2024年11月19日

【 Baby Cashmere:K様のバックベルトコート 】




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Jan. 1938 




ロンドンの冬、帽子にオーバーコートが欠かせぬ中、行列を作るクラシックな出で立ちの紳士たち。
アーセナルFC(フットボール)のもと本拠地であるハイバリー、アーセナルスタジアムでの観戦に並ぶサポーターの方々なのだそうです。
 現代の観戦スタイルとは大違いですね、現代までの月日は随分ガラリとカジュアル化が進行した事が見受けられます。

スポーツ観戦と言えば有名な『ポロコート』が頭に浮かびますが、こちらは19世紀後半 ポロ競技における英国チームの選手たちが着用していたウエイトコート(待ち時間に着用)が原型とされています。
 これをアイビーの選手たちが自分達もと取り上げ、広がりました。

また、観戦という部分では「スペクテーターシューズ」は正にその名の通りですね。
1900年代初頭より紳士たちが競馬観戦などに好んで穿かれていた所謂コンビの靴です。
つま先や踵、羽の部分などには確りとした革で仕上げ、歩行時に屈折する部分には柔らかな鹿革を使用していました。
 機能性重視ゆえのコンビな靴はスポーティーでもありつつも 決してエレガントさを損なわせぬ魅力があります。
















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・・・・・師走まであと僅かに迫り、そろそろオーバーコートも必要になる寒さを前に 着用出来る事を楽しみにされている方々もおりましょう。

オーバーコートには独特な魅力がありますよね。
防寒着である前提であり、ストールやグローブ、そしてハットを被ってスタイルとしては理想的完結です。


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 さて、今週は至高のカシミアでオーバーコートをご注文下さった K様のコートを紹介させて頂きます。

















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・・・・・ダブルブレストの6釦‐3掛け、ダブルはもともと打合いが深く、Vゾーンもコンパクトでより温かいとも言えますね。
生地はこれ以上なき至高のベビーカシミア、そこにセーブルをブレンドしてリップルフィニッシュ。
カラーはドレッシーでエレガントな ミッドナイトブルー であり、誰しもがそのオーラ―と存在感に頷かざるを得ないでしょう。


http://dittos.seesaa.net/article/451681604.html
【 至高のベビーカシミア 】



 こんなにもドレッシーでエレガントな生地だからこそ、王道的なチェスターフィールドコートを誂えたくなります。
 しかしK様は敢えてドレス度合いを下げ、普段使いにも着用しやすくしたいとの事。

着丈はドレス度合いにも大きく関係しますので、膝上丈にするだけで随分と軽快感が出ますが、丈は膝丈までは欲しいとの事、、、そして打合いはダブルブレストをご所望です。
希少で貴重、この生地が持つ品位を損なわせぬよう柔らかく砕いて料理しましょう。



チェスターフィールドコートの様に誰しもが分かるエレガントなシェイプを構築せぬよう胸ダーツは省き、ややナチュラルなシルエットにしつつもバックベルトを付けてデザイン的なアクセントと共にウエストラインも緩やかな絞りを感じさせてくれるようにしましょう。

カフはターンバック、背中はアクションプリーツを畳む事で機能性と共にスポーティーな要素が加味されますので こんなポジションでは如何でしょうか!
















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・・・・・オーバーコートに付けられるバックベルトは、左右脇よりのベルトを釦によってセンターで結合するスタイルが多いですね。
これがスポーツジャケット(ピンチバック)になると そのベルトは大抵身頃に縫い付けられ固定されています。

今回は敢えて釦結合無しのワンピース・バックベルト、そしてユトリを与えたナチュラルなシルエットをそのベルトで絞り込みます。
 ベルト自体もフラシにして(固定せず)後身頃の優雅なドレープを、この美しき生地が持つ妖艶なドレープを活かす事にしましょう。


仮縫いでは閉じてありますが、背中心にはインバーテッドプリーツが裾まで畳まれております。

このオーバーコートを見た時、前からの印象と、後ろから見た印象はガラッと変わるそのギャプこそが今回のポイントです!


