多くの紳士たちが着用される、されてきたスーツについて
皆様それぞれの価値観をお持ちである事と思います。
スーツの起源は軍服であり、男性をここまで美しく端正に表現してくれる装いは他に挙げられません。
私自身はスーツを仕事にもしておりますし、人生の半分をかけていると言っても過言ではありません。
そんな私にとってスーツとはやはりエレガントなアイテムでもあり、実用品でもあります。
パスポートでもあり、自己表現でもあります。
先人達のエレガントなスーツを見て育ち、学び、憧れと共に表現・体現したいと思っております。
そんな理想に対し 答えは一つではないものの、確実に模範解答の一つでもある F.アステア氏 が着用するスーツは格別です。

・・・・・正に美しきスーツ姿であり、氏らしさも伴い体の一部となっているようです。
キュっと絞られたアームホールは高き機能性と共にシャープで美しい袖のフォルムを生み出します。
スタイル含め、格好良さを身に着けるには 真似から入るのが一番です!
氏の様に身体的なスタイルは良くありませんが、自身なりに表現し楽しみたいと思っています。
・・・・・世界的なカジュアル化が進む昨今、スーツの着用頻度は下がり
TAILORED CLOTHINGを愛する方々におかれましては寂しき思いをされている方もおりましょう。
では、こんなお題目をご提示させて下さい‼
『 普段着として楽しめるTAILORED SUITS 』
皆様でしたら どんなスーツをお考えになるでしょうか。
ツィードやフランネルなどは確かに それに当たりますが、室内寛ぎ着レベルへ更に近ければ スーツでも畏まらずに普段着として楽しめるのではないでしょうか。
そんなスーツを考え、自分なりに仕立ててみました。

・・・・・前提として今回は秋冬用として考えておりますが、思い立ったのは大好きなコーデュロイ、食材にはコレを!
ベルベットと兄弟でもあるコーデュロイ、起毛された暖かな生地ですね。
パイル生地のパイルをカットして表面を整えます。
ウールやシルクでもありますが、今回は基本前提としてコットンです。
ウールと違い、リネンやコットンなどの植物繊維は『皴』になりやすく、ウールの様に復元力も無いので その皴は増えるばかり。
それが味であり魅力でもあります。
砕けてリラックスした印象を与えますが、反面シワシワに成り過ぎると だらしなさも感じさせてしまいます。
【 SMOKING JACKET 】
名の如く、タバコを吸う時の為に用意・デザインされた寛ぎ着であり、ディナースーツ(タキシード)の原型とされています。 (今ではタキシードと同義語となります。)
そのスモーキングジャケットはベルベットやシルクで仕立てられました。
そんな歴史的な寛ぎ着に使われていたベルベットと兄弟でもあるコーデュロイは正に説得力があると思いませんか⁉
暖かさは毛には負けますが、起毛してヌクっとした肌さわりと共に密度を上げて暖かくしてあります。
植物繊維らしく素朴で優しく、丈夫で安心感も高きコーデュロイ。
秋冬には欠かせぬ存在でもあり、丈夫さからカントリーウェアからワークウェアに至るまで幅広く採用されております。

・・・・・抜群に良いですね〜!
キルト付きの靴も凄く素敵に合います。
イラストの様にタイを締めても良いですし、スカーフなども素敵です。
インナーはシャツに限らず、ハイゲージのタートルニット等はむしろ抜群の相性です。
スーツでお持ちであれば、アイテムそれぞれをバラシての着用も出来ますので必ず重宝される事になるでしょう。
もともとお持ちであったコーデュロイのODD TROUSERSに合わせても良いですね。
私も数本・数色御座います!

BRISBANE MOSS
CORDUROY
T1 – 12 Wale NEEDLECORD
100% COTTON
ABOUT 315g
Col. DRAB
コーデュロイにもシャツを誂えるような薄地から厚地まで揃い、畝の太さも細いものから太畝まであります。
テーラード仕立てで上着を仕立てるなら 比較的に中肉、やや薄めなコチラのシリーズがお勧めです。
細畝で同社では ニードルコード(縫い針 畝)とも呼称されています。
色は大好きな ドラブ。
くすんだオリーブ色といった感じであり、いわゆる軍用車両の色というとイメージが沸くでしょうか。
まさに自然たるアースカラーであり、軍用車両や軍服などには保護色として採用されているのですね。
自然光下だと この写真よりもう少しだけ茶味が加わって見えます。
カントリーテイストなアイテムであれば合わぬ色はありません。
また、お題目は普段着でもあり 皴を気にする事なく、汚れも目立たぬ色でもありますね!

