2025年03月25日

【 VINTAGE:ROYAL NAVY - WORK DRESS TROUSERS 】






 皆様 こんにちは。
今週の東京は最高気温20度越えが連日で 夏日さえ含まれるほどに上昇する予報です。
もう少し春の装いを楽しませてほしいですね、、、桜の開花も一気に進んでしまう事でしょう。




 さて、今週はオタッキーな私の楽しみにお付き合い頂ければと思います!





















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1976



・・・・・プリンスがROYAL NAVY(王立海軍)へ5年間在籍されていた折、海軍提督の立場であり父君でもあるエディンバラ公が訪問された時の1コマです。

イギリスは日本と同様に島国のため海軍の歴史は古く、多くの国々では陸軍が序列の最上位になるそうですが、イギリスでは形式的とはいえ海軍が最上位の存在とされているそうです。



 紳士服の発展におき 軍服の存在は絶対に欠かせません。
リアルな戦闘服だけではなく、セレモニーなどでのフォーマルウェアまで幅広く存在します。

今回はそんなミリタリーウェアより、今にも通ずる、いやむしろ市場に売っているものよりエレガントで魅力的(私にとって)、味わい深いトラウザースをご覧頂きます。



















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= VINTAGE ROYAL NAVY P/C WORKING DRESS TROUSERS =



・・・・・おそらく60年代から70年代初頭製との事です。
ワーキング⁉ ドレス!? 分かり辛いですよね。
専門の古着屋さん曰く、英国海軍にて支給されていたトラーザースであり 甲板作業時などにも穿かれていたであろうユーティリティーなポジションとの事です。


P/C とは素材であり、ポリエステルとコットンの混紡生地と成ります。
やや薄地で柔らかく、詳しき混率は分かりませんが とてもソフトで穿き心地良く、かつ このシルエットですから快適極まりないのです。
 ポリ感さもほとんど感じません!















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・・・・・NATOナンバー(13桁)もありますね。
このナンバーは国やアイテムなどで割り振られています。

このリアルな古着は私とほぼ同世代なのです!

軍服も進化を繰り返しますし、このポジションのトラウザースもディテールなどが変わって参りますので そういったディテールからも時代を逆算する事が出来ます。
(これはもうプロレベルですが、、、)














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・・・・・とてもシンプルで簡易に仕立てられ、素材自体もポリ混ですから耐久性も高くて安い、洗濯にも強く 縮みすら抑える事が出来ます。
 そういう意味で見ても大変 理に適ったアイテムであり、優れた商品開発でもあるユーティリティートラウザースな訳です。

尻ポケットは右側のみ、サッパリと片玉縁なあたりが よりGOOD!
そしてこのトラウザースはベルトレス スタイルであり、ベルトもブレイスも使用しませんのでサイドアジャスターでウエストサイズを調整できます。

このサイドアジャスターは初めて見ました!
かなり感激した事を覚えています。















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・・・・・フロントは比翼仕立てですが、前立てすら付けず前端を三つ折り始末で薄くシンプルにサッパリ、そしてホールのある比翼布が前立て止めステッチで固定されます。
 フロントの開き止まりも深くて 今は無きあるべき姿であると同時に機能を確りと尊重されている時代です。

















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・・・・・幅広で太目なウエストバンド、軍トラでは良く見受けられますね。
上前には持ち出しが付き、正に英国トラーザースの顔です。

ホールも無く、前カン⁉ でも下前バンドには釦が!












