2021年02月16日

【 GREATCOAT 】







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1917 : EDWARD [



正にWW1の時代、後のウインザー公です。
英国のオーバーコートには歴史的な背景ふまえた魅力的で素晴らしいオーバーコートがたくさん存在致します。
それらは ある程度形が変れど、現在でも脈々と生き続けております。

様々なオーバーコートの種がある中で、それらの各発祥は用途により分けられますが ミリタリーコートからの出身が多い事も事実です。
挙げれば相当ある訳ですが、極一般的に有名なのは トレンチコート はその典型でしょう。正にミリタリーコートそのままに形を残しつつ 今でも愛され続けております。

これら紳士服の歴史的にも欠かせぬミリタリーコートの中で、今回は冒頭の写真でも着用されている英国コートの勇【 GREATCOAT 】を御紹介させて頂きたいと思います。













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・・・・・英国の有名な歴史ドラマである 【ダウントンアビー】 からの一コマです。
1900年代初頭を舞台に、当時の史実や社会背景を織り込みつつ、貴族と使用人との人間模様が描かれた作品となります。

私が言うのも失礼ながら、このドラマは装いの歴史を学ぶ上でもかなり素晴らしい名作です。

装いにおける昨今のカジュアル化の流れは皆様も御承知の通りです。
この時代は普段の夕食時でさえ正装を着ていた訳ですが この辺りからホワイトタイ(正礼服:テールコート)に変わり ブラックタイ(準礼装:ディナースーツ)に切り替わり始めた頃となります。
ドラマの中でもグランサム伯爵はブラックタイの装いにて『こんなカジュアルな服を着る時代になってしまった、、、』と嘆くシーンがあるそうですね。
カジュアル化の流れは長きに渡り進行し続けている事が窺えまます。






実はこの度、大変御贔屓を頂戴しております顧客様より
このコート(ダウントンアビーより)を見て是非着てみたいと思われ、ご相談を頂戴致しました。

グレートコートは正にミリタリーコートです。
これを尊重しつつ、普段着として使いやすく落とし込みたいとの事。

軍服ほど凛としてエレガント、かつ 男くささを感じさせる服はありません。
お気持ちは本当に良く分かります。

『 お任せくださいませ! 』











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・・・・・グレートコートとは、、、、
服好きの方であれば幾つかの特徴も挙げられましょう。
しかし、グレートコートというのは分かり易く言ってしまえばグレートコートと言うそれなりに大きな枠で囲われたカテゴリーの固有名称と御理解下さいませ。
 バリエーションは多岐に渡り、時代の流れによる変化、部隊や所属、 仕立てTAILORでも違いましょう。

分かり易く最低限の区分けとしてみても陸軍(ARMY)と海軍(NAVAL)に分かれ、WW1の時より軍の将校達(OFFICER’S)が着用したコートとなります。

私の知識下では ほんの表層しか語る事は出来ませんが、少しでもイメージ出来る位にはご覧頂ければと思います。










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・・・・・英国の古き裁断書【 Tailor & Cutter 】にも当然掲載されています。
ダブル型4連釦、腰には蓋付きのスラントポケットを携え、背の腰にはハーフベルト(3連釦)と共に、背中にはインバーテッドプリーツと深いセンターベント(釦留め)、肩にはエポレット(肩章)が付き、袖口には深いターンバックカフが付きます。
 正に写真の通りであり、当時の陸軍用ベーシックなスタイルです。


因みに専門的にはなりますが、腰ポケットの上 脇ダーツには そのシームを利用したスリットが設けられているのが見てとれます。
 これは軍服であり、剣を携えるので必要なディテールでもありました。

軍服である以上、階級バッジを付ける肩章も欠かせません。
袖口にはかなり深いターンバックカフが付けられていますが、これは防寒の意味があり 生地をもう一段折り返す事により暖かさを求めたとされております。
また、重さにより袖落ちも良いと言えますね。

 深きダブル前も防寒・防具的な役割も担っている訳です。










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・・・・・上記裁断(製図)を仕立て上げると この様に成ります。

他に大いなる特徴として挙げられるのが『 衿 』です。
アルスターカラーは良く見受けられるかも知れませんが、こちらは
【 STAND AND FALL COLLAR 】 と言いまして、シャツの衿に近いのです。
シャツの衿は、『台衿』と『羽衿(上衿)』の結合2枚構造ですね。

故に、シャキッと立ち上がり 写真の様に首元まで確りと留める事が出来ます。
アルスターカラーでも一応留める事は出来たとしても、、、、こう立体的には参りません。


私の世代までは学生服と言えば詰襟の学ランでした。
立ち衿(スタンドカラー)ですね。
衿のフロント(前中心)は打ち合いが無く、重ならずにホックで留めます。
 これに羽衿が付いたのが今回の STAND & FALL COLLARと思われ下さい。


丈の長いロングコートです。
オフィシャルレングスは地面より何インチまでとの記載も見た事があります。

これも理に適っていますが、コートは大抵膝位置を基準にして膝上何p、膝下何pと設定目安が置かれます。
グレートコートは軍服ですね、身長は人それぞれ、膝位置も違います。
故に地べたからの算出であれば、見栄え的には皆一律に見える事になりますね。












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・・・・・上衿を外し、折り返して着用されています。
深いダブル前ですから折り返れば相当大きな下衿(ラペル!?)になりますね。
 因みに、下衿を釦で留めていますが 設計上では折り返って留める様にはされていません。
しかし、これはシャツの釦ダウンカラーに同じですね。
羽衿は風でバタバタなびくので釦で留めた訳ですが、これも大きな下衿を遊ばぬ様 便宜上留めているのでしょう。

