2024年07月30日

【 LINEN SUITS 】







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IRISH LINEN : 3P-SUITS




起伏に富んだ立体感、カットと仕立て術の賜物ながら
写真で見ると質感と色味も相まって 何だか粘土細工か、
木彫りにも見えますね(笑)。



















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亜麻 (FLAX:フラックス)





 酷暑の候、皆様もこの厳しい暑さにお疲れの事と思われます。
ここまで暑ければ もう何を着ても暑い、むしろ長袖などで強き日差しを防御した方が良いくらいです。

せめて涼を感じられる 『リネン』 へと手が伸びるのはむしろ本能でしょう!

麻には色々な種類がありますが、麻と言えばリネンと思う方も多い事でしょう。
リネンは麻に属する一種に過ぎず、他にはヘンプ、ラミー、ジュートなどが挙げられます。

リネンの原材料となるのがフラックスという植物であり、そこから紡績されて糸や織物となってから リネン と呼ばれるようになります。


















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(1942年:Belfast Tlegraphより)



・・・・・主に欧州で生産され、アイリッシュリネンやフレンチリネンは質も高く有名処ですね。










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(1945年:Belfast Tlegraphより)




・・・・・実を付けたフラックスは根っこから引き抜かれ、そのまま放置します。
水溜りに浸して茎の樹皮を腐らせ、太陽光、そして雨や風を受け、熟成発酵した辺りでロールにして収穫されます。
 そして種や樹皮をはじめ不要な部分を取り除き、リネンになる為の内部繊維を取り出して参ります。

このフラックス、日本語では亜麻、実は食用にもなり アマ二油を採取する事も出来ます、
フラックスの生産は非常に時間のかかる膨大な農産業でありながら、一度収穫すると6〜7年は同じ畑でフラックス栽培は出来ないそうです。
 それはフラックスが土の栄養分を全て吸収して立派に育つからこそなのですが、次は小麦やトウモロコシ、ジャガイモなどを育てて土に改めて栄養を蓄える必要があるとの事です(輪作)。



膨大な時間と手間をかけ、初めてリネンとなった糸からやっと私たちの服、そしてクロスや寝具、ファニチャーなどへ加工されるのですね。

















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・・・・・あっ、左の紳士も冒頭写真の様に粘土っぽい(笑)!

もうこの季節はリネン、昔ながらに愛される理由があるわけです。
日本でも明治時代から大正、昭和の初期までは夏のスーツといえばリネンが多く愛用されていました。














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Spence Bryson


IRISH LINEN

TROPICAL

370g




= Buff =  淡い黄褐色を指します。


・・・・・この色には深い想い入れと共に意図もあって選びました。
エッジなどのステッチは手縫いによるハンドステッチではなく、敢えてミシンステッチにしています。
 ナチュラルで素朴な色味、質感、植物繊維独特の落ち着く感じが本当に心地よい。
因みに、H.S.ORDERもBESPOKEも 地衿の芯は贅沢にずっとIRISH LINENの芯地を使用しています。

このトロピカルというド定番シリーズは地厚で確りと打ち込まれ、正に一生ものです。
確かに重くて大して涼しくない、されど この昔ながらの品質だからこそ味わえる迫力とリネンらしいエイジングは不朽の定番に相応しい。

昨今では有名なIRISH LINENでもアイルランド産のリネン(FLAX)ではありません。
もうほぼ生産されておらず、原材料としては品質高きフレンチリネンより織られています。
 現在アイルランドには IRISH LINEN GUILD という組合があり、原材料を輸入していてもアイルランドで昔ながらに拘った製法で織り上げられているリネン地であればIRISH LINENと定義されています。













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・・・・・リネンは人類が生み出した最古の繊維とも言われ、発祥は紀元前8000年頃とされています。
では改めてリネンのもつ驚きの特徴を挙げてみましょう。


