2月も後半に入り、日中の日差しは少しずつ春めかしく成って来たように思います。
週末から昨日まで随分と気温も上がりましたが、まだまだ油断は禁物です。
さて、先週御紹介させて頂きました【 GREATCOAT 】はご覧頂けましたでしょうか。
連載ネタとなりますので、まだの御方は是非先週分よりお目通し頂けましたら幸いです。
グレートコートに関し それなりに御理解が頂けた事と思いますが如何でしょうか。
そんなミリタリーコートをタウンユースに落とし込むべく どんなコートが仕立て上がったでしょうか。
今週はO様よりご注文のグレートコートを当店なりに調理致しましたので是非ご覧頂ければと思います。
・・・・・今週は御説明もやや控えめに ディテール満載なグレートコートを存分に写真をメインにてご覧下さいませ。

このごく自然なポーズ、袖の皺加減により生地の風合い・雰囲気も伝わる事と思います。
ヘビーウエイトなメルトン地ではこうはなりません。

・・・・・勿論 フルキャンバス仕立て、型紙も精度高きスーツの上着型紙より導いておりますのでインナーとの高度な合致性は言うまでも有りません。
背中心のプリーツはまだ閉じたまま、背ベルト、エポレット、カフ等もまだ付いておりませんので 特に後姿はシンプルですね。

・・・・・ではいよいよお仕立て上がりで御座います。

この度お選び頂きました生地は、英国の老舗マーチャント:DUGDALE社よりネイビーのキャバルリーツイルお選び頂きました。
色味もネイビーですから そんな所も普段使いを意識されての御選択となります。
そもそもこのツイル地は騎兵隊の軍服にも使われていた丈夫で確りとした生地(織り地)です。グレートコートにも抜群の相性ですね。
しかし、扱いやすさや着用出来る期間なども踏まえ ウエイトは500gとコート地としては中肉レベルのウエイトに抑えられました。
リアルな古着と比べれば約 1/2 です!
タフで皺にも強く、本当に仕立て映えのするこの生地は
クリアカットされた表面にて埃も付き辛く、皺になっても復元力が高いので悪天候含め 粗雑な扱いでも全然へこたれません。
生地はそこまで地厚でなくとも コートのインナー(スーツ等)は秋冬用をお召しでしょうし、丈も長く かつダブル前ですから タウンユースであれば十分に雨風・寒さを凌げます。
なによりも、纏う喜びと格好良さですよね。
だからこそのご注文で御座います。








・・・・・先週お話した STAND & FALL COLLAR ですが、ご覧の様にシャツ衿の如く 台衿(STAND COLLAR)と上衿(FALL COLLER)とで別れた構造になっているのが見てとれる事と思います。

・・・・・土台(裏側)となる地衿は二連構造ですが、その上から被せる表側の上衿自体は一枚で覆います。
先の写真の様にシーム(分断線)がありませんね!

・・・・・フロントに小さなタブと 小さなボタンが見えます。
先週の裁断書にもご丁寧に記載されていましたね。
フロントはデザイン・構造上 腹部までしか釦で留まりません。
そもそも防寒着でもあり、その分丈も長いのです。
歩く時などは外していた方が足さばきも良く 動きやすい訳ですが、いざ雨風の時含め必要な時は前裾を閉じられる様になっております。

・・・・・裏地はネイビーとグリーンによる交織のビスコース裏地を御選択です。
インバーテッドプリーツは生地が畳まれて重なり合い、ヘム(裾折代)含め 生地の厚さが問題となって参ります。
出来る限りサッパリと厚さを軽減しつつ、見栄え、強度などを兼ね備えた縫製的処理が必要となります。
また、裏地に関しても様々な据え方がある訳です。
このコートは相当考え、私なりに より良き一番理に適った方法をとっています。
(古着などでは 後身頃の裏地を腰までで留める背抜きに近い仕様も見受けられますし、表地プリーツと重ねて裏地も畳み込んでしまう仕様なども御座います。)
表地に持たせたプリーツの性能(幅)と同等のポテンシャルを持たせつつ、表地に直接的に影響を及ぼさせない。
それでいて動きやすさにも伴う滑りの効果として裏地は裾まであった方が良い訳です。
一つの技法にはメリットが有り、デメリットも兼ね備えています。
表地の強弱や厚さ、使用用途なども踏まえ 何を尊重するかにより多岐に渡る技法の一つをチョイスする事になります。
今回のチョイスは私なりのベストであり、様々に大きなメリットが幾つも御座います。
が、デメリットは、、、、、手間と時間が掛かる事ですね!
もっと手間をかけようとすれば幾らでも工夫が可能ながら、落とし処を決める事も需要な要素でもあります。
技術にはキリが無く、考えれば幾らでも発展出来るという事です。
職人技と言うのは正にアナログの典型でしょう。

