
金色に光り輝く大天使ミカエルの像と共に、鮮やかで透き通る様な美しき青空
残暑お見舞い申し上げます。
昨日の7日には 早くも『立秋』を迎えました。
早くも残暑という事になりますが 長引かないと良いですね。
学生さん達は長くて楽しい夏休み、皆様もそろそろお盆休みの方々が多い事と思います。
弊店におきまして、8月は 定休日以外は通常営業となりますので
お休みの中 お時間が御座いましたら 是非ともお気軽に遊びにいらして頂ければと思います。
さて、先日まで行っておりました HOUSE STYLE ORDER限定:ささやかなキャンペーンの期間には とても多くの方々にお越し頂きまして 誠に有難う御座いました。
早くも秋冬用のスーツやコートなど、沢山の早期ご注文を頂戴致しました。
まだまだ暑さは続きますが、涼しき秋を迎えるのが楽しみでなりませんね。
そんな洋服が大好きな皆様方におかれまして、秋冬物のスーチングといえば何を一番に思い浮かべるでしょうか。
『 フランネル 』 これは絶対に外せないスーチングだと思いますが、その中でも
クラシックな チョークストライプのスーツは憧れと共に欠かせぬスーチングではないでしょうか。

・・・・・ウインザー公もチョークストライプのスーツをこよなく御愛用されていた方です。
魅力的なダブルのスーツを御着用されていますね。
今週は、チョークストライプ スーチング に拘って御紹介させて頂きたいと思います。
では、御紹介させて頂く前に
先ずは予備知識を少々頭に入れて頂ければと思います!
チョークストライプのチョークとは、私達 TAILOR が裁断する時に生地へ線を引く道具であり 日本ではチャコとも呼ばれています。
その縞の特徴である ややボケて掠れた感じが正にフラノの生地へチョークで線を引いたかのようですよね。
話は変わりまして、フランネル(通称フラノ)には 2つの加工が施された上でフランネルと成り得ます。
それは、【 起毛 】 と 【 縮絨 】 です。
起毛は 漢字の通り 生地の表面を引っ掻き、毛を起こさせる事です。
昔はアザミの実を使って引っ掻いていました。(今でも極一部では行われているようです。)
縮絨とは、生地に圧力を掛け 敢えて縮めさせます。
そうすると確りと生地の目が詰まり、毛の先端は絡み合ってフエルトの様な感じになります。
この二つの加工を施す事によりフランネルとなり、織り込まれたストライプ自体もボケた感じとなるのです。
もう一つ、生地を織り成す糸ですが 羊毛紡績は、紡績法、原料、使用目的により
大きく2種類に分かれています。
(原毛は、羊の種類や 体の部位でも毛の太さや長さも異なりますので選り分けられています。)
梳毛糸【 WORSTED=ウーステッド 】 と 紡毛糸【 WOOLLEN=ウーレン 】 です。
かなり簡単に御説明させて頂ければ、、、
梳毛糸は、選ばれた長い繊維で作られている糸であり、その長い原毛を梳いて作られています。
細い糸作りに向いており その割に繊維長が長めなので強度なども稼げる事になります。
故に、多くのスーチングは梳毛糸で織られている訳です。
紡毛糸は、梳毛糸の様に梳く事無く 短い繊維も混ざった状態で直ぐに糸にされていきます。
ツィードなどは紡毛糸で織られた代表格でもあります。
ザックリと素朴な雰囲気になるのです。
フランネルには、【 WORSTED FLANNEL 】 と 【 WOOLLEN FLANNEL 】 の2種が存在する事になります。
(厳密には、ウーステッドとウーレンの交織があり得ますので 実質3種となります。)
ウーステッド・フランネルは梳毛糸で織られているので、とても小奇麗な顔立ちになるのが特徴です。 お上品さも持ち合わせたフラノですね。
綾織であれば、その綾の織り目(斜めの畝)が薄らと残って見えますし、縞のボケ感は弱めです。
反面、ウーレン・フランネルは紡毛糸で織られています。素朴で やはりフエルトの様な顔立ちと成り、綾織の畝は ほぼ見えない状態となります。
縞のボケ感などは 当然ウーレンの方が強くなります。
上記から分かる通り、ストライプをフランネルで表現した場合
縞のボケ方に大きな違いがあるという事にもなります。
・・・・・この知識を踏まえ、これから御紹介する魅力的で様々な個性ある チョークストライプを是非ともご覧頂ければと思います!

