2014年10月28日
手前事にて恐縮では御座いますが、本日は弊店5回目の誕生日と成ります。
日々仕事に追われ、気付けば5歳 本当に早い5年間でした。
仕事がある事は本当に幸せな事であり、これもひとえに皆様のお蔭によるもので御座います。
心よりの感謝を申し上げます。
誠に、誠に 有難う御座います。
私にとって この仕事を続けさせて頂ける事は本当に幸せな事です。
本来こんなにも簡単な一言では言い表す事など出来ない事は分かっております。
また、継続する事への難しさ これも経営させて頂き、どんなに難しい事なのかも学ばせて頂いております。
これら感謝の気持ちを洋服に込め、少しでも多くの喜びと御満足を皆様に味わって頂ける様な服作りをさせて頂ければと思っております。
まだまだ至らぬ点ばかりで御迷惑や御心配をおかけしてしまう事も多々御座いますが、ほんの少しずつでも良くしていける様 常に前を向き、これからも頑張って参ります。
どうかこれからも御指導、御鞭撻の程を頂戴したく、
また変わらぬ御贔屓を頂けます様 何卒宜しくお願い申し上げます。
さて、先週に引き続き カバートコート のお話をさせて頂きます。
先週は誕生に至った歴史的な背景やデザインなどの特徴、及び生地についてお話させて頂きました。
このコートに少しでもご興味が湧いた方が居られましたら そんなに光栄な事は御座いません!!
単にカバートコートと言えど、この歴史の中で多数のバリエーションも増えました。
時代や物作りの価値観、誂えであれば御注文主様のお好み等にもより
丈やシルエット、ディテールに至るまで様々と成ってしまいますが、現代的なクラシックの範疇にて、私の価値観によるカバートコートを取りあえず題材とさせて頂きます。
丈は膝上丈、4ポケットを携え
シルエットはナチュラルシェイプな印象にしています。
チェスターFコートでは無いですし、胸ダーツまでは入れませんが
程好く身体に寄り添い、極自然でエレガントなシルエットを表現する意図のもとです。
自身として、やはりスーツ含め上着の上から着用する事が多く想定されるからです。
勿論下には三つ揃いを着用しています。
オーバーコートにも拘らずこれだけ意図的なシルエットと共に立体的なフォルムの形成は、やはり裁断と縫製による賜物です。
以前にもお話致しましたが、TAILOR でオーバーコートを誂える場合は
その方の上着の型紙より導き出します。
その方の身体の情報がふんだんに詰まった型紙に対し、適性 かつ意図的なユトリを加えるだけです。
私自身の右肩が下がっているのも見て取れます。
コートのウエストやヒップ位置、ポケット位置に至るまで 全てインナーである上着に準じています。
左右非対称の度合いは勿論の事、肩傾斜や肩幅、体の厚みなどの立体感、前後差、アームホールの高さや幅なども含め、様々なカーブ線に対する互いの(インナーとアウターとの)相性、、、、、これは体感しなければ絶対に分かりません。
これがインナーと同じ TAILOR で誂えるオーバーコートです。
物事にはそれぞれステージの違いがあります。
既製品ではどんなに品質が高くても、限界があるのがお分り頂けると思います。
着用出来れば良いのであれば、既製でも他店で誂えても良いのです。
オーバーコートは防寒具です。
フロントから風が侵入し辛い様に打ち合い(左右フロントの重なり)を深くとっています。
当然 その分寒さを防ぎますし、オーバーコートたる重厚感も出ますね。
これらは、釦が前端より随分深めに付いている事でお分り頂ける事と思います。
打ち合いを深くすれば、その分 V-ZONE は狭くなります。
ストールがあれば首元まですっぽり覆う事が出来ますよね。
打ち合いが深いという事は、上記以外にもメリットが御座います。
また、コートを着用すれば どこからも上着が見える事はありません。
衿周り然り、袖口然りです。 衿周りから上着が見えてしまっていたら、個人的には それはサイジングや設計が適正では無いと言えるのではないでしょうか。
オーバーコートはスーツを覆う為、アームホールは当然インナーより大きくなければ成りません。
既製品では誰でも着用出来る様に大きく深くとられますが、例えば電車のつり革につかまった程度で脇を吊り上げてしまう様であれば それは機能的ではありません。
コートの形をしていれば御満足されるでしょうか。
インナーのスーツ(上着)のフィッティング精度(特にアームホール)が重要であり、それが高ければ自動的にアウターも同精度と成ります。
左右同じユトリ(皺)の入り方、双方非対称の肩に合っている証拠です。
運動量含むユトリはお好み的な部分もありますが、肩幅含めインナーより大きくなる事は当然です。