■ リネンは他の自然由来な天然素材に比べても圧倒的に丈夫で長持ちします。
  水に濡れると強度が更に増すので洗濯にも強いですね。

■ リネンにはペクチンという多糖類が含まれており、汚れが染みにくく落ちやすい上、抗菌性も持っています。

■ リネンはコットンの4倍ともいわれる程に高い吸水率があり、通気性や発散性にも優れているので乾きも早い。

■ 繊維の中は空洞になっており、その空洞部分には空気が含まれています。
  余分な熱を逃がす放熱効果が高い上に、冬は中の空気が熱を保持してくれるので温かく感じられます。
  高い通気性と保温性にも優れているので 実は夏以外にも一年を通して使用できる素材でもあるのです。



この様な高い性能もあり、古代エジプトではミイラを巻く為の布としても使われていた歴史がありますが、例えば寝具、そしてカーテン含めファニチャーにも適した素材である事も垣間見る事が出来ますね。
リネンを夏に特化した素材に限定してしまうのは本来勿体無いという事が明白ですね。

 そんなスペック高きリネンで仕立てられたテーラードをもっと、もっと見直し、身近に愛用されてみては如何でしょうか。

先人たちが愛し続けてきた理由が着れば分かります。














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・・・・・折角 誂えるのであれば是非とも三つ揃いがお勧めではあります。
クリームやバフを筆頭に、スカイブルー、時にはピンクなどのウエストコートはモーニングやブラックラウンジなどのデイ・フォーマル、そしてダークスーツなどにも合わせる事が出来ます。

夏場での着用や、その日のシーンに合わせ、三つ揃いであればウエストコートを着るか否か選択する事が出来ます。
着用を前提とした場合、トロピカルのウエイトを考慮しウエストコートはバックレススタイルを採用しました。

上記フォーマルに合わす事も想定の上、取り外し式のスリップ!
古なセンターシームを設け、アルバートチェーンホールも空けてあります。

春夏でのイメージが強い事から、一般的には清涼感もある涼し気なシェル釦が多く使われている事でしょう。
 しかし、私は美しき希少な淡黄色のホーン釦にしています。
それは私にとって リネンに同じく丈夫さを優先、光沢強きシェルより合うと思う事、極め付けはリネンを夏色(夏服)にしたくないからとなります!
















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・・・・・仕立てあがったばかりのトロピカルはパリパリです(笑)。
ここから私色に染め上げていくのです!

高すぎず、引きすぎないゴージラインは首を縁取る襟ぐり線である事、直線的でシャープなフロントカットはイタリアンなカットに見慣れた方には新鮮でしょう。
キュと絞り込まれたウエストシェイプはアワーグラスを彷彿させ、釦位置、ポケット位置などに至るまで英国的クラシックの拘りぬかれたカットです。
 興味のない方から見れば単に本返りな三つ釦の上着ですが、、、『神は細部に宿る』は手作りの品だからこそ。



リネンはハリ・コシが強く、かつ皴になるのが特徴ですね。

先にも触れましたが、リネンは繊維の中が空洞であり、まるでストローに同じです。
ストローはパキっと折れ曲がりますが、それがリネンの皴に同じなのです。

しかし、ハリ・コシ強きリネン地は、エイジングによりかなり柔らかくなってグッと雰囲気を変えて参ります。
 その頃には相棒としての絆は相当深くなっている事でしょう。


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・・・・・リネンの本当の魅力は新品では上面を見ているだけに過ぎず、リアリティーに掛けますね。
今度は着込んでシワシワで小慣れたリネンたる本質的な魅力のでている顔もお見せ出来ればと思っております。
 いや、見なくてもご自身で育てた方が何倍も良いですね!