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・・・・・これも初見ディテールでした!
持ち出しの比翼仕立て⁉ ナイスアイディアでありこれまた素晴らしいです。















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・・・・・帯芯無しの仕立てであり、とてもソフトな穿き心地。
その帯(BAND)が二重になるので内側だけにホール、外側は蓋となり釦を隠します。

ただしデメリットもあります、控えがとられていないのでホールの付く内側だけ引っ張られて表から覗き見してしまいますし、表裏での帯生地が捻れます。
また、決して釦開閉がしやすい訳でもありません。
 ですが、安く大量に必要であり 耐久性や性能自体も高くなければなりません。
そんな落としどころを考えれば採用するに相応しい仕立てであり、素晴らしいアイディアだと思います。















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・・・・・官給品の類は基本前提として既製服でもあり、サイズ展開も広く 大量に生産されるものです。
そんな事もあり、その服のポジションによっては『ウエスト出し』というお直しなども前提とされていない作りになります。

写真で見る中心辺りにある縫い目が尻グリの縫い目なのですが、ワークウエアなどにみられる巻き縫いで余分縫代は勿論なく、ウエストバンド自体もセンター接ぎ自体が排除されています。
 この個体は随分と綺麗でありつつ、感激して購入しましたが 本当はお腹周りが少しキツイ(汗)!
ウエスト調整出来れば良かったのですが、、、残念。


 ですが本当に上手くバランスを取り、理に適った総合デザイン力の頗る高いアイテムである事に変わりはありません。

● 洗濯頻度も高く、耐久性と生地値安価を考えればポリ混は強し。
洗濯するからこそ金属を限りなく減らしてシンプルに、それらはバンドの持ち出しやサイドアジャスターの意匠にも見て取れます。
 比翼の持ち出し含め、それら部分はスマートな『DRESS』という要素にマッチしますね。

● サイズ展開が豊富だからこそ サイズ調整という概念すら排除され、シンプルで丈夫な仕てられ方をしており、ポリ混生地と共に質実剛健な辺りは『WORK』という要素にマッチします。




こんな魅力的なミリタリーウェアですから是非自身のMYサイズで欲しくなってしまいます(笑)。
 それが実際に既製服化まで行った BUSH JACKET だった訳ですね!






















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・・・・・昨年 仕立てちゃいました!

先の軍パンは裾幅25pで緩やかな美しいテーパード、私は24pにしておき緩やかなテーパード具合は尊重です。

生地は良いP/C生地が無く、、、適当にネットで探したらかなりお安く国産生地が出て参ります。
ですが『コレだ!』というのは 色、混率、ウエイト共になかったので 取り急ぎ300g以下でネイビー地を探しました。
 ポリエステル65% 結論的に私の使ったこの生地自体はお勧めできません、、、他に良いのをまた探そう!














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・・・・・バンドの持ち出しは2連釦でありつつも留め外し優先含め 貫通にしました。
BANDの接ぎ目を利用したシームホールと釦、フロント開閉は楽ちんにファスナー、帯芯は使用しませんが腰裏くらいは小奇麗に付けますよ。


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・・・・・さて、感激したサイドアジャスターです。
先ず 既製品含めトラウザースのサイドアジャスターはウエストバンドに乗っかっているのが多く見受けられますが、これは低い股上にも関係があります。
 そもそもハンド内には通常帯芯があり 絞り込むには矛盾が生じます。
この軍トラはそもそもソフトで帯芯無しですからその矛盾は無しです!

小さなシルバー色の金具が見えますが、日本では『小判カン』と言います。
アジャストベルトで巻かれているので金属露出も最小限です。


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・・・・・このサイドアジャスターベルトは 帯自体を接ぎ足しで挟み込む事によりスマートに段差自体抑えられています。
ディテール自体は小ベルトとして独立した作りにより帯に縫い付ける事も可能ですが、その段差軽減 + スマートさ以外ではどんなメリットがあるのでしょうか。
 それは 帯(ウエストバンド)は長い = 用尺を食う と言えます。
わざわざその長いパーツを取る(裁断する)為に確保する必要があります。

しかし、接ぎにより帯自体を分散すればパーツ自体が小さくなるので 大量生産では頗る効率の良いマーキング(型入れ・裁断・裁ち合わせ)に貢献すると言えるのですね。
 そこまで考えているかは分かりませんが、、、単純な後付け式サイドアジャスターバンドより俄然スマートでドレッシーです!
















