
今年の桜も満開を迎えましたが 天候に恵まれず花冷え続きでしたね。
4日の金曜日にはやっと晴れ、水分をタップリと吸ったであろう桜も活き活きと喜んでいるかのようです。

さて、4月に入り 新年度が始まりました。
昨日の月曜日には入学式を行う学校も多かったようですが、校長先生はいまでもモーニングドレス(コート)を着用されておりますでしょうか。
街には初々しいフレッシャーズな方々が着慣れぬダークスーツに身を包み、とても新鮮な気持ちになり応援したくなります。
そんな新年度の始まりはやはり身を引き締め フォーマルなお話からスタートしたいと思います。

・・・・・フォーマル含めクラシックな装いだとしても時代と共に移り変わるものであり、頂に君臨していたフロックコート(左側)の退任後は DAY と EVENING に分かれた装いになりました。
DAY FORMALではモーニングドレス(コート)が、EVENING FORMALではイブニングドレス(テールコート)が現代の正礼装としてその役割を担います。
≪ 因みに、モーニングコートは別名 カッタウェイ・フロックコート(CUT AWAY FROCK COAT)とも言われ、コートの前裾を乗馬の為に丸く切り落とした(CUTAWAY)のが発端となります。フロックコートたる大きな特徴として上下を分断するウエストシームが同じくありますね。≫
それら正礼装に対し、DAYは『BLACK LOUNGE SUITS』、EVENINGは『DINNER SUITS』が準礼装となります。
少し前にDINNER JACKETの歴史にも触れましたが、尻尾を切ってより寛ぎやすきラウンジ型の上着へと テールコートの上着のみ着替えた事が発端でした。
これはDAY FORMALでも同じであり、BLACK LOUNGE はモーニングコートを脱ぎ、ラウンジジャケットに着替えた感じですから 合わせるアイテム含めルール的な事はほぼ同じとなります。
http://dittos.seesaa.net/article/500881048.html
【 BLACK LOUNGE SUITS 】

・・・・・現代におけるスーツのバリエーションは多岐に渡り、ビジネスからタウン、リゾート、カントリーなど素材やスタイル含め様々に発展・展開が広がりました。
これと同じように 昔はモーニングコート自体が普段着であった時代には 現代のスーツ同様 ビジネスモーニングやハンティングモーニングなど多くの展開がありました。
皆様がイメージされるモーニングドレスは基本ブラックであり、シングル型でピークドラペルの一つ釦が頭に浮かぶ事でしょうか。
ですが当時は生地もそのシチュエーションに見合ったものがセレクトされますし、ノチッチドラペルやフロント釦も2つや3つなどもあり、フラップを付けた腰ポケットを携え、そしてチケットポケットを加えられたスタイルもありました。
畏まったフォーマル的な要素であれば基本はブラック、そしてそれに準じたダークカラーが用いられます。
上記イラストの紳士は明らかにチャコールグレーのモーニングドレス(カッタウェイフロックコート)であり、タイやトップハットのブラックと比べれば歴然ですね。
このモーニングコートも明らかに一つ釦ではありません。

・・・・・ウインザー朝の初代君主でもある ジョージ5世は、エドワード8世(後のウインザー公)と後のジョージ6世の父君で御座います。
フレンチカフスのウイングカラーにクラヴァットはピンで押さえ、上着に共地であるウエストコートは襟付きで意図的に確りとのぞかせたスリップも見受けられます。
シングル型の上着はノッチドラペルでVゾーンは狭く、確定は出来ませんが三つ釦の様です。
トラウザースはストライプであり、これが主流でありつつ 無地や小格子柄なども合わされていました。
これがモーニングコートを脱ぎ捨て、ある意味では日常的で少しだけ砕けた装いとなるポジションになったと言えます。
ですがその当時の普段着たる BLACK LOUNGE が格上げされ、現代では準礼装までポジションが上がったという事になります。
基本的なコーデはモーニングドレスに同じですが、トップハットは合わせません。