肩甲骨の下にユトリが多く見受けられますが、肩に向かうに従い皺が無く成っています。
これは、それらユトリ(イセ分量)が綺麗に殺しこまれ、かつ 前に回っている為です。(前肩縫製)
ウエストは腰に寄り添い、ウエストからからヒップ、裾にかけてたっぷりとした分量は綺麗なドレープと成って分散されて落ちています。
前肩含め、アイロンワークによる『クセ取り』の賜物です。
この時のインナーは、3シーズン生地による三つ揃いですが、カバートコートである以上 時にはツィードの三つ揃いを着用する事をも当然加味してあります。
前身頃側は芯が入りますので、身体に合っていれば皺は全く入りません。
しかし、後身頃側には芯が入りませんので ユトリは皺に成ります。
その分量、及び出方に気を使い、エレガントなドレープで表現するのです。
最近では、共生地を使った上衿が多いかも知れませんが
やはりチェスターFコートやカバートコートについては個人的にベルベットをセレクトしたい所です。
ウールの様に融通性が無いコットンベルベット、毛足もありコテを当てるのにも気を使います。
そんな生地でもハンドであれば ウールと同等レベルまで立体的に上衿掛けが出来ます。
素材やデザインに合わせた技術が必要という事に成ります。
袖口や裾にはミシンステッチが4列走ります。
単純に見えますが、一本一本綺麗に正確な平行を描くには結構気を使います!!
フロントの打ち合いです。
上前である釦ホール側をご覧下さい。
比翼が前端より控えられている(奥に凹んでいる)のが分かると思います。
第一釦ホールであり、ラペルの返り止り付近でもあります。
鍵状に比翼フロントが控えられて作られているのが分かりますね。
コーナーには補強の為 確りと閂を施します。
英国には既製で有名なコートメーカーがありますが、こういった手間を確りと掛けられています。(最近は見た事無いですが、どうでしょうか。)
この『控え』が無いコートも良く見受けられます。
単純に手間のかかる仕様になりますので、、、。
釦をホールに止め、動けばホールにも釦にも左右に引っ張られる力が掛かります。
ホールが引っ張られるという事は比翼ごと引っ張られるという事です。
この様な控えが無ければ、フロントから比翼が「こんにちは!」と顔を出しかねません!!
それを回避する為に考案された仕様ですね。
トラウザースの比翼フロント(釦フロント)でさえ、前立て(比翼)は前端より控えられて作られています。 当然同じ理由からです。
内ポケット
コートは脱いで手持ちする事も多かろうという事で、中身が落ちぬよう基本フラップ付きにしています。
お台場仕立てになっていますが、これは裏地が擦り切れ、張替えする時にTAILORが安易に交換出来る様にする為に生まれた仕様です。
故に裏地が擦り切れ、交換してでも長く愛用する様な服でなければ無用のディテールという訳です。
お台場である事が重要であり、それを誇示する必要はありませんので、、、ギリギリまで裏地を被せています。
裏地は適性なユトリを与えながら据え、全て手縫いで縫い付けられています。
次は、POACHER’S POCKET(ポーチャーズポケット)です。
今では随分省かれてしまっているディテールである事と思います。
狩猟用として考案されたカバートコート、そのコートに付けられていたポケットです。
獲物であったり、様々なグッズを入れたりと役立っていた事でしょう。
しかし、今の時代では『名残としてのディテール』というポジションです。
紳士服には名残ディテールが本当に多く存在します。有名なフラワーホール然りですね。
作り方やサイズ含めた仕様面は本当に様々あるでしょう。
これは私の価値観で考えた仕様であり、一つの答えに過ぎません。
これは、シューティングジャケット(スポーツジャケット)に付けられたポーチャーズポケットです。
カマ下からストラップで留める様になっています。とても大きなポケット口ですね。
ただ、ジャケットですからあまり物を入れると かなりはらんでしまいますね。
腰から太腿まで大きなパッチポケットで表現しました。全てにおいて意図があります。
裏側には考えられる補強とともに 全周力芯を噛ませてあります。
ポケット口は脇側が高く、前が下がっているので物が出し入れしやすい意図的な設計です。
下方のみコットンの力布をあてがい2重にして補強し、その直ぐ上には横にプリーツが畳んであります。
立体的な物を入れても袋がその立体に追従出来るように用いています。
新聞や地図、ちょっとした情報誌、
外したグローブやストールなど 本当に大きいですから何でもスポスポ入ります!!