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・・・・・じゃーん、実は内側で釦留めされているのです。
釦留めは 留めるか否か、そのホールド力は抜群に良いのです。
 自前は釦自体も碁石のような薄型で こういった用途に適する釦を使用しています。

この2つ穴13oボタンはBESPOKEでの上着に付けられる内ポケット用の釦、そしてトラウザースの比翼フロント釦などにも使用しています。

下の写真では 絞った時用の釦へとめた場合です。
2連で付いていますが、釦スタンス分が絞られる事になります。
 ほんの少しで良ければ片側を、確り絞り込みたい時は両側でどうぞ!


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・・・・・誂え服です、確りと調整出来るように尻繰り縫い目に縫代、そしてバンドにも縫代をつけ、スリットも欲しいよね!














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・・・・・勿論膝裏なんて排除、ポテンシャルとなる余分縫代は必要箇所のみ、内・外脇の縫代は膝上のみ足せるよう縫代を内蔵。
前身頃には力芯として三角シック、股にはボロ隠し兼 股シックもね。


では早速穿いてみましょう!













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・・・・・英国軍トラらしく股上は深め、シルエットは太目、特にバンドの幅広さに『らしさ』が出ますね。
 チラッと小判カンが程好いアクセントにも!
こんな些細なギミックにマニア心もくすぐられたりするのです。
















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・・・・・もう上着の着用が厳しい盛夏でも清々しく穿く事が出来ます。
ポリ混なので汚れは付き辛く、落ちやすく、梅雨のシーズンでも気にしない!
強度もあるので薄地にしても大丈夫、家庭洗濯機で気兼ねなく洗う事が出来ます。

ポジションやディテールはお勧めなのですが、、、、
主体となる生地、お勧め出来得る良質なポリ混コットンを探してみますね。
 勿論 お好みであればコットン100%からリネン、ウールでも!
ただし悪しからずBESPOKEでしか扱えませんのでご了承頂けましたら幸いです。




あ〜〜〜楽しかった!
洋服バカはストレス解消や趣味自体も洋服作りなのでした(笑)。








・・・・・如何でしたでしょうか。
それなりに学んだ仕立て職人であれば、見れば大抵のものは作る事が出来ます。
再現する事に当たり再発見やメリット・デメリットの明確性も上がりますし、この様に皆様へお見せできるサンプルにもなるのです。

 皆様から見れば専門知識を持つ専門職種な私は良く知っていると思うかも知れませんが、実は全然まだまだであり知らない事だらけです。
だからそれも楽しく遣り甲斐に繋がります。

古着への研究はそんな夢が広がっているのですね。

今の時代でも色褪せる事なく、いやむしろ隅に追いやられてしまった様々なデザイン(仕様・ディテール)やスタイルをもっと学ぶべく精進致します。
 これら経験は全て顧客様へのご注文に対し 必ずやエキスとなって注がれるのです!



 では、今週は私の趣味⁉にもお付き合い頂きまして
誠に有難う御座いました。

皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。












・・・・・誠に恐縮ではございますが、来週のBLOG更新はお休みとさせて頂きます。
近々 朗報をお伝え出来るかも知れませんが、限られた時間の配分におき どうしても優先順位を動かさなければなりません。

次回は 4月8日(火)を予定しておりますので
どうか引き続きよろしくお願い申し上げます。








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2025年01月28日

【 WW2-British Army Officers Shirt 】






 皆様 こんにちは。
今週は息抜きに 少しマニアックでオタクなお話にお付き合い頂ければと思っております。



日頃より 『クラシックな紳士服は歴史である』 と申しております。
多くの軍服、そして貴族の生活様式など含め 少しずつ発展と進化を繰り返して現代に至ります。
 紳士服を理解する上で歴史的な勉強と共に、リアルな古着から学ぶ事は本当に多く、その服達は正にその時代そのものを表しているのです。