・・・・・分かりやすく解釈され、このベーシックなシングル型ノッチドラペルの三つ釦、ウエストコートは勿論上着に共地、ストライプド トラウザースを合わせます。
インナーはターンバックカラーのシャツに結び下げタイですね。
上のジョージ5世に同じく、ノッチドラペルで2釦や3釦などのデザインは
おそらくイラストでご覧頂いたチャコールグレーのカッタウェイフロックの様な日常的に着用されていたデザインの裾を切り落としてラウンジ型にしたという流れなのではないかと思われます。
この紳士の裾口を見て下さい、ターンナップボトム(TURN UP)で仕上げられていますが
ブラックラウンジがより日常的な装いであるという見方も出来ますね。
因みに、裾の折り返しをTURN UP、上着袖口の折り返しはTURN BACK とされますが、同じく折り返えされた仕様を指します。

・・・・・第61・63代首相
W.チャーチル氏はアイコン的にも語れるドット柄のボウタイは有名ですが、ブラックラウンジもこよなく愛用されていた御方でした。

・・・・・第66代首相を務められたA.ダグラス-ヒューム氏。
ブラックラウンジは政治家から弁護士など信用を重んじるお堅い職業の方々には特に親しみ深いスタイルでありました。

・・・・・ブラックラウンジはモーニングドレス(コート)の尻尾を切落ちした型となる訳ですが、そのモーニングのバリエーションにもエッジをパイピング仕様で誂えられたデザインもあり、エドワード8世や現英国王もこのモーニングを愛用されています。
ブラックラウンジはモーニングドレスの子孫ですから J.パトゥ氏が着用する継承されたパイピングエッジのブラックラウンジも存在しておりました。
正に親子の関係ですね。

・・・・・やがて時代は進み、モーニングドレスのフロントは1釦に落ち着き始め、着こなす合わせにも変化が訪れてまいります。
シャツの襟は一枚衿から折り返す2枚衿(ターンダウンカラー)も合わされるようになり、ウエストコートは共地だけではなく色物も(シーンにより)合わせられるようになって参ります。
DOVE GREY(鳩灰色)やBUFF(黄褐色)はメジャーながら、ブルーやピンクなどもあしらわれる様になります。
因みに、左側紳士のトラウザースは縞柄ではなく小格子柄ですね!
右の紳士は正にBUFFのウエストコート、ラペルはノッチのモーニングドレスです。

・・・・・他にもアイボリーやクリームなどのウエストコートも欠かせませんが、クレリックシャツも合わされるようになって参ります。
では この辺りで大体の流れをつかんで頂きましたので、その流れを汲みつつ 実際に着用してみましょう!


・・・・・私の大好きなチャコールグレーで仕立てられた何の変哲もないベーシックでクラシックな三つ揃いダークスーツです。
シングル型の三つ釦、ノッチドラペルの上着には、ダブル型の衿付きウエストコート、フォーマルも意識し取り外し式のスリップが付いています。
限りなく黒に近いグレー、私にとっては『 BLACKではない 』という事がミソです!
このスーツが応用次第でポジションをよりフォーマルへ上げるという事になります。
http://dittos.seesaa.net/article/501579971.html
【 BLACK LOUNGE SUITS A 】

・・・・・ストライプド ドレストラウザース
シンプルな縞柄と比べデザインされた紐(コード)の様な縞柄が特徴であり、コードストライプと呼ばれます。
モーニングドレスやブラックラウンジに合わせるトラウザースは コレが一番生き延びたとも言えますが、無地からシンプルな縞柄、そして小格子まで合わされます。
このコードストストライプだけでも相当なバリエーションがあるのですが、今では冠婚葬祭事でみると それら縞柄のなかでも色のトーン含め 向き・不向きがあるとされます。

・・・・・敢えて古な雰囲気を匂わせドレッシーに!

・・・・・ウイングカラーにはシャンパン色のクラヴァットを鹿さんのピンで!
このクラヴァットは大変お世話になっておりますN様よりロンドンのお土産として頂戴致しまて私の大切ななお宝の一つで御座います‼

・・・・・Vゾーンのスリップが分かるでしょうか。
足元はスパッツもね!


