≪ Clothes make the man. ≫
服は人を作る。
これは何世紀にも前の言葉(表現)であり、今日でも当てはまります。
多くの人が今でもブランド名やトレンドに影響を受け、追いかけています。
その方々は他の人と同じ服を着ているので簡単に見つける事が出来ますが、そのせいで自ずとスタイルステートメントの価値を下げている。
本当のスタイルとは自分らしくある事。
自分が誰で、自分を信じ、量より質と共に反映するものを着る事から生まれます。
ビスポーククチュールが復活している理由の一つであり、自分の選んだ生地で自分の服を仕立てている理由です。
(・・・英国のとある老舗服地商より。)
とても的確に語られていたので引用させて頂きました。
スーツを、テーラードクロージングを愛される皆様
朝晩は寒さも感じられ、今では存分に楽しまれているのではないでしょうか。
カジュアル化が進行し、スーツの着用頻度が下がった方々も多い事と思いますが
個人的にはとても勿体無いように感じます。
こんなにも紳士を美しくエレガントに表現してくれる洋服はありません。
紳士服の歴史と共に その奥行きを覗き込めば果てしなく
その魅力たるや 未だその片鱗すら垣間見られた事なき方々へ、その片鱗だけでもお伝えする事が出来ましたら幸いです。
装いには敬意や配慮含めTPOがあり、とても大切で重要な事ながら
誂え服は自己満足でもありますのでご自身が気持ち良く、格好良く、気分が上がるテーラードクロージングをお楽しみ頂ければと思います。
今週は私個人の自己満と、ちょっぴりご提案も踏まえてご紹介させて下さい。
ブラックラウンジスーツ、続編となります。
http://dittos.seesaa.net/article/500881048.html
【 BLACKLOUNGE SUITS 】

・・・・・優に100年以上も昔の装いであり、エレガントなフロックコートのスタイルです。
長きに渡り正礼装に君臨して参りました。
大いなる特徴として、ウエストラインに上下を分断するウエストシームがあります。
そしてダブルブレストには腹部の前中心線にもセンターシームがあります。
シーム(縫い目)を利用し、様々な作用を生み出す事が可能となります。

・・・・・フロックコートが退役し、当時の準礼装であったモーニングドレスコートがイブニングドレスコートと共に昼夜に分かれ その役を担います。
現代での正礼装:ディ・フォーマルスタイルです。

そしてウエストコートについては もう一つ。
お気付きの方もおられると思いますが、ご覧頂きました御三方のVゾーンを改めてご覧下さい。
白いインナーの様なものが確認出来ますね。
これは 【 SLIP 】 といいます。

・・・・・もともと古くはモーニングに合わされるウエストコートは上着に同じ共地です。
これはブラックラウンジスーツにも引き継がれていますが、双方の違いは上着の尻尾を切り落としただけであり これでラウンジとなります。
このブラックラウンジスーツがデイ・フォーマルの準礼装としてポジションが確立されました。
前編でもご覧頂きましたように、政治家や弁護士などを筆頭に 比較的目にする日常範囲でのドレッシーなスタイルであったことが伺えます。
細かなヘリンボーン地の上中、下はコードストライプ
基本はホワイトシャツのフレンチカフスですが、クレリックスタイルも素敵です。
凛として本当に大好きなスタイルです!

・・・・・SLIP(スリップ)の起源は19世紀初頭にまで遡ります。
当時は対照的な色同士のウエストコートを同時に重ね着していた事に起因します。
日本においては朝廷の伝統的な装束でも複数の衣を重ねる事が基本であり、十二単などをイメージされると似ている要素があるとも言えます。
この伝統的で洒落た着こなしの名残が 『スリップ』 を生み出し、洋服がブラックですからホワイトの(大抵の場合はコットン・マルセラを使用します。)生地でパーツを作り Vゾーンに添えられるようになります。
( スリップ自体は通常取り外しが出来るように誂えられています。)
≪ MARCELLA / マルセラ … ピケとも呼ばれ、イブニングドレスのウエストコート・ホワイトタイを誂える凸凹な生地です。 ≫
今では全く一般的ではなく、歴史にも通じたTAILORに行かなければならないでしょう。
確かに重ね着しているように見える・見せるアイテムとなり、古を重んじた本格的な誂えであるとも言えます。
必要が無ければ外せますので、場面に合わせて利用できるのです。
・・・・・個人的に大好きなブラックラウンジスタイルを突き詰めたい、そんな想いを具現化致しました。
ブラックラウンジスーツとはポジションへの呼称であり、生地は勿論ブラックを筆頭に、チャコールグレーなども含まれます。
個人的な拘りでは 限りなく濃いエレガントなチャコールグレーで細かなヘリンボーン地である事。
W.チャーチル氏の生地もそうでしたが、バラシアやドスキンなどと同じようにモーニングドレスを仕立てる王道なクラシックスーチングです。
先ずはベースとなる三つ揃いが必要となります。
仮に黒でなければ凄く濃いグレーのダークスーツ範疇ですから これこそ冠婚葬祭からビジネスまでフル活用できる万能と言えますね!
生地は厳選の上 選び抜いたコチラで。

