寒中見舞い申し上げます。
店頭では 梅ちゃんの花が開いて参りました!

明後日の1月20日には『大寒』を迎えます。
2月4日の立春まで 一番寒い時期とされていますが、2月はまだまだ寒く
もう少し寒き冬を堪能致しましょう。
こんなにも寒い時期では御座いますが、店頭の生地も今月末までには秋冬から春夏生地へと入れ替えさせて頂く予定で御座います。
2月14日まで、H.S.ORDER限定による【早期受注キャンペーン】も開催中で御座います。
宜しければ是非この機会を御利用頂けましたら幸いです。

・・・・・ウインザー公ご夫妻です。
公の着用されているスーツは今の時代 ほぼ見られませんね。
シングルブレストの2釦ですが、2個掛けです。
釦ポジションはWラインを跨ぐ高い位置に設定されています。
通称 パドックカットと呼ばれますが、認知度含め一般的ではないでしょう。
当BLOGでも4話くらいにあたって掲載致しております。
http://dittos.seesaa.net/article/418036041.html
【 PADDOCK CUT 】
1920年〜30年代には極一般的なデザイン・仕様の一つとして普通に着用されていた2釦スタイルですが、これが今では釦ポジションは下がり 上一つ掛け・下は飾りで留めない というスタイルで落ち着いています。
パドックカットは こういったカントリースーツは勿論の事、ビジネスシーンなどでのダークスーツでも採用されていました。
A.イーデン氏も有名な御愛用者ですね。
公の着るこの上着にはもう一つ特徴がありまして、腰ポケットをご覧下さい。
傾斜の付いた スラントポケット は今でも普通に見受けられますね。
しかし このポケットはカーブを付けて仕立てられています。
クレセントポケット(ハーフムーンポケット)などと呼称され、このカーブを『三日月・半月』で表しています。

・・・・・公のワードローブは膨大ですが、パドックカットの服も少なくはありません。
こちらのカントリースーツはベージュとブラウンの格子がそそるツィード、プラスフォワーズ(4より6気味!?)でのスーツで誂えられています。
時代的な部分(カット)も踏まえ、ラペル幅は比較的にシャープであり、ゴージラインの鋭角な傾斜角度なども特徴となり、やはり打ち合いも今より深めにとられています。
さて、大変博識で御自身のスタイルを若い頃より確立されておられる大変お洒落なH様より この度も素敵な TWEED SUITS をご注文頂きましたので御紹介させて頂きます。

・・・・・ヴィンテージと呼ぶほどでは無いレベルでの 古い LOVAT TWEED は、ベージュとブラウンが美しきコントラストのクラシックなハウンドトゥース(千鳥格子)柄です。
LOVATと言えばスコッチツィードの雄ですね。
イメージは正に公のスタイルよりリクエスト頂き、私なりにH様だけの服へと落とし込みさせて頂いた PADDOCK CUT です。
手前味噌ながら本当に渋くて素敵です。
釦は2個掛けであり カチっと打ち合いは定まり、Vゾーンも小さくなる分 引き締まった印象になりますね。

・・・・・先ずは裁断です。
全ての生地は『地のし』と言い、縮絨を掛けつつ 地の目を整えるという工程が必須となります。 その後に生地を冷ますと共に寝かせてから裁断です。
格子柄は縦横 直角、、、であってほしいのですが、生地は巻かれて保管されていますし、何かと歪みつつ、ミミ側とワナ側では格子感覚さえズレていたりもします。
格子柄ですから 本当に様々な個所で柄合わせが必要です!
その為にも 正確な裁断が無ければ成し得ないのですね。
縦地、そして横地、
直線具合と直角具合を合わせつつ型紙をおいて線を引きます。
更に本来は左右で2枚取り裁断しますが、柄物は片方1枚で裁断し、左右パーツの柄をキッチリと柄合わせして 残りの片側裁断を致します。
この1枚裁ちは縞柄や格子柄には不可欠な手間であり、無地では行われない事です。
表裏では案外本当にズレているので、それだけ注意して裁断しなければ成りません。
という事は、、、、無地も実はそれだけズレているが、見えない・分からない という事になります。
こういった柄物裁断の経験値を無地裁断では出来る限り予測対応する事になります。