・・・・・釦について少し触れましょう。
先ず、今回のご注文に際しメタル釦はミリタリー感満載なので もともと却下です。

O様は共地による包み釦と言うアイディアも御座いました。
それも乙ですが、言う程では無いものの 摩擦抵抗が強いので着脱があまりスムーズでは無い事、そして手配できる包み釦自体の土台が格好悪い事などにより 私から対抗馬としてお勧めさせて頂いた釦がコチラです。
英国より取り寄せた釦【 BLACK LIVERY 】です。
包み釦にもテイストが似ていますね。
『 リヴァリー/ライヴリー 』 ・・・お揃いの服や制服等との意があります。
本当に広い呼び方であり 様々なメタル釦なども含まれるとも言えます。
紋章などや組織、動物、スポーツなど様々なモチーフがあります。
例えば ブレザーを仕立て、メタル釦を選ぶとします。
クラウンや紋章、アンカーなど本当に多岐に渡り様々です。
迷った挙句、、、特にモチーフに固執せず個人用でもある為、敢えて模様無しのプレーンなメタル釦を選ぶ、それがコレですね。
これはプレーンなベースとなるLIVERY BUTTONと捉えて下さい。
これにアンカー(ANCHOR/錨)モチーフを入れたらどうですか! いかにも海軍ですね。
PEA COAT(リファージャケット)にこういった類のブラック釦が付いているのがイメージ出来ましょう。

・・・・・ケント王子のエレガントな 正に真の意味での NAVY BLAZER です。
釦は海軍の BLACK LIVERY BUTTON です。
このイメージを持ってきたのです!
O様のイメージは 包み釦、釦付け穴が無く 裏に足が付くタイプとなります。
そこも尊重しつつ、メタルの様に配色になりませんので目立ちもしません。
かつグレートコートですから!
今回のグレートコートは裾まで深き幅広なインバーテッドプリーツを採用していますし、言わねば伝わらぬ様々な 引っ掛けや兼ね合い があるのでした。
この釦にモチーフが入ると重々しくなり、やはり軍服イメージです。
組織に関係なく着たくて仕立てるコートです、O様にも気に入って頂けました!


・・・・・フロントの釦はOLD感漂わせ、迫力を出す意味でも 敢えてこのサイズを選んでいます。
因みに英国でもこのサイズの釦は種により廃盤が進んでいるのが現状です。
リエルで迫力ある古着のダブルブレスト:オーバーコートは打ち合いも深く、大抵このサイズが贅沢に使われていた物でしたが、、、様々な物が徐々に手に入らなくなってきています。


・・・・・如何でしたでしょうか。
O様がご注文され、当店で調理したグレートコートを大いにご覧頂きました。
お歩きに成られている正に優雅でエレガントな後姿を撮っておけば良かったと後悔(汗)。
誂えの服は唯一無二であり、BESPOKEは特に『無』から生み出される掛替え無き服となります。
全ては御注文主様の御構想・御依頼を最大限に表現させて頂くのが私達の仕事です。
表層的なデザインばかりの服では無く、勿論着心地含め 耐久性や機能性など全てにおいて最大限に考えつくされ、具現化・表現された洋服となります。
O様は昔の将校さん達の様にグレートコートをTAILORで誂えられました。
『 格好良くて着やすく、日常使いには丁度良い落とし処です!』
と仰って頂き、大変喜んで下さりました。
これに尽きるのです、御注文主様が喜び 御満足を頂く為だけに時間を掛けて仕立て上げるのです。
誂え服ほど 楽しき『衣』の充実はありません。
キャメルヘアーで POLO COAT を仕立てず、敢えて BRITISH WARM を仕立てる
こんな捻ったご注文なんかも贅沢で乙なものですね!
必要な服を、好きな服を、着たい服を是非御誂え下さいませ。
O様、この度も素敵な御注文を誠に有難う御座いました。