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・・・・・愛すべきリネン、世界最高峰とまで言われたアイルランド産のフラックスはもうほぼ栽培されておりません。
しかし、コットンも同じく エジプト綿、スーピマ綿、新疆綿や海島綿など、優れた高品質な原材料があれば、それを高次元で紡績し、織り上げる蓄積されてきた技術があればIRISH LINEN自体は手に入ります。
されど いつまで手に入るのでしょうか、、、。

近年 リネン地の価格は高騰しており、その手間や収穫を増やしにくい生産背景には農作物としての生産量に限界がある事も起因しているのですが、実は欧州の気候変動も大きく影響しております。

その気候変動の影響により、2022年・2023年はフラックスの大不作が起こり、ストックも底を尽きてしまいます。
 追い打ちをかけるように、フラックス栽培をされる農家さんは減る一方、世界的に見れば生産量は以前の約半数まで落ち込んでいるそうです。


多くの素晴らしきものが手に入らなくなってきています。
ゼロにはならなくても、気付けばリネンは超高級素材になっているかも知れませんね、、、。

先ずはもっと、もっと皆様にリネンの魅力を理解し、愛してもらいたいのです。
そして、これからの日本では特に優れた素材であるという事。
安価な化繊に頼らず、昔ながらに先人方にも愛され続けてきたリネンに今一度 目を向けるべきできなのではないかと考えるこの頃で御座います。




 皆様も是非 素敵なリネンのテーラードを嗜まれてみては如何でしょうか。
私にとってのIRISH LINEN SUITSは(リネン混を抜かし)約30年振りになります。
改めてよい歳になり、やはり付き合いたい素材でもあったのですね、、、構想自体は随分と前から。

 ジジイになる頃にはどんなエイジングを、顔を見せてくれているでしょうか。
今から楽しみでなりません!























・・・・・7月もそろそろ終わります。
重衣料の早期受注キャンペーンはお陰様で無事に終了となり、沢山の方々に光栄なるご注文を頂戴致しまして 誠に有難う御座いました。


また、当店シャツの一時終了に伴い 本当に沢山の方々より膨大なご注文を頂いております。
もう私は既にパンクしており、嬉しい悲鳴ながらも全く追いつきません(笑)。
 こんな有り得ないほどの受注量、、、シャツ専門店でもあるまいし、それだけ多くの方々にご支持を頂いているという事に対し 心よりの感謝と敬意を示すと共に、改めてお詫び申し上げます。
そして常に極上レベルで仕立てて下さる工場さんの方々にも改めて心からの感謝をしつつ、皆様の想いが詰まったシャツ達をどうか宜しくお願い申し上げます。

8月9日の受注停止まで もう僅かで御座います。


因みにですが、最後に英国シャツ地フェスの在庫状況をご連絡させて頂きます。




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ACORN:ストライプ・・・LAST 1着分





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RINGHART:タッターソールチェック(NAVY/PLUM)・・・LAST 1着分



膨大に仕入れたので心配しておりましたが、本当に皆様のお陰によりあ僅か2着分を残すのみとなります。
これら以外にも定番シャツ含め 是非今一度 ご検討頂けましたら幸いです。






では、この暑すぎる夏 どうかご自愛くださいませ。
今週もお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。






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2023年11月28日

【 BLACKLOUNGE SUITS A 】






≪ Clothes make the man. ≫




服は人を作る。

これは何世紀にも前の言葉(表現)であり、今日でも当てはまります。
多くの人が今でもブランド名やトレンドに影響を受け、追いかけています。
その方々は他の人と同じ服を着ているので簡単に見つける事が出来ますが、そのせいで自ずとスタイルステートメントの価値を下げている。

 本当のスタイルとは自分らしくある事。
自分が誰で、自分を信じ、量より質と共に反映するものを着る事から生まれます。
ビスポーククチュールが復活している理由の一つであり、自分の選んだ生地で自分の服を仕立てている理由です。



(・・・英国のとある老舗服地商より。)

とても的確に語られていたので引用させて頂きました。












 スーツを、テーラードクロージングを愛される皆様
朝晩は寒さも感じられ、今では存分に楽しまれているのではないでしょうか。

カジュアル化が進行し、スーツの着用頻度が下がった方々も多い事と思いますが
個人的にはとても勿体無いように感じます。
こんなにも紳士を美しくエレガントに表現してくれる洋服はありません。