ではじっくりとご覧下さいませ、とても魅力的なオーバーコートに仕立てあがりました。














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・・・・・寒く感じられる日も出始め、いよいよお仕立て上がりです。
ライニングはネイビーとグリーンによる交織のヴィスコースをお選びになりました。
丈は膝までありますので裾は表裏結合させず『フラシ』 にさせるのが理に適った丁寧な始末ながら、その分手間は増えます。

インバーテッドプリーツは多くの布を使うので、その分重くなります。
プリーツ内の奥で釦開閉する仕様もありますが、デメリットとして更なる重み、厚みも生じますので開閉は切らず、それなりに贅沢なプリーツ量を確保して素直でシンプルな仕上げにしています。
 これだけ開閉量があれば足さばきにも十分ですね。


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・・・・・オーバーコートは脱いで手持ちも想定されるため、内ポケットの中身がこぼれぬようフラップをお付けします。











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・・・・・リップルたる正にさざ波感、妖艶な光沢感は美しき光の陰影を投影します。
この生地のウエイトは、コーティングとしては中肉級ながら 最高のカシミアですから軽くて暖かい訳であり、セーブル君の性能も10%分は含まれているので+αですよ!













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・・・・・お仕立てを大変楽しみにお待ち下さっておりました。
この日、当店での 1st-BESPOKE SUIT を着てこられての御来店です。
オーバーコートですから インナーたる上着の型紙より導き出された設計(型紙)であるからこそ、マトリョーシカの様に完璧な相性が生まれるのです。
 であれば、仮縫い含めフィッティング確認は原型となるインナースーツにて。

御納品後はお手持ちの様々なスーツにも合わせてお楽しみ下さい。

1stスーツも随分と馴染んできており、K様色に染まりつつありますね。
とてもお似合いであり、キマっております!

http://dittos.seesaa.net/article/502852133.html
【 VINTAGE MOXON:K様のご注文 】











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・・・・・深く赤味の強いブラウン、バーガンディーをご所望にてお決め成さったそうです。
英国王はオックスブラッドで誂えられていましたね。
BESPOKEで誂えられたこの靴は、かの名店におられたM氏に御注文されたとの事です。
英国靴らしき顔立ち、クラシックですね。
















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・・・・・ではご試着頂きましょう。
内部芯も軟らかに、インナーのスーツが芯となり支えとなります。

動いてフィット感や機能性の確認です!


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・・・・・とても綺麗にフィットしていますね、当たり前ではありますが!
お仕立て上がりでプリーツの一時中綴じは解除済みですが、動かなければ開きません。
ここが大事です、例えば着用しただけでプリーツが開いてしまうという事は、その部位に対する必要距離が足りぬ証拠です。

動いてこそ襞が開き、機能として性能が発動されます。

(今回の場合は敢えて与えた過剰ユトリもあるので、それ自体も機能面への効果に繋がります。)


そのエレガントな後ろ姿は残念ながらご自身では見えませんが、、、。












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・・・・・この御納品日に際し このコートを意識して誂えられたハットとグローブ、これらもダークなネイビーで揃えられたとの事であり、とても光栄であり嬉しき気合で御座います。

折角持参したとの事でフルコーディネイトでご堪能も!

やはり帽子があると締りが違いますね。


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・・・・・K様、素敵です、、、、完璧な装い、これをイメージに周辺アイテムも揃えられ 此度コンプリートを迎えました。
グローブやハットは当然 このオーバーコート以外にも合わせ、活躍してくれる事も前提ながら、一つの重衣料に対し ここまでトータルで揃えられる拘りっぷりは流石であり、お気持ちも凄く分かります!


今月にはデビューを目論んだご着用予定があるそうです。
月末に向かい寒さも増すと思いますので是非ともデビューを飾ってくださいませ。
 素敵なご注文を誠に有難う御座いました。


















・・・・・如何でしたでしょうか。
やはりオーバーコートは男心をくすぐりますよね。

最近ではかなり久し振りにカシミアの出物仕入れが御座いました。
BESPOKEでは来冬への仕込みとなりますが、H.S ORDERでは年明けの一番寒い時期へ間に合いますので是非如何でしょうか。

 皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

今週も最後までお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。







posted by 水落 at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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