2015年04月28日

【 PADDOCK CUT @ 】


 こんにちは。
雨の多かった4月も、随分落ち着き 好天に恵まれて参りました。

朝夕はまだ涼しさも残りますが、日中は暑さも感じる程に成ってきましたね。





 お店では、皆様よりご注文頂きました HOUSE STYLE ORDER のご納品が続いております。
もう直ぐにでもデビューして頂けますね!

ゴールデンウィークをまたいでしまったしまったお客様、
ご迷惑をおかけしておりますが、もう少しだけ、、、お待ち下さいませ。

 何卒宜しくお願い致します。















 さて、今週は久し振りにお勉強タイムです!
私の個人的な趣味にもなりますが、御付き合い頂けましたら幸いで御座います。










紳士服は長き歴史と共に発展してきた文化そのものです。
もとを辿れば、大抵は軍服や 貴族らの生活様式に伴うものが多い訳です。


 その歴史の中では、当然淘汰されたスタイルや様式も御座います。
乗馬を踏まえ、古くはブリーチェスの様な所謂半ズボンタイプが主流であった事でも分かりますね。
 現代では長ズボンが主流な訳ですが、オックスフォード・バックスの様な袴みたいに極端に太いシルエットのトラウザースが流行した事もありました。


既製服が圧倒的なシェアを占める中
三つ揃いのスーツ自体は限られた極一部に過ぎないでしょうし、ピンチバックの上着やダブル・ブレストのウエストコート等は余程探さなければ辿りつけないかも知れません。








 では、今回は上着に絞り、かつ シングル・ブレストのデザインの中で固有名称を持つ一つのスタイルをクローズアップしてみましょう。



フロントのボタン数について、かなり遡ると数も多い訳ですが、
現代的に見受けられるクラシック・スタイルとしてみれば
その多くは 1個釦、2個釦、3個釦 と成るでしょう。

それらは、釦数に限らず基本的には一つ掛けで着用されます。
(例外もある事と思います。)

1釦のデザインは当たり前ながら、
2釦では上の釦のみ、3釦はウエスト位置となるセンター釦だけを留めて着用されるのが一般的と言えます。


 2釦や3釦のデザインにおき、留める事の無い一番下の釦は 最早飾りです。
強引に引っ張り込めば 釦を留める事は可能です。
しかし、設計的に止める様に配列されていない為に 釦を留めると左右が吊られてしまって前身頃が安定しません。





 ですが、時代を遡ると 2釦デザインでも『 2釦/2掛け 』のスタイルがありました。

このスタイルは【 PADDOCK CUT 】や パドック モデル と呼ばれ、一時的には随分と普及していたデザインであり、スタイルでもあります。
実際には 1920年代あたりから随分と増え始めたようです。













 そのパドック・カットの主な特徴と致しまして、
基本的にシングルの2個釦のデザインであり
釦位置の設定が高い、もしくは その2個釦の間隔が結構狭いスタンスであった事が挙げられます。
 双方勿論 2個釦/2掛け が前提と成ります。
ラペルのデザインやポケットなどは様々です。

それらは、PADDOCK(競馬場における馬の下見所)という呼称からもイメージされる様に、カントリースタイルやジャケット等に採用される事が多かったそうです。













 では、実際にどういったデザインやバランスで
どの様な感じで着用されていたのでしょうか。

当時を振り返りながらご覧頂きましょう。















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・・・ウインザー公です。最早説明もいらぬ事と思います。


グレンプレイドの三つ揃い、上記の特徴通り かなり位置の高い所で釦が2個並んでいます。
このモデルの特徴では、高めの第1釦位置に合わせ ウエストの設定位置(シェイプされるくびれ位置)も高めに設定されています。

ただ、時代の流れの中では
構築されるシルエットが随分変わります。シェイプの仕方やデザイン然り、カットを良く見ると その時代性を感じる特徴が色々と見受けられます。

この時代でのカットは、30年代頃と比べると あらかさまなシェイプを取っていないのも裁断的な特徴です。

そして、この高めのウエスト設定位置に見合う様に 腰ポケットの位置も結構高めに付けられているのが分かります。




その他にも、時代性を感じるカット(デザイン)は これら以外にも色々と見受けられます。

例えばゴージラインの位置や角度(これは打ち合い量にも兼ね合いがあります。)、そしてラペルのエッジライン。
 現在の2釦であればラペルのエッジラインはもっとアウトカーブを描かれます。

