代と比べれば落ち着いた雰囲気はありますが、やはりゆったりしたシルエットは健在です。
・・・・・・・・・如何でしたでしょうか。
少しはご興味を持たれた方はおりますでしょうか。
皆様から見れば 私は単にコスプレで喜んでいるだけに見えると思いますし、その通りでもあります。
しかし、私にとっては大きな学びでもあります。
あるスタイルであったり、アイテムであったり
ターゲットと成るものの歴史を知りそれを具現化する裁断や縫製、そして着用する事でしか理解できない事含め多くの学びがそこにはあります。
今回は愛弟子に+4の仕立て方を伝授する目的もありました。
PLUS FOURS 当時何故そこまで流行っていたのか。どういった経緯でこの様に進化を遂げたのか。
着用すれば色々と理解出来る事が沢山あります。
デザイン面だけではありません。作り方にしても見合う素材違えば仕立て手法もそれに伴いますし、当然強度などの耐久性や動きやすさ等をも考慮に入れて裁断、縫製されるわけです。
紳士服は歴史なくしては語れません。
それだけ奥深く、重みがあります。 重みを理解せずに具現化された洋服には説得力がありません。
表層的なファッションでは無く、スタイルを理解し追及出来る楽しさがあります。
この欲求は絶えません。
今回の +4 は一つのスタイルに過ぎません。
勿論 +4 に限らず、この楽しさと充実感を少しでも多くの方々へお伝えしたい。
そう思っています。
当然古きスタイルを復刻するだけではありません。しかし、古より学ぶ事は本当に多い。
発展という経緯があり、それらに理解があるからこそ現在的な価値観に伴うリアルなクラシックスタイルが形成できると考えています。
歴史や経緯などの知識、裁断、補正、縫製、そして着る事。
紳士服、私にとっては正に学びです。
ファッションという軽い括りではない紳士服を、
仕事着用のスーツだけではない紳士服というものを もっともっと掘り下げてみては如何でしょうか。
では、今週もお付き合い頂きまして誠に有難う御座いました。
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身に付けられているブレイシズの幅はおいくつでしょうか?
こんにちは。コメント頂き有難う御座います。
幅は4p幅の企画となってります。
宜しくお願い致します。
HOUSE STYLE ORDERでのご対応は可能なのでしょうか?
M様
コメント頂きまして、誠に有難う御座います。
何故かM様のコメントが反映されないですね、、、。 申し訳御座いません。
確かに自転車にも良いと思います。
TWEED RUNなどでもニッカーズを御愛用の方は結構おります。
さて、問い合せ頂きましたH.S ORDERでは今の所ご対応できません。
重ね重ね申し訳御座いません。
私自身は大変お勧めしたいので是非開発したいと思っておりますが、需要があるかどうか、、、。
M様含め、是非皆様のお声を聴かせて頂きたいです!!
ご要望が高ければ直ぐにでも開発に着手したいスタイルの一つです。
では、宜しくお願い致します。