紳士服の歴史と共に その奥行きを覗き込めば果てしなく
その魅力たるや 未だその片鱗すら垣間見られた事なき方々へ、その片鱗だけでもお伝えする事が出来ましたら幸いです。

 装いには敬意や配慮含めTPOがあり、とても大切で重要な事ながら
誂え服は自己満足でもありますのでご自身が気持ち良く、格好良く、気分が上がるテーラードクロージングをお楽しみ頂ければと思います。




 今週は私個人の自己満と、ちょっぴりご提案も踏まえてご紹介させて下さい。
ブラックラウンジスーツ、続編となります。


http://dittos.seesaa.net/article/500881048.html
【 BLACKLOUNGE SUITS 】









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・・・・・優に100年以上も昔の装いであり、エレガントなフロックコートのスタイルです。
長きに渡り正礼装に君臨して参りました。

大いなる特徴として、ウエストラインに上下を分断するウエストシームがあります。
そしてダブルブレストには腹部の前中心線にもセンターシームがあります。
 シーム(縫い目)を利用し、様々な作用を生み出す事が可能となります。












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・・・・・フロックコートが退役し、当時の準礼装であったモーニングドレスコートがイブニングドレスコートと共に昼夜に分かれ その役を担います。
現代での正礼装:ディ・フォーマルスタイルです。




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そしてウエストコートについては もう一つ。
お気付きの方もおられると思いますが、ご覧頂きました御三方のVゾーンを改めてご覧下さい。

白いインナーの様なものが確認出来ますね。
 これは 【 SLIP 】 といいます。














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・・・・・もともと古くはモーニングに合わされるウエストコートは上着に同じ共地です。
これはブラックラウンジスーツにも引き継がれていますが、双方の違いは上着の尻尾を切り落としただけであり これでラウンジとなります。

このブラックラウンジスーツがデイ・フォーマルの準礼装としてポジションが確立されました。
前編でもご覧頂きましたように、政治家や弁護士などを筆頭に 比較的目にする日常範囲でのドレッシーなスタイルであったことが伺えます。

細かなヘリンボーン地の上中、下はコードストライプ
基本はホワイトシャツのフレンチカフスですが、クレリックスタイルも素敵です。

凛として本当に大好きなスタイルです!
















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・・・・・SLIP(スリップ)の起源は19世紀初頭にまで遡ります。
当時は対照的な色同士のウエストコートを同時に重ね着していた事に起因します。
 日本においては朝廷の伝統的な装束でも複数の衣を重ねる事が基本であり、十二単などをイメージされると似ている要素があるとも言えます。

この伝統的で洒落た着こなしの名残が 『スリップ』 を生み出し、洋服がブラックですからホワイトの(大抵の場合はコットン・マルセラを使用します。)生地でパーツを作り Vゾーンに添えられるようになります。
( スリップ自体は通常取り外しが出来るように誂えられています。)


MARCELLA / マルセラ … ピケとも呼ばれ、イブニングドレスのウエストコート・ホワイトタイを誂える凸凹な生地です。 ≫


今では全く一般的ではなく、歴史にも通じたTAILORに行かなければならないでしょう。
確かに重ね着しているように見える・見せるアイテムとなり、古を重んじた本格的な誂えであるとも言えます。
 必要が無ければ外せますので、場面に合わせて利用できるのです。















・・・・・個人的に大好きなブラックラウンジスタイルを突き詰めたい、そんな想いを具現化致しました。

 ブラックラウンジスーツとはポジションへの呼称であり、生地は勿論ブラックを筆頭に、チャコールグレーなども含まれます。
個人的な拘りでは 限りなく濃いエレガントなチャコールグレーで細かなヘリンボーン地である事。
W.チャーチル氏の生地もそうでしたが、バラシアやドスキンなどと同じようにモーニングドレスを仕立てる王道なクラシックスーチングです。

先ずはベースとなる三つ揃いが必要となります。
仮に黒でなければ凄く濃いグレーのダークスーツ範疇ですから これこそ冠婚葬祭からビジネスまでフル活用できる万能と言えますね!