生地や裏地、芯や糸、釦などのみならず、そのカット(型紙)やテーラード(縫製)から様々な情報を得る事が出来る宝物のようでもあります。
 特に軍服は生死にも関わるものです。
機能性や耐久性、快適性など踏まえ 創意工夫と共に当時一番の最適解が導き出されて参りました。


今週は VITAGE SHIRT をご覧頂きます。
正にハンドメイド製であり、依頼により仕立てられた BESPOKE SHIRT とも言えるでしょう。













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1950 PATTERN:BUSH JACKET



【 BUSH JACKETD 】



・・・・・TAILORである当店唯一の既製服であり、拘りを貫き 生地より復刻した自慢のサープラスガーメントです。
(上記リンクより 歴史から着こなしまで全5話御座います。)









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・・・・・これから来てしまうであろう 暑い日々には最適解たる一つです。
ご家庭洗濯機で気軽に洗えますので、汗や汚れに気兼ねなくお楽しみ頂けます。
現状まだ全サイズ揃いますので、どうかお気軽にご試着へお越し下さいませ!

 そういえば今年は新作タイと共に、新作のスカーフも仕込みましたので
是非小物も合わせてご期待下さいませ。









・・・・・このBUSH JACKETが 実際に活躍していた頃のシャツ が今回のテーマなのです!











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・・・・・1942 キング・ジョージ6世(インド皇帝)は、初期型BUSH JACKETをお召しです。
B.モンゴメリー中尉が着用しているシャツ、これは大きく括ると 『British Army Jungke Green Shirts』となりますかね。

エポレットが付き、カモメの様なカーブを描くフラップが特徴的なポケットを携えたサープラスシャツです。
 確りしたツイルから、今は無きAIRTEX、そしてフランネル製なども見受けられます。
各地環境に適した素材で作られていた背景を垣間見る事が出来ます。








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・・・・・1942 British Army:A.パ―シバル中将
クタッとして肌馴染み良きそのシャツは柔らかそうで AIRTEX の様に見受けられます。
 腕捲りをしている事からも暑そうである事が分かりますよね。











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・・・・・同じくA.パ―シバル中将とご兄弟。
今度は半袖バージョンですね、この素材感と共にフラップの存在感が堪りません!


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= WW2-INDIAN MADE BRITISH ARMY OFFICERS SHIRTS =




・・・・・この古着が販売されていたお店での呼称は BRITISH INDIAN ARMY:AIRTEX製プルオーバーシャツとありました。

BRITISH INDIAN ARMY = イギリス領インド軍
1947年の国家独立までインドにおけるイギリス帝国の主力軍隊でした。

INDIAN MADE これは呼称の如く現地インドで仕立てられた注文シャツ⁉という事ですね。

国からの官給品の場合、ブロードアローのマークが付けられており サイズ展開も多岐に渡ります。
 このシャツは何も付いてなく、裏に掠れたスタンプがありましたが、位置が不自然・不適切な事を考えると 生地自体に押されたものであり、それを避けずに裁断したのではないかと推測されます。








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・・・・・クラシックなOLDシャツの典型でもある長い着丈、シャツテイルの類は現代の様にトラウザースから出して着用する物ではありません。
背中は軽めなギャザーのようにも見えますが、ヨーク接ぎ目の縮みによるものであり、比較的にセンターよりで両側にプリーツが畳まれています。

AIRTEXのコットンたる素朴さ、良くも悪くも新しければゴワっとしており、着用や洗濯を繰り返してクタクタに育っていき、上記の方々が着用していたように第二の皮膚かのようになって参ります。

この服は1940年代製(約80年前)という時代を考えれば非常に綺麗で優秀な個体であり そこまで着古されていません。











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・・・・・とにかく格好良い!
状態の良さ、レア度、私自身が着用する前提でサイズが合う事、喜んで手に入れた事を思い出します。
 興味のない方から見れば古汚いオンボロシャツに過ぎませんね(汗)。