http://dittos.seesaa.net/article/499684657.html
【 FOR THE DISCERNING MAN 】


・・・・・この生地はとにかく濃いトーンであり、正にチャコールグレー。
英国(H.Lesser)ではライトウエイトのスーチングとなりますが、このウエイトこそ日本では3シーズン用となりますので、真夏以外はいつでも対応可能です。
ピークではなく、ノッチでの三つ釦は勿論本返り。
当然ノーベント、そぎ落とされたシンプルさである事。
至って普通ながら 秘められた拘りは相当なものなのです(笑)。

・・・・・ブルーの効いたEND ON ENDのシャツはクレリックスタイル。
白いチーフにシャツの襟、そしてスリップがとても映えます。
あっ、もはや当店の隠れ定番であるタイスライダーですが
職人さんへ発注していた在庫分が届いております!
チェーンと共に是非お声掛け頂ければと思います。

http://dittos.seesaa.net/article/460665292.html
【 お知らせで御座います。】

・・・・・フロント釦を外せばアルバートチェーン。
深めに付けられているフロント釦、これは打合い量を示し 拘りポイントの一つでもあります。
ダブルブレストのウエストコートによる狭きVゾーン
昨今ではローライズのトラウザースに合わせた着丈の長いウエストコートをよく目にしますが、そのバランスでは上手く成り立ちません。

・・・・・アルバートチェーンには、ダブルチェーンとシングルチェーンがあります。
これはダブルチェーンであり、シングルよりも古めとなるそうですが 英国製ではそれぞれにホールマークの刻印で製造年代が分かります。
一般的にはTバーを釦ホールに引っ掛け、当然ながらポケットウオッチの落下防止を担います。
ウエストコートがダブルブレストの場合、Tバーはホールに掛けますので冒頭写真 チャールズ国王の様にチェーンの中心は右寄りになります。
このウエストコートではもう一つ 古のディテールがあり、それはセンターシームなのです。
後で触れて参ります。

・・・・・スリップが見えますね、程好く顔を見せ
左上前でウエストコートの打合いとリンクさせます。
(先にも述べたように取り外しが出来ます。)
重ね着の様に見えますね! 正にその要素が目的なのですが。
因みに、Tシャツで 襟ぐりや袖口に重ね着風に見せた配色部分パーツが加えてあるのを見た事がありますが、これも目的はスリップに同じですね!
しかし生地色はブラックに見えますよね、、、それが狙いのチャコールグレーでもあり
H.Lesserも意図している事でしょう。


・・・・・センターシームに着目してみましょう。
この意図的に組み込まれたシームにホールを敢えて設けられ、チェーンのTバーはシングルブレストの様にセンターへ納まります。
英国古着に造士が深いお方は見た事があるかも知れません。

・・・・・エドワーディアンのフロックコートです。
冒頭でも述べましたが、ウエストラインに上下を分断する縫い目
そして腹部の前中心に左右分断の縫い目がある事が見て取れます。
冒頭写真のフロックコート、そしてこのイラストを見てもわかる様に、ダブルブレストのウエストコートは釦数が多く、8釦‐4掛けなど より縦に長く腹部面積を覆います。
シームがある事により、そのシームを利用してクセ(ダーツ)的な概念を盛り込む事が出来ます。
故に腹部の覆う面積が広ければ広い程に このシームの効果は大きく、立体的な身体に寄り添わせることが可能となります。
もう少し時代は流れ、、、
ダブルのWCも6釦‐3掛けあたりに落ち着き、釦配列は腹部にある程度 集中されます。
そうなると前中線長は短くなり、シームの効果は昔より薄まると言えます。
だからこそ、上記状況と、ポケットウオッチが使われなくなってきた事などを背景に
センターシームは排除されるようになったのだと推測できます。
勿論 作り手が楽だからという要素も必ずあるでしょう。