生地は厳選の上 選び抜いたコチラで。



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http://dittos.seesaa.net/article/499684657.html
【 FOR THE DISCERNING MAN 】



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・・・・・この生地はとにかく濃いトーンであり、正にチャコールグレー。
英国(H.Lesser)ではライトウエイトのスーチングとなりますが、このウエイトこそ日本では3シーズン用となりますので、真夏以外はいつでも対応可能です。

ピークではなく、ノッチでの三つ釦は勿論本返り。
当然ノーベント、そぎ落とされたシンプルさである事。
至って普通ながら 秘められた拘りは相当なものなのです(笑)。
















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・・・・・ブルーの効いたEND ON ENDのシャツはクレリックスタイル。
白いチーフにシャツの襟、そしてスリップがとても映えます。

あっ、もはや当店の隠れ定番であるタイスライダーですが
職人さんへ発注していた在庫分が届いております!
 チェーンと共に是非お声掛け頂ければと思います。


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http://dittos.seesaa.net/article/460665292.html
【 お知らせで御座います。】
















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・・・・・フロント釦を外せばアルバートチェーン。
深めに付けられているフロント釦、これは打合い量を示し 拘りポイントの一つでもあります。

ダブルブレストのウエストコートによる狭きVゾーン
昨今ではローライズのトラウザースに合わせた着丈の長いウエストコートをよく目にしますが、そのバランスでは上手く成り立ちません。














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・・・・・アルバートチェーンには、ダブルチェーンとシングルチェーンがあります。
これはダブルチェーンであり、シングルよりも古めとなるそうですが 英国製ではそれぞれにホールマークの刻印で製造年代が分かります。
一般的にはTバーを釦ホールに引っ掛け、当然ながらポケットウオッチの落下防止を担います。

ウエストコートがダブルブレストの場合、Tバーはホールに掛けますので冒頭写真 チャールズ国王の様にチェーンの中心は右寄りになります。


このウエストコートではもう一つ 古のディテールがあり、それはセンターシームなのです。
後で触れて参ります。














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・・・・・スリップが見えますね、程好く顔を見せ
左上前でウエストコートの打合いとリンクさせます。
(先にも述べたように取り外しが出来ます。)

重ね着の様に見えますね! 正にその要素が目的なのですが。

因みに、Tシャツで 襟ぐりや袖口に重ね着風に見せた配色部分パーツが加えてあるのを見た事がありますが、これも目的はスリップに同じですね!


しかし生地色はブラックに見えますよね、、、それが狙いのチャコールグレーでもあり
H.Lesserも意図している事でしょう。


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・・・・・センターシームに着目してみましょう。
この意図的に組み込まれたシームにホールを敢えて設けられ、チェーンのTバーはシングルブレストの様にセンターへ納まります。

英国古着に造士が深いお方は見た事があるかも知れません。
















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・・・・・エドワーディアンのフロックコートです。
冒頭でも述べましたが、ウエストラインに上下を分断する縫い目
そして腹部の前中心に左右分断の縫い目がある事が見て取れます。


冒頭写真のフロックコート、そしてこのイラストを見てもわかる様に、ダブルブレストのウエストコートは釦数が多く、8釦‐4掛けなど より縦に長く腹部面積を覆います。

シームがある事により、そのシームを利用してクセ(ダーツ)的な概念を盛り込む事が出来ます。
故に腹部の覆う面積が広ければ広い程に このシームの効果は大きく、立体的な身体に寄り添わせることが可能となります。


 もう少し時代は流れ、、、
ダブルのWCも6釦‐3掛けあたりに落ち着き、釦配列は腹部にある程度 集中されます。
 そうなると前中線長は短くなり、シームの効果は昔より薄まると言えます。