これは1940年代のインドで仕立てられたフルハンドメイド(総手縫いという意味ではありません。)なオフィサーシャツです。

 これからディテールをご覧頂きますが、もう驚きの連続です‼
ツッコミどころ満載であり、これからツッコミまくりますが 勿論愛を介してですよ!
とても気に入っており、真面目に愛おしくさえ思っています。
 当時の情景や価値観も見えてくるようであり、TAILORならではの目で覗いてみましょう!
(今回は分かりやすいので主に縫製面を見てみますね。)

読み終えた頃には皆様もこのシャツが愛おしくなっているかも知れません(笑)。














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・・・・・釦ホールは手かがりです。
生地は織物ですからメス(切り込み)を入れれば解れます。
その解れ自体を堰き止めるのが手かがりの役割です。
 ナポリ製のシャツでも一時期流行りましたね。

でも、、、、こんなにスカスカ密度、これで良いの⁉ 初めて見るレベルな密度です(笑)。
ですが解れてこないので条件を満たしていますし、むしろ強引に良く考えれば密度がスカスカなのでホール自体も柔らかい、されどホールサイズがギリギリ過ぎて釦通りがキツイ(汗)。









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・・・・・典型的な英国的レギュラーカラーであり、確りとしたタイスペースが設けられています。
襟には芯地を入れておらず、とても柔らかくてキーパーの類さえ装着しない作りです。
言ってみれば一番単純で簡単ですが、、、襟は顔ですからね、とてもハンサムさんです!







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・・・・・でも、、、ステッチ、、、自由過ぎるでしょ、解いて掛け直さないの〜⁉(笑)。
ステッチは補強であると共に飾り的要素も含まれます。

これは笑えたし本当にビックリしましたが、可愛ささえ持ち合わせている、、、
クライアントは何も言わないの? 気付かないの?







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・・・・・カモメの様なバットマンの様な、インカーブの効いたフラップ。
これは スカラップフラップ とも言われ、その逆山型で波の形状をホタテ貝に見合わせ そう呼ばれています。

強きインカーブ、ピークも角度が狭いですね。
ここまでインカーブを強く描くという事は、相当縫代も細くさらうか、切り込みを細かく入れないと ここまでのRは出ません!
 やりますね‼







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・・・・・ほら、言わんこっちゃない、、、縫代をさらい過ぎてパンクしちゃってる!
AIRTEXは見ての通り生地もスカスカだし、地縫いミシンのピッチも粗すぎるんですよ〜。

分かりやすいな〜♡。







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・・・・・胸部ポケットの中心にはインバーテッドプリーツが畳まれています。
が、地縫いされているのでプリーツは開きません‼ え〜〜っ。
飾りですね、了解です!







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・・・・・フラップをめくり、パッチポケット口裏の処理。
一つ折の切りっぱなし、、、スゲ〜!

裁ち目を隠すよう折襞を三つ折なんてしたら確かに相当な厚みです、であれば口布接ぎも一つの手。
見えないし手間を掛けずに出来る限り単純に薄く処理されています、、、、
潔い(笑)。








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・・・・・肩にはエポレット、小さなハトメ穴が見えますが これも手かがりです。
スカスカ密度は通常運転!
冒頭のエポレットには写真にある様に階級章を付けるので、ハトメ穴はその為のものですね。








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・・・・裏をめくれば、、、、ちょっと、、、一つ一つかがりきらず、次にツイッチ。
糸がモロに渡っていますが こんなの有り得て良いですか(笑)、でも裏ですし見えないですもんね! (糸も縮んだか、少し吊ってしまってますね。)

ステッチも相変わらずフリールートですが、本来の狙いは何ミリでしょうか⁉


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・・・・・エポレットを留める釦付け、ちょっと待って、、、玉止めがこんなにデカくて更に表側ですが宜しいのでしょうか、、、根巻すら乏しく、かつユルユル、、、
私の顔もユルユルにとろけました(笑)。