これはフロントカットから昇る前端線が ほぼ直上線である事、それによりラペルの返り止り付近は随分シャープで痩せた感じのラペルに見える事と思います。
 ラペル幅は太くは無く、細くもありません。
(もっと深く考察がありますが、この位にしておきましょう。)

 私は若い頃に このウインザー公のパドックスーツに憧れ、、、
グレンプレイドの生地を買い、パドック・スーツを仕立てた事があります。
随分懐かしく思います。






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なんて素敵なのでしょう、、、、。



・・・2釦でも3釦だとしても、釦を一つ掛けで着用されるカットは
左右打ち合いが その止める釦での 一点留めとなりますので、良くも悪くも左右身頃は流動的であり
その動きのある様は 正に一つ掛けの特徴たるところです。

 一方、2釦/2掛けになりますと ダブル・ブレストと同様に左右の打ち合いがカチッと安定します。
 流動的では無くなる分、身頃のホールド感は増しますし、見栄え的にも確りとした印象に成ります。



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弊店にも飾ってある写真です。
シンプソン夫人の隣りにセシルビートン卿、ウインザー公の隣りに写っている御方は、公の厩舎長であり花婿好き添い人を務められたエドワード・メトカーフ少佐です。
 こちらもパドックスーツですね!












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これは、ウインザー公が実際に着用されていた TWEED の SPORTS SUITS です。
シェイプされているウエスト設定位置は、第一釦と第二釦の間にあります。

フロントの打ち合い部分、前端線は第一釦から第二釦までは直下線、
第二釦を超え 急にグワッと裾にかけて CUTAWEY!









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こちらは ややボクシーなシルエット、胸も蓋付のポケットを採用しています。













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1939年製 ロンドンのとあるテーラーで誂えられたBESPOKEによる三つ揃いのスポーツスーツです。 こちらはピークドラペルですね。

これも本当に美しいバランスです。何もかも、、、。
フロントカットはスッキリと直線的なカットですね。


ウエストコートは、シングルの 5釦/5掛け のモデルです。
こちらのスーツ、取りあえず釦は全て留めるという事ですね!
 この釦全掛け上中セットはボチボチ見受けられるセットです。












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こちらも OLD のテーラードスーツです。
多少の時代の違い、そしてテーラー(お店)が違えば微妙にバランスも違うのが見てとれます。

このカットは第一釦位置とウエスト位置が随分リンクしているのが分かります。
バストラインから すぐにウエストライン、、、相当近いです。








やはり写真を見ても、ややスポーティーな感じのスタイルが多かったと思いますが
次は こちらをご覧頂きましょう。














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 もう本当にエレガントなA.イーデン氏、
パドックカットのピークドラペル、中にはダブルのウエストコートを合わせた極めてエレガントな三つ揃いのスーツです。

このバランスにしては、腰ポケット位置がとても低いと言えます。
多少の野暮ったさも また良し!


ため息が出る様な格好良さでが、パドックどうと言うより 正にイーデン・スタイルとして
御自身のらしさが滲み出ておられます。

 この自信に満ちた佇まい、これが説得力であり、格好良さでもあります。
洋服が格好良いだけでは こうはいきません!