・・・・・1938年、ベルギーはブリュッセルに設立された 高級マーチャントの代名詞でもある SCABAL の素晴らしいチョークストライプを2色 御紹介致します。

・・・・・ SUPER 100’s 400g
渋きダークグレーのチョークストライプです。
梳毛に使う様な長い原毛を使用し、紡毛糸として仕上げた とても質の高いウーレンフランネルであり、拘りのスキャバルらしいクオリティーです。

・・・・・縞のボケ方と良い、縞の間隔と良い、正に100点と言える程にベーシックのど真ん中たるデザインです。
ウエイトも厚過ぎず 薄過ぎない、本当に丁度良いウエイトバランスです。

・・・・・梳毛に使う原毛より引き揃えているので、強度も間違いありません。
綾織の畝など全く見えませんね。 これぞ『らしさ』溢れるフランネルであり、チョークストライプです。

・・・・・こちらも同じくスキャバル製であり、上記ダークグレーの色違いとなります。
シックなネイビー地に、ボケたチョークストライプがとても映えます。
グレーベースより、こちらのネイビー地の方が縞のコントラストが付きますね。

・・・・・この縞のボケ感こそ、チョークストライプの真骨頂です。

・・・・・紳士のスーツは基本的にネイビーかグレーとなります。
皆様はネイビー派でしょうか、それともグレー派でしょうか。
ど真ん中、直球勝負の素晴らしい チョークストライプ・フランネル です。

・・・・・お次は 英国の老舗ミル EDWIN WOODHOUSE からの御紹介です。
創業は1857年であり、1913年にはリーズ近郊のファースリーに拠点を移され、ゴント家が4代に渡り事業を継承、発展されて参りました。
しかし、数年前にゴント家はE.WHを手放す事を決断されてしまいました。
この生地は、当時 まだゴント家が確りと作っていた頃の 今となっては貴重なフランネルです。
多くのミル(織り元工場)は、スピナーより糸を買い付けます。
しかし、E.WHは糸から紡績出来た数少なきミルの一つでもあったのです。
糸から作る事が出来るのですから とても珍しかったり、工夫されたりと拘った糸や生地も多く織られておりました。

・・・・・ミディアムグレーの素晴らしいチョークストライプ・フランネルです。
こちらも SUPER 100 ですね。

・・・・・ご覧になれますでしょうか。
本来 フランネルは WORSTED FLANNEL か WOOLLEN FLANNEL の2種に分かれます。
冒頭で御紹介した通り、糸の作り方が 2通りに分かれるので どちらの糸で織られたフランネルなのかという事になります。
しかし、WORSTED−WOOLLEN FLANNEL とあります。
これは ウーステッド糸とウーレン糸を交織して織り上げられた『第3種』のフランネルという事になります!
以前は パンチのある 6-PLYのホップサックですとか、こういう独特なフラノのもありますし ゴント家には手放して欲しくなかったのですが仕方がありません。

・・・・・先のスキャバル製と比べ、やや縞の間隔は狭めとなります。
( 左:スキャバル 右:ウッドハウス )
この生地のウエイトは 300〜310g 位であり、フランネルとしては軽めの部類でしょう。

・・・・・ご覧ください。 とても綺麗な顔立ちです。
ウーステッドの特徴も持ち合わせる為、綾織特有の畝が少し見えますね!
とても柔軟でしなやかです。
ウーステッドとウーレンを掛け合わせる事によって 双方の旨味が引き出されている生地ですね!
これも素晴らしいフランネルであり、E.WHらしい出来栄えです。
旧E.WHの生地は 今となっては貴重です。
・・・・・再度 ウインザー公夫妻にご登場頂きます。
チョークストライプ、大人の余裕をも感じさせるスーツです。

時代性もあり、ゆったりとした優雅なシルエットのトラウザース、足元にアーガイルを持ってくる辺りは 靴と共に フランネルたる公のポジションを表しているとも見受けられます。
・・・・・では、最後に真打ちの登場です。
1772年創業の超老舗ミル、 FOX BROTHERS からの御紹介です。

