
IRISH LINEN : 3P-SUITS
起伏に富んだ立体感、カットと仕立て術の賜物ながら
写真で見ると質感と色味も相まって 何だか粘土細工か、
木彫りにも見えますね(笑)。

亜麻 (FLAX:フラックス)
酷暑の候、皆様もこの厳しい暑さにお疲れの事と思われます。
ここまで暑ければ もう何を着ても暑い、むしろ長袖などで強き日差しを防御した方が良いくらいです。
せめて涼を感じられる 『リネン』 へと手が伸びるのはむしろ本能でしょう!
麻には色々な種類がありますが、麻と言えばリネンと思う方も多い事でしょう。
リネンは麻に属する一種に過ぎず、他にはヘンプ、ラミー、ジュートなどが挙げられます。
リネンの原材料となるのがフラックスという植物であり、そこから紡績されて糸や織物となってから リネン と呼ばれるようになります。

(1942年:Belfast Tlegraphより)
・・・・・主に欧州で生産され、アイリッシュリネンやフレンチリネンは質も高く有名処ですね。

(1945年:Belfast Tlegraphより)
・・・・・実を付けたフラックスは根っこから引き抜かれ、そのまま放置します。
水溜りに浸して茎の樹皮を腐らせ、太陽光、そして雨や風を受け、熟成発酵した辺りでロールにして収穫されます。
そして種や樹皮をはじめ不要な部分を取り除き、リネンになる為の内部繊維を取り出して参ります。
このフラックス、日本語では亜麻、実は食用にもなり アマ二油を採取する事も出来ます、
フラックスの生産は非常に時間のかかる膨大な農産業でありながら、一度収穫すると6〜7年は同じ畑でフラックス栽培は出来ないそうです。
それはフラックスが土の栄養分を全て吸収して立派に育つからこそなのですが、次は小麦やトウモロコシ、ジャガイモなどを育てて土に改めて栄養を蓄える必要があるとの事です(輪作)。
膨大な時間と手間をかけ、初めてリネンとなった糸からやっと私たちの服、そしてクロスや寝具、ファニチャーなどへ加工されるのですね。


・・・・・あっ、左の紳士も冒頭写真の様に粘土っぽい(笑)!
もうこの季節はリネン、昔ながらに愛される理由があるわけです。
日本でも明治時代から大正、昭和の初期までは夏のスーツといえばリネンが多く愛用されていました。



Spence Bryson
IRISH LINEN
TROPICAL
370g
= Buff = 淡い黄褐色を指します。
・・・・・この色には深い想い入れと共に意図もあって選びました。
エッジなどのステッチは手縫いによるハンドステッチではなく、敢えてミシンステッチにしています。
ナチュラルで素朴な色味、質感、植物繊維独特の落ち着く感じが本当に心地よい。
因みに、H.S.ORDERもBESPOKEも 地衿の芯は贅沢にずっとIRISH LINENの芯地を使用しています。
このトロピカルというド定番シリーズは地厚で確りと打ち込まれ、正に一生ものです。
確かに重くて大して涼しくない、されど この昔ながらの品質だからこそ味わえる迫力とリネンらしいエイジングは不朽の定番に相応しい。
昨今では有名なIRISH LINENでもアイルランド産のリネン(FLAX)ではありません。
もうほぼ生産されておらず、原材料としては品質高きフレンチリネンより織られています。
現在アイルランドには IRISH LINEN GUILD という組合があり、原材料を輸入していてもアイルランドで昔ながらに拘った製法で織り上げられているリネン地であればIRISH LINENと定義されています。

・・・・・リネンは人類が生み出した最古の繊維とも言われ、発祥は紀元前8000年頃とされています。
では改めてリネンのもつ驚きの特徴を挙げてみましょう。
■ リネンは他の自然由来な天然素材に比べても圧倒的に丈夫で長持ちします。
水に濡れると強度が更に増すので洗濯にも強いですね。
■ リネンにはペクチンという多糖類が含まれており、汚れが染みにくく落ちやすい上、抗菌性も持っています。
■ リネンはコットンの4倍ともいわれる程に高い吸水率があり、通気性や発散性にも優れているので乾きも早い。
■ 繊維の中は空洞になっており、その空洞部分には空気が含まれています。
余分な熱を逃がす放熱効果が高い上に、冬は中の空気が熱を保持してくれるので温かく感じられます。
高い通気性と保温性にも優れているので 実は夏以外にも一年を通して使用できる素材でもあるのです。
この様な高い性能もあり、古代エジプトではミイラを巻く為の布としても使われていた歴史がありますが、例えば寝具、そしてカーテン含めファニチャーにも適した素材である事も垣間見る事が出来ますね。
リネンを夏に特化した素材に限定してしまうのは本来勿体無いという事が明白ですね。
そんなスペック高きリネンで仕立てられたテーラードをもっと、もっと見直し、身近に愛用されてみては如何でしょうか。
先人たちが愛し続けてきた理由が着れば分かります。


・・・・・折角 誂えるのであれば是非とも三つ揃いがお勧めではあります。
クリームやバフを筆頭に、スカイブルー、時にはピンクなどのウエストコートはモーニングやブラックラウンジなどのデイ・フォーマル、そしてダークスーツなどにも合わせる事が出来ます。
夏場での着用や、その日のシーンに合わせ、三つ揃いであればウエストコートを着るか否か選択する事が出来ます。
着用を前提とした場合、トロピカルのウエイトを考慮しウエストコートはバックレススタイルを採用しました。
上記フォーマルに合わす事も想定の上、取り外し式のスリップ!
古なセンターシームを設け、アルバートチェーンホールも空けてあります。
春夏でのイメージが強い事から、一般的には清涼感もある涼し気なシェル釦が多く使われている事でしょう。
しかし、私は美しき希少な淡黄色のホーン釦にしています。
それは私にとって リネンに同じく丈夫さを優先、光沢強きシェルより合うと思う事、極め付けはリネンを夏色(夏服)にしたくないからとなります!