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こちらはストライプの生地で!
随分このスタイルを気に入っていたようですね。
















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憧れのセシルビートン卿、1936年の写真です。
涼しげなシアサッカーのスーツ、これも先ず間違いなくパドックスーツだと思います。
着方として、上釦のみ止めての着こなしですね。

3‐パッチポケットで簡易に、そして随分柔らかめに仕立てられているのが分かります。
デザインバランスは見惚れる程に美しい!! 洋服バカにとってはそう見えるのです(笑)。

シャープなエッジラインのラペル、、、、コレですよ。




 いつかはワードローブに是非加えたいシアサッカーのスーツ、
これ以上格好の良いシアサッカーのスーツを見た事がありません。













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1930年のイラストです。
 フロントは開けておりますが、イーデン氏と同じく ピークドラペルのパドックスタイル。
ウエストコートは5釦/5掛けです。
足元はスパッツも着用しており、大変エレガントにまとめられたスタイルです。

肩周りやシェイプの感じも随分変わってきました。(まぁ、絵ですけど、、、。)











如何でしょうか、その当時を振り返れば 随分日常的にも着られていたスタイルであった事がお分り頂けたでしょうか。



紳士服は歴史で繋がっています。



では、もう少し時代を遡ってみましょう。
このイラストをご覧くださいませ。













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1918年です。
当時はとにかくタイト目で細い! トラウザースも細い!
しかし、少し誇張しすぎのような、、、。

ウエストの設定位置は相当高いですね。それよりも高く配置された第一釦位置。

イラストなので、どこまで信用するかはさておき
随分前からこの様なスタイルは既にあったという事です。














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では、1910年の写真です。
私の慣れ親しむ好きな時代のカットとこの時代のカットでは大分違いがあります。
バランスの構築、FITTINGの価値観、、、
 これはこれで本当に美しく、素晴らしい紳士服です。


シャツのカラーを見れば、随分と時代を遡って来たという感じがしませんか。

 こんなにもエレガントであった紳士服、今を振り返えれば なんか申し訳なさも、、、、。












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1920年に成りました。
先の写真と大きくは変わりませんが、やはり10年サイクルで見ていくと
少しずつ変化していくのが分かります。

同じくシャツのカラーを見て下さい。
随分見慣れた感じに成りましたね!









・・・・まだまだ誂え服が幅を利かせていた時代、
生地はゴツくて厚さと共に確り打ち込まれたヘビーなものばかり、それをガッチリと仕立てられた それらテーラードの服は相当寿命が長かったと言えます。
 誂え服は仕立て直しの上で、子へ、孫へと言われていた時代です。


短く見積もっても軽く10年は着ているでしょうから、、、安易に写真の撮られた時代 = その服が仕立てられた時代と見る事は出来ません。

それも加味した上で、捉えていく必要があります。









ですが、例えば1910年の写真、
実在していたこれらスタイルをベースに 冒頭のウインザー公やお手持ちのスポーツスーツの様な感じへと流れていったという事です。

1910年代、20年代、30年代と移り変わっていった様が垣間見られたでしょうか。



しかし、、、、現代的なクラシックスタイルの中では これらパドックカットは基本的には姿を消してしまいました。(例外はあるかも知れません。)

 では、何故下のボタンを外す様になったのでしょう。
これについてはもう少し掘り下げて勉強する必要があります。






 ご興味の無い方には どれもこれも同じ様なスーツに見える事と思います。
今回の話など もう本当にどうでも良い事でしょう。


しかし、紳士服を愛し 学ぶ者にとっては全然違います!

紳士服の奥深さ(歴史)を少しでも感じて頂けましたら 頑張って書いた甲斐があるというものです。






今回の PADDOC CUT は Aに続きます! 
是非楽しみにしていて下さい。
楽しみにして下さる方が少しでもいると良いのですが(汗)。






男の服、テーラードの紳士服には まだまだ皆様の知らない魅力が沢山御座います。
こんな専門的な事は特に知る必要がありません。



 しかし、こちら側の人間は大いに学ぶ必要があります。
紳士服は歴史です。テーラードの紳士服は、そんなに軽いものではないからです。


その歴史に対し、リスペクト無くして 重みや説得力ある服作りは出来ないと思っています。

日々精進です!!







 では、今週もお付き合い頂きまして 誠に有難う御座いました。








・・・・・・・・来週は ゴールデンウィーク という事もあり、大変恐縮ながらBLOG更新のお休みを頂きます。 (お店は通常営業です。)


次回は、5月12日(火)に更新致しますので
是非とも宜しくお願い致します。






posted by 水落 at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Style | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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