だからこそ、上記状況と、ポケットウオッチが使われなくなってきた事などを背景に
センターシームは排除されるようになったのだと推測できます。
 勿論 作り手が楽だからという要素も必ずあるでしょう。

















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・・・・・では名探偵にもご協力頂きまして、、、全くもって同じですね。

このディテールは、ブラックだから、フォーマルだからではありません。
ダブルブレストのウエストコートだからです。

センターシーム長が短くなったとはいえ、シームを切るならクセ取り的要素も入れます。
より身体へ吸い付くように、、、名探偵の様に腹部が立派であればある程 その効果を盛り込めると言えます。
 では何故 ダブルブレストの上着は切らないのか、、、確かに切れば効果を盛り込めますね。
それは多分ウエストコートには『チェーンホールを開ける』という要素がプラスされているからではないでしょうか。














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・・・・・ではトルソーの為の服ではないですから
着用写真もご覧頂きましょう。

チェーンを使わなければただのシームがあるだけであり、名残であるラペルのフラワーホールに同じです。
しかしそのシーム効果だけはフィッテイングに作用として残ります。

スリップは外してあり、サッパリと見慣れたクラシックな印象です。















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・・・・・上着は超ベーシック。
トラウザースの裾は折り上げ、スリップも外し、極クラシックなダークスーツです。

これでドレスTR(コードストライプ)を履けば BLACKLOUNGE SUITS となります。
まぁこれもラウンジスーツであり、ブラック範疇ですが、、、、。

真面目そうに見えますね(笑)。














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・・・・・スリップを付けました!
Vゾーンにアクセントが加わり、より華やかな印象とも言えます。

これでドレスTRを履いて、足元にはスパッツを装着すれば私の中でのブラックラウンジスーツの完成です。

袖口から白、そしてVゾーンはシャツ衿の白、そしてスリップの白。
これでスパッツを付ければ足元の裾口からは そのスパッツが程好く顔を出し、素晴らしくコントラストの効いた重ね着スタイルの完成となり、本当に美しく成り立っています。

昔の方々は本当にお洒落であり、紳士の着るスーツ(スタイル)がどれだけ完成・熟成され続けてきたか分かるというものです。


 ここまでお読み下されば、上着の袖口からシャツのカフスが出ていな事がなんてナンセンスなのかも繋がりますね。
理由はそれだけではありませんが、正しきサイジングを知る事が美しくスーツを着こなす近道となるでしょう。













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・・・・・スリップ、小さく些細なパーツながら、効果は絶大なものです。
普段のビジネスシーンには重いようでしたら結婚式や日中での重要な会合、パーティーなどで如何でしょうか。


日本の、日本人特有な冠婚葬祭やリクルート用などで重宝されている 『ブラックスーツ』 という作られたポジションが実在しています。
便利だとしても歪な概念を少しでも打破し、本質に近付けたいと微力ながら思っております。
















・・・・・如何でしたでしょうか。

次は本当の意味での着こなし(ドレストラウザース)を履いて いつか続編をご紹介したいと思っております。

 では いよいよ師走を迎えます。
どうか今年も最後まで 宜しくお願い申し上げます。














・・・・・British Style を愛する顧客様方へ。
クラシックなスーツやコート(ジャケット)を仕立てても、合わせたくなるような英国製のシャツ地はお選び頂ける見本が今は無く、英国テイストのシャツ地もめっぽう少ない!
 RINGHART社も注文できなくなり、私自身もそういったご要望にお勧めが無く大変困っていました。

なので、、、 ACRON SHIRTING を仕入れました!