I PAD 等も余裕のサイズです。
アームホールの脇下部分から、ストラップが下がっていましたが、、、、
パッチポケットの折り返しフラップ、実は起こして止められる様にしています。
伊達にこの形状では無く、ここにも計算があります。
そのフラップを起こせば その分だけポケットサイズが縦方向に深くなりますし、I PADなどある程度 重い物を入れたのであればダレてしまうので、このストラップで留めて吊り上げておく形に成ります。
使わない時はストラップが暴れたり、引っ掛かったりしない様にループを付けているので安心です。
ストラップの頭が蛇の様に大きくなっているのは、そのループ内に入ってしまわない為です。
スポスポ大抵の物は入ってしまいます!
ウエストラインより下にあり、裾に向かいユトリが増える大腿部という位置設定。
そして何より、このポケット口の傾斜がミソでもあります!
如何でしょうか!? これ、絶対に便利です。
PORCHER’S POCKET これはカバートコートだからこそ付けています。
チェスターFコートの様に体のラインに合い、シェイプを効かせる様なものでは無く
あくまでのスポーティーでゆとりも多き このコートであるからです。
当然ながら歴史的な背景を尊重するからこそでもあります。
ただ、日常的で簡易に使う事を前提としてありますので、
例えば 果物などをゴロゴロと仕舞ったら、そんなには耐えられません(笑)!!
もし そんな用途が前提であれば、違う手法を用いらなければ成りませんね(笑)。
そんなリクエストを頂いたのであれば、その時本気で考えます!!
・・・・・長きに渡り、お付き合いを有難う御座いました。
2週に渡って カバートコート を掘り下げてみました。
読んで頂く事により、皆様のカバートコートに対する知識が上がったと同時に、
私自身がどれだけ洋服バカなのかをも露呈したかも知れません、、、。
それだけ本当に好きなのです。
説得力高き紳士服を誂えたい、、、その一心に過ぎません。
それには ただ縫えるだけでは無く、全ての要素に伴う力が必要だと思います。
弊店 HOUSE STYLE ORDER のカバートコートも、勿論ほぼ同じ仕様でお作り頂けます。
ただ、、、ポーチャーズポケットは設定が無いので、ご希望の方はリクエストを下さいませ。
オプションにはなると思いますが、実現可能を全力で模索します。
では、カバートコートに限らず 皆様も素敵なオーバーコートを御検討頂けましたら幸いで御座います。
紳士服は深い魅力で溢れています!
皆様のお越しを 心よりお待ち申し上げております。
どうも有難う御座いました。
・・・・・来週のBLOG更新はお休みとさせて頂きます。
次回は、11月11日と成りますので 何卒宜しくお願い致します。
5歳の誕生日おめでとうございます。
継続は力といいますが、ここまでの道のり、ご苦労お察しいたします。
人生でずっと付き合う事の出来るテーラーに巡り会う機会はそうあるものではないと思っています。これからもがんばってください!
近所のN様
こんにちは。N様 有難う御座います。
ご苦労などと、、、N様を始め、皆様に支えて頂きここまで来る事が出来ました。
N様のお気持ちを裏切らぬようこれからも精進致しますので、何卒宜しくお願い致します。
お仕立てさせて頂きましたTWEED JKもそろそろデビュー出来そうですね!!
是非ご堪能くださいませ。
では、またお会い出来る日を楽しみにしております。
どうも有難う御座いました。
一生物の一張羅と思い、背伸びして本当に良かったです。
5周年生地、ブラシで大切に可愛がっています。
結婚式にだけ、と決めていたのですが結婚ラッシュで意外と出番の多いスーツになりました笑
袖を通す度に誇らしい気分になります。
またお邪魔できる日を楽しみにしております。
N(久留米)様
こんにちは。
ご返信が遅くなり、大変失礼致しました。
お祝いのお言葉、、、恐縮で御座います。
N様を始め、皆様に支えて頂いているからこそです。
こちらこそ本当に有難う御座います。
例のスーツもお気に召して頂き光栄です。
背伸びなどと、、、とんでもないです。
ただ、洋服は着用してこそです。
是非御結婚式に限らず、どんどん着てあげて下さい。
N様、いつでも大歓迎ですので
是非いつでもご連絡を下さいませ。
またお会い出来る日を楽しみにしておりますので、何卒宜しくお願い致します。
どうも有難う御座いました。