・・・・・仕立てあがったばかりのトロピカルはパリパリです(笑)。
ここから私色に染め上げていくのです!
高すぎず、引きすぎないゴージラインは首を縁取る襟ぐり線である事、直線的でシャープなフロントカットはイタリアンなカットに見慣れた方には新鮮でしょう。
キュと絞り込まれたウエストシェイプはアワーグラスを彷彿させ、釦位置、ポケット位置などに至るまで英国的クラシックの拘りぬかれたカットです。
興味のない方から見れば単に本返りな三つ釦の上着ですが、、、『神は細部に宿る』は手作りの品だからこそ。
リネンはハリ・コシが強く、かつ皴になるのが特徴ですね。
先にも触れましたが、リネンは繊維の中が空洞であり、まるでストローに同じです。
ストローはパキっと折れ曲がりますが、それがリネンの皴に同じなのです。
しかし、ハリ・コシ強きリネン地は、エイジングによりかなり柔らかくなってグッと雰囲気を変えて参ります。
その頃には相棒としての絆は相当深くなっている事でしょう。





・・・・・リネンの本当の魅力は新品では上面を見ているだけに過ぎず、リアリティーに掛けますね。
今度は着込んでシワシワで小慣れたリネンたる本質的な魅力のでている顔もお見せ出来ればと思っております。
いや、見なくてもご自身で育てた方が何倍も良いですね!

・・・・・愛すべきリネン、世界最高峰とまで言われたアイルランド産のフラックスはもうほぼ栽培されておりません。
しかし、コットンも同じく エジプト綿、スーピマ綿、新疆綿や海島綿など、優れた高品質な原材料があれば、それを高次元で紡績し、織り上げる蓄積されてきた技術があればIRISH LINEN自体は手に入ります。
されど いつまで手に入るのでしょうか、、、。
近年 リネン地の価格は高騰しており、その手間や収穫を増やしにくい生産背景には農作物としての生産量に限界がある事も起因しているのですが、実は欧州の気候変動も大きく影響しております。
その気候変動の影響により、2022年・2023年はフラックスの大不作が起こり、ストックも底を尽きてしまいます。
追い打ちをかけるように、フラックス栽培をされる農家さんは減る一方、世界的に見れば生産量は以前の約半数まで落ち込んでいるそうです。
多くの素晴らしきものが手に入らなくなってきています。
ゼロにはならなくても、気付けばリネンは超高級素材になっているかも知れませんね、、、。
先ずはもっと、もっと皆様にリネンの魅力を理解し、愛してもらいたいのです。
そして、これからの日本では特に優れた素材であるという事。
安価な化繊に頼らず、昔ながらに先人方にも愛され続けてきたリネンに今一度 目を向けるべきできなのではないかと考えるこの頃で御座います。
皆様も是非 素敵なリネンのテーラードを嗜まれてみては如何でしょうか。
私にとってのIRISH LINEN SUITSは(リネン混を抜かし)約30年振りになります。
改めてよい歳になり、やはり付き合いたい素材でもあったのですね、、、構想自体は随分と前から。
ジジイになる頃にはどんなエイジングを、顔を見せてくれているでしょうか。
今から楽しみでなりません!
・・・・・7月もそろそろ終わります。
重衣料の早期受注キャンペーンはお陰様で無事に終了となり、沢山の方々に光栄なるご注文を頂戴致しまして 誠に有難う御座いました。
また、当店シャツの一時終了に伴い 本当に沢山の方々より膨大なご注文を頂いております。
もう私は既にパンクしており、嬉しい悲鳴ながらも全く追いつきません(笑)。
こんな有り得ないほどの受注量、、、シャツ専門店でもあるまいし、それだけ多くの方々にご支持を頂いているという事に対し 心よりの感謝と敬意を示すと共に、改めてお詫び申し上げます。
そして常に極上レベルで仕立てて下さる工場さんの方々にも改めて心からの感謝をしつつ、皆様の想いが詰まったシャツ達をどうか宜しくお願い申し上げます。
8月9日の受注停止まで もう僅かで御座います。
因みにですが、最後に英国シャツ地フェスの在庫状況をご連絡させて頂きます。

ACORN:ストライプ・・・LAST 1着分

RINGHART:タッターソールチェック(NAVY/PLUM)・・・LAST 1着分
膨大に仕入れたので心配しておりましたが、本当に皆様のお陰によりあ僅か2着分を残すのみとなります。
これら以外にも定番シャツ含め 是非今一度 ご検討頂けましたら幸いです。
では、この暑すぎる夏 どうかご自愛くださいませ。
今週もお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。