 アルスターカラーはベタッと首元から胸部まで接地しますが、この衿型はご覧の様にかなり立体的に成ります。

台衿の前端にはホックが見えますね。
これも特徴なのですが、構造上は2枚衿であり、裏側となる地衿は分離され(STAND & FALL)仕立てられています。
 しかし、表側となる上衿は1枚で馴染ませ据えられているのです。
上衿を切り替えない事により、縫代を無駄に増やさず、硬くする事無く、更にスッキリと見栄え良く、、、これはTAILOREDな技術が伴います。

リアルなグレートコートは最低でも34ozレベルのメルトン地との事ですから丈夫で強く、暖かいでしょうが 相当の重さと厚さになります。













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・・・・・こちらは 海軍用のグレートコートですね。
同じくダブル前、この裁断書のデザインは6連釦、多くのディテールは陸軍と似ていますが、背中の中心は首元から裾まで広がる優雅なインバーテッドプリーツが畳まれています。

コートの着丈が長ければ 足さばきを良くする為にも裾周り量(ケマワシ分量)を多く取る必要があります。
 その為にベントを切るか、深く畳まれた大きな襞を取り 分量を稼ぐかとの判断になります。












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・・・・・エドワード8世を始め、皆 グレートコート を着用しております。
フロントは5連釦、衿は台衿付きの仕様(STAND & FALL COLLAR)ですね。

グレートコートの要尺ですが、丈も長く、パーツも多く、兎に角沢山の生地が必要となります。
34ozレベルのメルトンで仕立てられたグレートコートを持った時の重さが想像できますでしょうか?
 既にミリタリーコートを着用するだけでも体力が必要です!














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・・・・・左側、先頭に エドワード7世。
これまた英国のコートを語る上で欠かせぬ BRITISH WARM OVER COAT です。
ダブル型3連釦、アルスターカラー、肩章が付き、袖口には2個釦が所謂一応のマストです。
こちらは敢えてこの丈であり、合わせる着用スタイル(下物)に関係があります。
( BRITISH WARM はご注文が入ったら また分析を掲載するかも知れません!)

奥にグレートコートのエドワード8世、上衿まで確りと閉じての御着用です。
7世、8世の左腰をご覧下さい。 剣を携えていますね。
これ用のスリットが軍服である以上 備え付けられていたのです。
(グレートコートは脇ダーツを利用した縦型、ブルティッシュウォームは蓋無しチェンジポケットの様な横型が歴史上見受けられます。)














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・・・・・現代においてもグレートコートはミリタリーコートとして君臨し続けます。
チャールズ皇太子が着用するコートの衿は大きなアルスターカラーですね。
随分と印象が変わるのが見てとれます。

そして、剣の携え方の違いにも注目ですね。
前裾を開き、釦タブでその前裾を留められる様になっております。
 先の脇ダーツに作られたスリット、今は作られなくなってしまったのでしょうか。










・・・・・では、幾つか リアルな ARMY GREATCOAT を見て参りましょう。
少しずつ違いがあるものの、大きな系譜は同じです。
軍服である以上、基本的に釦は金属製(真鍮など)の連隊釦【 METAL REGIMENTAL BOTTON 】が付けられます。










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・・・・・1941 VINTAGE ARMY GREAT COAT
こちらはARMYですが、背中は裾までインバーテッドプリーツが見受けられます。
下衿(胸部)を開けていても衿が留められる、これがS&F COLLARの特徴でもあります。













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・・・・・1945 VINTAGE:AUSTIN REED製

左脇ダーツにスリットが見受けられますね。

以前 古着屋さんで BURBERRY製のオーダーメイドのグレートコートを見た事があります。
やはり40年代位でしょう。 筋トレが出来る程の重さでした(笑)。


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・・・・・如何でしたでしょうか。
始めに戻り、ダウントンアビーで登場した ARMY GREATCOAT です。


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先にも触れましたが、WW1の時に登場したBRITISH WARM や GREATCOAT は将校の軍用コートでした。

戦後になり、将校達は私服の時でもそれらコートを着始め 段々とコピーされ、次第に大衆へと広がって参りました。

TRENCH COAT(トレンチコート)も正にミリタリーコートです。
軍服は生死にも関わりますので用途や目的、そして必要な性能の全てがデザインされていますので こんなにも高性能なコートは無い訳ですね。
 かつ素材からして丈夫ですから大変長持ちする訳です。

グレートコートの素材をウールから防水性を持たせたコットン地に置き替え、雨を考慮し各所ヨークを携え、雨用に特化した性能を加えられたものがトレンチコートであり、ベースデザインがとても似ている事が御理解頂けた事と思います。





 では、こんなにも奥深き魅力が豊富なミリタリーコートであるグレートコートを 当店では顧客様と共に どの様に料理したのか、、、、

表層的なデザインを掬い取っただけでは そのコートに説得力と言う重みが無き 軽々しいファッションコートになってしまいます。
 歴史を踏まえ、出来る限り本質を学び、先人達に敬意を踏まえ理解する事が必要です。
あとは そのリアルを解釈した上で、どう料理するのか、、、、ここからは顧客様と私の表現となります。


来週 じっくりと御紹介させて頂きたいと思います。








かなりマニアックなお話でしたが、今週も最後までお付き合い頂きまして 誠に有難う御座いました。

引き続き宜しくお願い申し上げます。







posted by 水落 at 09:00| Comment(0) | Style | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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