・・・・・仮縫いが組み上がりました。
H様の御注文の多くは スラントポケットを採用されていますが、お好きな指定角度が御座います。
今回は その指定角度から乖離し過ぎないレベルで カーブの付いたクレセントポケットにてご注文を頂戴致しました。

・・・・・今回のご注文は 3Pに加え、ご覧のプラスフォワーズ(+4)、そしてFLAT CAPにて 計5P-SUITSでのご注文となります。
+4は海外含めカントリーサイドへ御旅行なさる時などに御愛用下さっておられ、素敵な写真も送って下さり光栄な限りで御座います。
(もう随分と欧州には行けておられませんから寂しいですね。)

・・・・・いよいよ仕立て上がりました。
胸のウエルトポケット、柄が合い過ぎて 無いみたいです(笑)!
この堂々としてハッキリとした格子、サイズも大柄に感じるかも知れませんが、逆にカントリースタイルですし この位ないとパンチ不足です。
この柄サイズだからこそ、美しきコントラストも生み出せるのですね。
もっと拡大しないと分かりませんが、TWEEDゆえ 絶妙にミックスされた糸で(特にこのブラウンは)表現されています。
シャープなノッチドラペル、鋭角なゴージライン、お好きな方々は こんな所にまで目を向けておられますし、本当に良く研究されお詳しいのです!
それだけお好きであり、拘りがお強い訳ですね。
逆を言えば、こういったご注文になると カッターが理解出来ていなければ上手く具現化出来ず 説得力も乗りませんから お店選びは自ずと大切な事になるでしょう。


・・・・・胸部のボリュームがとても綺麗に出ています。
横地はどこまでいっても限りなく 真横に見える事、、、とても当たり前な事です。
しかし、洋服な複雑な立体によって人体を包んでいます。
様々なカーブで構成されており、『 限りなく真横に見える様に 』 という技術・テクニックが使われております。
アイロンによるクセ取りは勿論前提ながら、芯据え含め 様々な個所で気が配られているのです。


・・・・・最終FITTINGでのご来店の日、
この度のTWEEDに合せたコーデでご来店下さりました。

・・・・・ウエストコートは 5釦・全掛け のスタイルです。
よりコンパクトな雰囲気が出ます。
ウエストコートのバリエーションも多岐に渡りますが、これも時代性がマッチしたセレクトと言えますし 流石はH様のセンスで御座います。

・・・・・格子柄のシャツはダブルカフス、素敵なカフリンクスが見えますね。
H様のカフリンクスコレクションは半端では無く、博物館級の貴重な物まで本当に沢山お持ちです。
こちらはアンティークで犬のモチーフが描かれており、左右でDOG君も違います!
この形態は半球体の水晶にモチーフを彫り込みます。
多くの場合、犬やキツネ、鳥など様々であり、ODD WAISTCOAT等に付ける釦も御座います。
掘った後、そこに少しずつ慎重に 一番表面に出す(出る)色より色を落とし込む様に付けて参ります。
着色が終わり 捲ってみれば、、、、立体的なモチーフの登場です。
この類のアンティークでは、古ければ古い程に モチーフの表現も精工・精密であり、犬やキツネなどの表情も多彩で精悍な表情の顔立ちを見せてくれます。
お好きな方はご存知でしょうが、本当にレベルが全然違います。
このDOG君の端正な顔を見れば、このカフリンクスの価値が分かる人には分かる代物と言えるのですね。

・・・・・靴もBESPOKEされた素晴らしい品質のスェードフルブローグ、タッセルがお茶目なポイントですね。

・・・・・素敵です、、、、、、。
タイはキツネ君のプリント・モチーフタイ、カントリーテイストでバッチリまとめて頂いております。




・・・・・+4にFLAT CAPも加えてポーズも!
流石の着こなしであり、H様らしさが滲み出ています。
・・・・・大変お喜び頂け、私自身も嬉しい限りです。
この日は寄る所があるとの事で そのまま着て帰られるとの事。
トラウザーズに着替え、チーフも加えて完璧な装いです。

御予約・お取り置きの貴重な生地達より
さて「次は…」
H様、この度も素敵な御注文を誠に有難う御座いました。
次のスーツも是非ご期待下さいませ。
・・・・・如何でしたでしょうか。
皆様も是非 冬の装いを存分にお楽しみに下さいませ。
では、皆様のお越しを心よりお待ちしております。
どうか引き続き宜しくお願い申し上げます。