・・・・・では名探偵にもご協力頂きまして、、、全くもって同じですね。
このディテールは、ブラックだから、フォーマルだからではありません。
ダブルブレストのウエストコートだからです。
センターシーム長が短くなったとはいえ、シームを切るならクセ取り的要素も入れます。
より身体へ吸い付くように、、、名探偵の様に腹部が立派であればある程 その効果を盛り込めると言えます。
では何故 ダブルブレストの上着は切らないのか、、、確かに切れば効果を盛り込めますね。
それは多分ウエストコートには『チェーンホールを開ける』という要素がプラスされているからではないでしょうか。

・・・・・ではトルソーの為の服ではないですから
着用写真もご覧頂きましょう。
チェーンを使わなければただのシームがあるだけであり、名残であるラペルのフラワーホールに同じです。
しかしそのシーム効果だけはフィッテイングに作用として残ります。
スリップは外してあり、サッパリと見慣れたクラシックな印象です。

・・・・・上着は超ベーシック。
トラウザースの裾は折り上げ、スリップも外し、極クラシックなダークスーツです。
これでドレスTR(コードストライプ)を履けば BLACKLOUNGE SUITS となります。
まぁこれもラウンジスーツであり、ブラック範疇ですが、、、、。
真面目そうに見えますね(笑)。

・・・・・スリップを付けました!
Vゾーンにアクセントが加わり、より華やかな印象とも言えます。
これでドレスTRを履いて、足元にはスパッツを装着すれば私の中でのブラックラウンジスーツの完成です。
袖口から白、そしてVゾーンはシャツ衿の白、そしてスリップの白。
これでスパッツを付ければ足元の裾口からは そのスパッツが程好く顔を出し、素晴らしくコントラストの効いた重ね着スタイルの完成となり、本当に美しく成り立っています。
昔の方々は本当にお洒落であり、紳士の着るスーツ(スタイル)がどれだけ完成・熟成され続けてきたか分かるというものです。
ここまでお読み下されば、上着の袖口からシャツのカフスが出ていな事がなんてナンセンスなのかも繋がりますね。
理由はそれだけではありませんが、正しきサイジングを知る事が美しくスーツを着こなす近道となるでしょう。

・・・・・スリップ、小さく些細なパーツながら、効果は絶大なものです。
普段のビジネスシーンには重いようでしたら結婚式や日中での重要な会合、パーティーなどで如何でしょうか。
日本の、日本人特有な冠婚葬祭やリクルート用などで重宝されている 『ブラックスーツ』 という作られたポジションが実在しています。
便利だとしても歪な概念を少しでも打破し、本質に近付けたいと微力ながら思っております。
・・・・・如何でしたでしょうか。
次は本当の意味での着こなし(ドレストラウザース)を履いて いつか続編をご紹介したいと思っております。
では いよいよ師走を迎えます。
どうか今年も最後まで 宜しくお願い申し上げます。
・・・・・British Style を愛する顧客様方へ。
クラシックなスーツやコート(ジャケット)を仕立てても、合わせたくなるような英国製のシャツ地はお選び頂ける見本が今は無く、英国テイストのシャツ地もめっぽう少ない!
RINGHART社も注文できなくなり、私自身もそういったご要望にお勧めが無く大変困っていました。
なので、、、 ACRON SHIRTING を仕入れました!
初回なのでそう多くはありませんが、、、
正確には発注済み、入荷待ちです。
私個人も欲しいですし、『らしさ』のある英国シャツ地を厳選して ご提供させて頂きます。
届き次第 改めてご紹介させて頂きますので、是非ご期待くださいませ。
来月は 【 ACRONプチ祭り 】 を開催予定です(笑)。
・・・・・大変恐縮ながら、来週のBLOG更新はお休みとさせて頂きます。
次回は、12月12日(火)を予定しております。
寒くなり、誰しもが忙しくなる師走
どうかご体調には十分にお気を付け下さいませ。
今週も最後までお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。