初回なのでそう多くはありませんが、、、
正確には発注済み、入荷待ちです。
私個人も欲しいですし、『らしさ』のある英国シャツ地を厳選して ご提供させて頂きます。

届き次第 改めてご紹介させて頂きますので、是非ご期待くださいませ。
来月は 【 ACRONプチ祭り 】 を開催予定です(笑)。











・・・・・大変恐縮ながら、来週のBLOG更新はお休みとさせて頂きます。

次回は、12月12日(火)を予定しております。

寒くなり、誰しもが忙しくなる師走
どうかご体調には十分にお気を付け下さいませ。


 今週も最後までお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。







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2023年09月26日

【 BLACKLOUNGE SUITS 】






 9月も後半であり、先週末は秋分の日でもありました。
最高気温もやっと30度を下回る日が出てきてホッと致しますね。

さて、今週は私が個人的に大好きで追及やまぬ念を抱くスタイルをご紹介させて頂きたいと思います。











 紳士服は長き歴史の中で、常にカジュアル化の波が進行しています。
現代における正礼装、これはモーニングドレス(モーニングコート)、そしてイブニングドレス(イブニングテールコート)のスタイルが君臨しますが 昔は更にその上へフロックコートが鎮座していました。
 そのフロックコートが退き、その時代でのセミフォーマルであったモーニングコートやテールコートが格上げになりました。

この時点までで共通するのは『コート』というスタイルであるという事であり、モーニングコートの別名は カット アウェイ フロックコート であるという事も付け加えておきます。
そもそも前裾含め長かったコートは乗馬の際に前裾が邪魔であり、カットしてしまいましたので尻尾のみ その着丈を維持する形状になった次第です。




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その堅苦しく丈の長いコートから楽に寛げる服をと考え、コートの特徴でもある着丈(尻尾)を切り落とし LOUNGE SUITS という今におけるコート(ジャケット)の外観が生まれます。





・・・・・ここで理解しておくべき事があります。
日本において、スーツの上着は一般的にジャケットと呼ばれています。そしてコートと言えば外套であり、着丈も長いものという認識ですね。
 しかし、英国では(ラウンジ)スーツの上着自体をコートと呼び、外套は外套であるからこそオーバーコートとなります。
イギリス英語とアメリカ英語の違いですが、日本では圧倒的にアメリカ英語が強いです。
更にもう一つだけ付け加えさせて下さい。
 コートには中衣の上に上着として着用するボディーコートと、コート(ジャケット)の更に上から着用するオーバーコートに分けられます。

前者はフロックコート含め、モーニングコートやイブニングテールコートがその範疇になり、チェスターフィールドコートなどは後者の外套でありオーバーコートとなります。













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DAY FORMAL




・・・・・フォーマルウエアは 『 DAY 』と『 EVENING 』に分かれています。
その機会である時間により装いが違うという事になり、昔の人は一日の中で時間と機会により着替えていました。

その DAY FORMAL はモーニングコートが筆頭ながら、そのポジションに対しやや砕けた下のポジション( SEMI FORMAL )が BLACKLOUNGE SUITS となります。
このブラックラウンジスーツに対する装いのルールはモーニングコートのスタイルにほぼ同じであり、上着の尻尾があるか無いか、これが最大の違いと言えるでしょう。










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・・・・・尻尾の無い上着のスタイル、これが BLACKLUONG SUITS なのですが、英国的呼称であり 米国では STROLLER(ストローラー)、欧州各地では STRESEMANN(シュトレーゼマン)とも、そして日本では DIRECTORS SUITS(ディレクターズスーツ)が一般的でしょうか。

尻尾の無い黒い上着、中衣も昔は上着に同じく黒ですが 今では別の色を用いる事もありえ、ここもモーニングドレスのスタイルに同じです。
下物は共通してグレーの縞柄(コードストライプ)のドレストラーザースとなります。
(こちらも昔は小格子柄なども合わされていましたが、コードストライプが生き残ったと言えます。)

3のイラストでは、中衣であるダブルのウエストコートが見えますが バックレスで仕立てられているのが見てとれます。
その左、マチ針の様な、、、これは(アスコット)タイ・ピンですね。














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・・・・・呼称において、ラウンジスーツと言えば尻尾の無い上着のスーツを全般に表しますが、ここにフォーマルウエアの色でもある 『ブラック』 を付ける事により総称とは明確な違いを見出したとされています。
 故に ブラック というのはスタイルやポジションを表しますが、必ずしも黒に限定されたものではありません。
ブラックを筆頭に、チャコールグレーなどがそれに当たります。