『 FLANNEL 』 実は、同社が1950年代まで その商標を保有されていた事でも知られており、正に FOX = FLANNEL でもあった訳です。
ウインザー公、ウィンストン・チャーチル、ケーリー・グランド等にも愛されてきた肉厚のフランネルは今も健在します。

・・・・・あまりにも有名な写真ですね。
チョークストライプの三つ揃い、ポルカドットのボウタイ、口元にはシガー。
氏が一番イメージされるスタイルでもありましょう。
・・・・・近年には社長も変わり、随分と良い意味で生まれ変わったと思います。
コレクションもかなり広がり、高品質はそのままに 様々なバリエーションも増えました。
そして往年のフランネルを思わせるコレクションも健在です。
そんな中でも、私が一目惚れしてしまった 一つのチョークストライプの生地がこちらです!


・・・・・チョークストライプの多くは、グレーのバリエーションと共にネイビーがあり、ブラックといったところが一般的です。
これ、写真だと難しいと思いますが 何色かお分りになりますでしょうか。
グレーとブラウンを微妙に掛け合わせた様な グレーシュブラウン なのです。
こんな激渋で味わいのある色味のチョークストライプなんて見た事がありません!!

・・・・・ウエイトは 約 545g と、かなり確りとしたウエイトです。
肉厚で身の詰まった美味しそうなフラノ、これは正に一生物となるスーチングです。
ウインザー公やチャーチル元首相が着用していたフランネルは、やはりこういった肉味のあるフランネルであった事でしょう。
綾織地も全く見えず、縞のボケ感と良い これこそ WOOLLEN FLANNEL と言わんばかりです。
素晴らしいです、FOX社は是非ずっと織り続けてもらいたいシリーズでもあります。

・・・・・冒頭のスキャバル製と並べてみました。
色のトーンはスキャバルのチャコールグレーが深いですね。
縞の間隔は同じ位です。 こうして比べると、FOX(右側)の微妙な色目がお分りになると思います。
・・・・・フランネル、やはり生地の持つ独特の雰囲気は やや砕けた印象をも持ち合わせますし、それがフランネルでもあります。
もともとは英国でも寒さ厳しき所にて、カントリージェントルマンとしはマストアイテムとなる素材でした。
そういった意味では、ツィード同じく都会で着用するにはいささか田舎くさいとも思われていたフランネル。
そのポジションを押し上げた功労者こそ ウインザー公でもあった訳です。
ストライプが入る分、締まった印象になるというものですが
そのフランネルのポジションを考えると、ウインザー公では無いですが こういった微妙な中間色のチョークストライプというのも 、正に打って付けであり 乙なセレクトではないでしょうか!

・・・・・この良い意味でヤレた感じ、こんな雰囲気が出るまでには どの位着用すれば手に入れられるのでしょうか。
勿論着用頻度にもよりましょう。
長い期間への着用に耐えうる生地でなくては成りませんし、それを支える上質な仕立てでなければ成りません
『 誂えたスーツは子の代、孫の代まで 』 と言われた時代もありましたが、現在多くの生地はそこまでの耐久性は殆どありませんし、それよりも そういった概念自体が無いでしょう。
ただし、VINTAGE含め 中には こんな時代から頑なに織り続けられてきている生地も勿論存在致します。
紳士たるもの、軽々と10年以上使いこなしてこそ こんな味わいとオーラを放つ渋みが出てくるのではないでしょうか。
メンテナンスを怠らずに愛情を注げるパートナーを、今から少しずつでも増やしていって頂ければと思います。
男の持つべき物に対する価値観は、そのままスタイルの形成へと繋がります。
・・・・・如何でしたでしょうか。
寒くなるのが待ち遠しくなりましたでしょうか!!
暑さが苦手な私は 一秒でも早く寒くなって欲しい位です(笑)。
保温性に優れ、温かいフラノのスーツに身を包む日を心待ちに、、、、
是非 皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。
今週も最後までお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。
・・・・・弊店 HOUSE STYLE ORDER におきまして、いよいよジャケットの袖口に携えられる 【 TURNBACK CUFF 】がご注文頂ける様になります。
今までは BESPOKE のみでの対応でしたが、協力して下さる工場さんの努力の賜物であり、新しい事を覚えていこうとして下さる前向きな姿勢があってこその具現化であります。
心より感謝しております。
また改めて御紹介させて頂ければと思いますので、宜しくお願い申し上げます。