本日 10月24日、二十四節季では『霜降』となります。
露が凍って霜が降りる頃、、、
夏と比べれば湿度も下がり楽にはなりましたが、早く霜の降りる気温になってほしいものです。
ツィードやオーバーコートを気持ちよく着られるのが待ち遠しいです。

エドワーディアンの時代です。
この頃はフロックコートをはじめ、現代で言う上着(ジャケット)の役割を担うコートが着用されていました。
モーニングコートやテールコート、これらはコートと呼ばれつつ ウエストコートの上に着る上着であり、英国ではスーツの上着はコートと呼ばれます。
(ラウンジスーツ『ジャケット』の台頭までは基本前提がコートであり、着丈は長かったわけです。)
これら上着(コート)の上には更に外套としてケープやマント、そしてチェスターフィールドコートコートなどのオーバーコートが挙げられます。
コート(ジャケット)の上着として着用されるのでオーバーコートですね。
一概には言えませんが、この当時 ボディーコートの多くは膝丈である事が分かります。
モーニングコートやテールコートなども同じ類で設定されています。
だからこそ、更に上へ纏うチェスターフィールドコート等はそれらインナーコートを隠す為に膝ホールド丈になる訳です。
センターの紳士は角度の鈍いピークドラペル、6釦3掛けのスタイルに、当時の胸ポケットは往々にして傾斜が大変強くとられ、胸ダーツは摘ままれていませんね。
一つのデザイン形態です。

・・・・・時代は進み、エドワード8世がまだ皇太子であった頃の写真です。
時代は1920年代であり、まだまだエドワーディアンの匂いが残っているのが見受けられますね。

・・・・・このコートはオーバーコートでのポジションながら、若かりし細身なお身体にフィットした素敵なバランスですね。
生地は相当 肉厚なコート地である事でしょう。
膝もホールドし、かなり重かったでしょうか 当時でのマストな防寒具でもあるわけです。
ウインザー公は当時 このデザインを気に入っていたのか生地違いで同じようなコートが他にも見受けられます。

VINTAGE:Johnstons OF ELGIN
90% CASHMERE
10% MINK
430g
ここにレアで極上なヴィンテージのカシミアが御座います。
ネームも古いものですが、ミンクブレンドのネームは流石にありませんでした。
クラシックな千鳥格子の生地、ジャケットか軽めなトップコートなどにお勧めです。
この生地は 大変なご贔屓を頂戴しております H様のご予約で御座います。
先に生地のみに惚れ込んだものの、この素敵な生地をどのように料理しましょうか、、、、。
ご相談の上、ウインザー公の若かりし頃に愛用されていたオーバーコートをイメージに料理する事が決まりました。

・・・・・アイボリー地に、ダークネイビー、グレー、そしてダークオリーブを掛け合わせ、かなり凝った色出しによる織地です。
昔は本当に手間暇を惜しみませんね、、、クラシックでありながらも どことなくモダン。
タウンユースで使うにはとても重宝出来るでしょう。
オーバーコート地としては軽量級となりますが、だからこそサラリと軽く羽織れ、脱いで持っていても重たくはありません。
しかし主体はカシミアですし 温かさは折り紙付きであり、ブレンドされたミンクなんて毛皮のイメージが強すぎて、、、超高級獣毛である事に間違いはありません。
シットリとした独特な肌触りは思わず笑みがこぼれます。

・・・・・格子柄で色味も比較的ライトトーンです。
着用ポジションは広く、スーツからジャケットスタイル、そしてニットの上から羽織るだけでも様になり、きっと重宝して頂けるでしょう。

・・・・・当時らしく、生地の裏側には同社の印が押されています。
H様にはどこか見える所に、、、とのご希望を頂戴しましたが、事情により不可能でした。
申し訳御座いません、恐縮ながら この写真を記録として頂けましたら幸いで御座います。

・・・・・裏の印にアイロンが付かぬよう策を講じつつ確りと地のし、そして一晩寝かせ、いよいよ裁断です。
失敗は許されません、特に格子柄ですから正確な裁断は必須で御座います。
目を酷使しながら地の目を整え いざマーキング。
チョークも見え辛い(笑)!


・・・・・H様、気付けば 当店でオーバーコートのご注文は初ですね。
仮縫い時はまだまだ暑い日で御座いましたが、春夏用のODD JKをご着用の上 ご足労頂きました。


・・・・・オーバーコートの精度はインナーであるコート(ジャケット)の型紙精度次第ですからインナーが良ければ それだけマトリョーシカ人形の如くフィット致します。
背中心の柄合わせも完璧に、、、背中心縫い目がどこだか分かりませんね!
格子ですから正確・不正確がモロに分かりやすく出る訳です。
地の目の落ち着きや安定性を見れば高次元でのフィッテイングが分かりやすく目視確認できます。

・・・・・釦はどれにしましょうか、、、お見立てした釦はどれも合いますが
色で随分と印象も変わりますよね。
英国より取り寄せたホーン釦、現在グレーはナットに置き換わっていますがデザインは同型となります。

・・・・・いよいよお仕立て上がりです。
H様にご着用頂く前に少しご覧頂きましょう。

・・・・・仮縫い時はお付けしませんが、袖丈も確定し グルリとターンバックカフをお付けしております。
確りと柄合わせも施し、ボリュームと存在感のある袖口で御座います。

・・・・・裏地の裾は手間をかけフラシ始末、色は表地に使われているオリーブを拾われました。
着丈は膝ホールド、腹部の釦より下には小さな釦タブも付けました。
オーバーコートは防寒具ですから、寒ければフロントからの寒気を少しでも遮断します。

・・・・・内ポケットはお台場仕立て、オーバーコートは脱いで手持ちもある為
ポケットの中が落ちぬよう蓋を付けています。

・・・・・この度もご足労頂きまして、誠に有難う御座います。
とてもお似合いであり、本当に素敵で御座います。
この日はライトツィードのスーツ、選ばれた釦もベストマッチですね。
胸のウエルトポケットは レギュラーより傾斜を強くしています。
腰ポケットの傾斜は H様のお好み的リクエストである いつもの傾斜でお作りしています。
袋地は温もりあるソメロス社のコットンフランネルを贅沢に!
この生地の風合い、そして色柄や着用ポジションを踏まえ
今回は敢えてバス芯を使わず、ベースのキャンバス芯を重ねて胸増芯としております。
より柔軟でリラックスした着心地とフォルムが出る事と思います。

・・・・・身体に合った美しき背中、そのエレガントな後ろ姿で漢を語って下さいませ。

・・・・・如何でしたでしょうか。
生地にも思い入れやストーリーがあり、その調理法いかんで様々な魅力を引き出す事が出来ます。
H様のセンスが輝くとても素敵な一着となりました。
ご着用にはもう一段 気温が下がってほしいですね、馴染んできた頃の着心地は格別なはずです。
この度も素敵なご注文を誠に有難う御座いました。
では秋冬の装いを楽しみつつ、皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。
今週も最後までお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。