ディテールについて、これはモーニングドレスを念頭においてみると シングルブレスト / ピークドラペル / 一つ釦 が順当な系譜である様に見る事も出来ます。

しかし、そもそもラウンジスーツに『ブラック』と差別化されたわけであり、初期のスタイルではノッチドラペルが多く、30〜40年代になるとその時代では人気であったピークドラペルが幅をきかせます。
 同じ様にフロント釦も一釦だけではなく、二釦、三釦もあるわけであり、シングルブレストだけに限らず、ダブルブレストの上着も有り得ます。















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・・・・・当時のバックスタイルでの多くは NO-VENT であり、シンプルかつエレガントです。
ドレストラウザースの灰色、そして縞柄、これらも基本モノトーンばかりが生き残っておりますが、昔は控えめですが色縞入りもありましたし、グレーのトーンや縞柄の太さなどでフォーマル度合いや慶事・弔辞で向き・不向きなども区分けする事が出来ます。

今となってはグレーの縞柄(コードストライプ)であれば みな一緒くたですね。














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・・・・・実にエレガントで控えめ、特に昔は弁護士や公務員の方などが好んで着用されました。
ブラックスーツ(ダークスーツ)の下物を履き替えるだけ、それだけでセミフォーマルとしての厳かな装いへとなるわけです。

最高にエレガントであり、言葉も出ぬほど惚れています!













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・・・・・当時のリアルな写真をみれば、冒頭のイラストがかなり忠実に描かれているとお分かりいただけるでしょう。














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・・・・・写真にてご登場頂きました英国首相をも務めたチャーチル氏やイーデン氏だけではなく、時代を跨ぎ 他の欧州の代表者(独:シュトレーゼマン氏)や米国の大統領まで。















・・・・・日本ではある意味独自な洋装解釈も多々ありますが、洋装文化の根底無きゆえ仕方がない事なのかも知れませんが、、、、昭和初期くらいまでは結構確りとしていたと思います。

その日本でもブラックスーツというポジションは今でも健在であり、多くの方々が所有されておられる事でしょう。
 このスタイル(ポジション)は厳密にはブラックに限らず、、、という事になりますが、そんなブラックスーツにドレストラウザースを合わせるだけで楽しめるのも このデイ・セミフォーマルだと言えます。

黒ではなく、限りなく黒に近いチャコールグレーを選んで三つ揃いを仕立ててみては如何でしょうか。
黒を着ていると慶事や弔辞ですか? と言われそうですが、チャコールグレーであればビジネスの場においても目立ちすぎる事なくご堪能頂けるわけです。
( 実際は目立つかもしれませんね、昨今では、、、。 )

カジュアル化が進むからこそ、敢えてそんなエレガントな装いに拘りたいのです。
しかも強き『黒』ではなく、限りなく黒に近いエレガントなチャコールグレーにて。















・・・・・そんなポジションたる装いのお話でした。

多くの皆様はスーツの本当の魅力を、歴史を、力を理解されておりません。
特に不便も問題もないからですが、私にとってはとても勿体無いと思います。
 今からでも遅くありませんし、改めてスーツの魅力を探求するのも衣・食・住の『衣』を充実させる事でもあると思います。

ですが皆様が急に勉強する必要もありません、分からなければTAILORに、知る人に聞けば良いだけです。
だからこそTAILORは専門職種でもあり、技術だけではなく歴史的背景やセンスさえ磨き続ける必要があります。

勿論フォーマルに限った事ではなく、ご自身のエレガントで意思・意図の通ったお姿より 今まで気付かなかったご自身の魅力さえ引き出される事であると思っております。





 では また後述に繋げたいと思います。
今週もお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。














・・・・・次週のBLOG更新はお休みとさせて頂きます。
次回は 10月10日(火) を予定しておりますので
どうか引き続き宜しくお願い申し上げます。




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