・・・・・名探偵もスパッツを!
こちらも色々と歴史がありますが、今回は割愛します。
フォーマル的に捉えられていますが、名探偵の様に普段よりスーツへも合わせて使用されていました。

・・・・・G.クーパー氏のブラックラウンジ、なにを着ても素敵でお似合いであり
モーニングドレスからの系譜を感じさせてくれますね。
ノッチドラペルで共地のウエストコート、このスタイルは初期であり 次第にピークドラペルの人気が広まりつつ、インナーもモーニングドレスの着こなしに準じ変わってきたわけです。

・・・・・モーニングドレスに合わせるインナーがより色味豊かに変わってきましたので、ストイックなG.クーパー氏の初期スタイルから、ギャング映画には欠かせぬ E.G.ロビンソン氏によるカラーウエストコートでの着こなし。(上着はノッチドラペルですね。)
これはこれでコントラストが付きますので華やかに見えて別の魅力が御座います。

・・・・・インナーはBUFFのウエストコート、ターンダウンカラーのクレリックシャツにしてダービータイ(結び下げタイ)はドット柄、スパッツは外してコッテリな匂いもやや薄め(笑)。


http://dittos.seesaa.net/article/504172813.html
【 LINEN SUITS 】
・・・・・このBUFF:リネンスーツは、こんな使い方も考慮に入れ この色を選んでいます。
勿論 単品で誂えられても良いでしょう。
如何でしょうか、なかなか普段では使い辛いスタイルかも知れませんが
親しみやすいダークスーツやリネンのスーツ、誂え足すアイテムにより それら愛着のあるスーツ達が幅を広げてスタイルを(装いを)楽しませてくれるのです。
これらも誂えならではでもあり、全てにおいてMY SIZE、そしてそれぞれアイテムの設計思想が伴いつつ アイテム同士の筋が通っているからこそ調和がとれ まとまるのです。
もう一つ、一般的には生涯で数回の着用の為になかなかモーニングドレスコートを誂えるのには躊躇してしまう方々もおられるでしょう。
それこそカジュアル化が進んでいるのであればブラックラウンジなら飛躍的に着用頻度は増えますので誂え甲斐もあるのではないでしょうか。
今回と同じ様に ベースはチャコールグレーのベーシックな三つ揃いであり、勿論ダブルブレストでも良いのです。
スペアトラウザースを誂え足す気分でストライプド ドレストラーザースを加え、計4P-SUITSとなりますね。
では最後にエレガントなお二人の素敵なブラックラウンジスーツをご覧いただきましょう。

・・・・・オーストラリア生まれの映画俳優 R.コルテス氏。
クラシックな水玉のタイ、改めて汎用性の高さを感じられるタイですよね。
上着はピークドラペルの1釦へと見慣れた今風なドレス感が出てきているのが分かります。

・・・・・第64代首相 A.イーデン氏。
お二人共に シングルブレストのピークドラペル、フロント釦は一つでVゾーンも深めですね。
( A.イーデン氏はもう少しお若い頃にはシングル型ノッチドラペル 3釦のブラックラウンジを着用している写真があります。 故にこのピークドラペルはその後の誂えではないかと推測されます。)
ピークドラペル型のデザインは30〜40年代辺りに人気が上がりました。
服飾の教科書が仮にあれば、現代の認識における準礼装の典型的なデザインでしょう。
ではノッチドラペルは準礼装ではないのか、、、そんなことは全く無いですね!
古い時代に遡ればノッチドラペルの方が多く、釦数も多く、歴史が写真で立証していますね。
ブラックラウンジスーツというのはポジションを指しており、生地色も黒に限定ではありませんし、例外は有れど 相応するアイテムとのコーデにより確立されるスタイルであるという事です。
この呼称は英国的であり、ディレクターズスーツなる和製英語から、タキシードに同じく米英語ではストローラーと呼ばれ、それぞれがDAY FORMALにおける準制服を指します。
クラシックとはある意味生き物であり、時代の経過によって少しずつ変化するものです。
また 例えばチェスターフィールドコートは、、、ポロコートは、、、
理解しやすく定義付けが好きな日本人ですが、こうやってみると一概に定義するのはなかなか厳しいのですね。
されど日本のチェスターコート⁉たる使い方は雑過ぎるとは思いますが、、、(汗)。
むしろ学べば学ぶほど程に定義するのは難しいのですから情報溢れるこの時代なので 私含め注意が必要です。
ではこの辺でお開きとさせて頂きます。
そろそろ気温も上がって参りますので本格的に春の装いへとスイッチですね。
思う存分 テーラードを、装いを楽しみましょう。
今週も最後までお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。