・・・・・かなり久しぶりに自分の服を仮縫いしました。
先ずは いい歳にもなって加齢と共に体系変化がある事は否めません。
もう努力をしなければ崩れるばかりです、、、。
そして私の服は提案でもあり、受験台でもあります。
型紙でも縫製でも 新しき試みなどは顧客様へ実践する前に自前で試し、良ければ即採用もあり得ますし、良くなければ更に発展・修正・次案へ繋げる事が出来ます。
新しい芯地や付属類なども同じです!
デザインは至ってベーシックでクラシック、素材(生地)が既にカジュアルなので 敢えてポケットなどは貼り付け(パッチポケット)にせず、切りポケで端正な顔立ちを保ちます。

・・・・・両玉縁ポケットの口布地の目、これもお店や国が違えば価値観が違うように使われ方が分かれる部分です。
英国での多くのお店では横地でとるので身頃に地の目が合います。
ストライプなどは柄合わせですね。
当店は口布に力芯の類を使う事なく 伸び止め効果を持たせる為に縦地でとります。
多くの国内におけるお店では、バイアス取りも少なくありません。
それぞれに思い描く価値観や狙い、何を最優先にするかで選択している筈です。
今回の様にコーデュロイの場合、毛並みがあり、その毛並みは生地方向で色味が随分と変わります。
故にいつもと優先順位を入れ替え、英国的に横地取りして身頃に合わせ、沈み込むように落ち着かせています。
こういった素材(生地)対応は その生地の個性によって臨機応変に対応すべき事柄です。

・・・・・何てことないクラシックな 3釦、ノッチドラペルは本返り。
しかし、全てのバランス、全ての線に想いや拘りが詰まった私なりの表現であり、作品であり、実用品でもあります。
正に自己満でしかありませんが、自分自身が自信を持てずに こうやって皆様へご紹介する事など出来ません。
当店で生み出される服は 1着1着が愛おしく思っています!
傍から見れば気持ち悪いですよね(笑)。

・・・・・コーデュロイのディトーズです!
当然ながら仮縫いをすれば様々な情報を得る事が出来ます。
しかし、、、新品のコーデュロイはハリ・コシもありつつ、余分な縫い代も邪魔し、更に滑りも悪く、ゴロゴロ・モコモコしてかなり分かり辛く判断し辛いですが、、、。
袖丈はカフを付けるので見越しましたが、流石に少し出したいですね。
コットンは着用皴で多少上がりがちにも!
でも素敵、とても良い感じです。


・・・・・こう見るとコンパクトなアームホールのバランスや、袖のシャープなシルエットが分かりやすいでしょうか。
アステア氏もこの位 フィットさせているのでしょう。


・・・・・ウエストコートはダブルブレスト。
今回はデザインバランスも変えてみました。

・・・・・スポーティーなスーツでダブルのウエストコートは重いですか?
別にそんな事はありませんので ご自身の服で、お好きであれば是非!
三つ揃いのツィードだってダブルのWCでもどうぞ。


・・・・・股下は予め上げてしまっていますよ!
これから 微調整を加えて FINISH へ。
その内 完成しますから、その時が来たらコーデ含め 改めてご紹介させて頂きたいと思います。
クタクタになったコットンの味わいは格別です。
早く着込んで 早く柔らかくなってくれないかな、、、まだ完成すらしていませんが。
着込めば着込むほどにエイジングされた男前な顔に変貌してくるでしょう。
こんなところは毛よりも綿の方が強みですよね。
トラウザースのセンタークリースを付け直す場合、正確な裁断が成されていれば 畝を拾って地の目を追えますので皆様も楽で正確にプレスが出来るでしょう。
もちろん 皴は増えるばかりなので、クリースが消えたら消えたで よりリラックスした印象でご着用されるのも良いですね。
肘や尻などから畝が寝て、更には剥げていくでしょう。
これもコーデュロイの宿命であり、肘はレザーパッチを張り付けても良いですし、尻はどうしましょう、、、軍パンみたいに共生地で二重となる尻宛てでもかましましょうか。
・・・・・普段着たるスーツ、アンコン仕立てのツィードとかも魅力的ですし
皆様でしたら どんなスーツを思い浮かべるでしょうか。
誂えは無から生み出します。
ご自身の為だけに仕立てられる服ですから、お好みや価値観、欲するポジションに応じ
いくらでも工夫があり、可能性はほぼ無限に広がります。
楽しいですね〜〜。
皆様よりの素敵なご注文を心よりお待ち申し上げております。
今週もお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。