玉止めはせめて裏側とか、、、これじゃあお母さんが付けたよう、いやお母さん上手いぜ!
因みに私が付ければ玉止めさえ絶対に見せません。


ふぅ〜〜、もう随分と楽しませてくれましたが、まだまだ後半戦が控えていますよ。











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・・・・・おっ、長いテール 脇のスリット止まりには 丁寧に補強布が付けられ、当店シャツもそれに準じています。
 スリットではない 後ろから前へ波型に繋がったシャツテイルは生産効率・簡略化によるものですので、これがあるべき姿です。

補強布はバイアス使いですね、程好いクッション性を狙ったのでしょうか。









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・・・・・‼‼ 木っ端な端切れより 四角で裁ち合わせ、半分に畳んでそのまま素でステッチ付け!?

 え〜〜、当然裁ち端から解れますがな、、、当店シャツは準じていません(泣)。








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・・・・・身頃内側より、脇やアームホールの縫い目ですね。
裁ち目を隠しつつ、補強も兼ね 折伏せステッチが掛けられています。
 今にも通じる一般的な縫代処理ですね。

でも、、、ステッチが落ちまくっていますが、、、。









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・・・・・アームホール裏側、肩ヨーク辺り。
肩の部分にはエポレットが付いていましたね。
 そのエポレットが来るところの縫代は相当重なって厚みが出てしまう箇所でもあります。

だからって折伏せ放棄しちゃったの⁉
確りと包めてくれないと また解れてきちゃうけど、、、そろそろ慣れてきたので まぁいいっか!










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・・・・・袖筒をひっくり返した裏側、袖下縫い目。
ここも本来では脇に合わせて折伏せ縫いですが、「筒でやり辛いからまぁいいっか!」って事ですよね。
裁ち切りのままステッチ掛け、片側のみミミ使用とはいえ、、、。

ミシン不調⁉ 糸が、、、、これもいいや、
『袖筒なんてひっくり返さないだろう!』

「いや、でも腕捲りはしますよね⁉」

『・・・・・。』











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・・・・さぁて、終盤戦です。
袖口のカフスです、ここは勉強になりましたし 面白い!


一般的なカフスは長方形ですね、ですがこちらはセンター付近が三角で意図的に盛り上がっているデザインです!









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・・・・・軍服であるこの意匠を意識したのであろうと推測できるデザインですね。
コート(ジャケット)の体を成した袖は筒型であり 袖口は結構なユトリがありますね。

反面 シャツの袖口はそれなりに手首へフィットするよう もっと絞り込みますので、プリーツやギャザーなどで絞り込み、独立したカフスを袖口に結合する仕様が今の一般的なシャツの袖口です。


上着の袖丈は肩先から袖口まで、これで、これが袖丈ですね。
シャツの袖丈は、袖自体 + カフスの幅 = 袖丈 となる訳です。










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・・・・・袖口の裏側です、よ〜く見て下さい。
これは袖口に別パーツ(カフ)を表側に乗せ付けただけなのですね!
カフスが独立していないのであり、ここだけ見れば限りなく上着の袖口に同じです。


シャツのカフスは独立したパーツであり、それを袖に結合するものであるという固定概念があり過ぎました、、、。

袖自体は袖口先まで確りとある(ワンピース)のが分かります。
袖口に差し掛かるにあたり、多少絞り込みたいですからセンターでプリーツを畳み、袖口付近で地縫い・縫い潰しています。

 そのプリーツ折代は表側に露呈しますので その折代を隠しつつ、意匠なカフを重ね付け、袖口に補強された力芯の役割も担わせている訳です。

現代的なシャツから見れば、ご先祖様の生き様を垣間みれた感じですね!












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・・・・・上着の袖は 山袖と谷袖 での2枚袖。
シャツは基本的に1枚袖であり、袖下にシームがあります。

この時代の多くは、今でいう『ケンポロ』の類を設けず、袖下シームを利用して袖開きを作ります。
なので袖開き部が変な所に来ます、、、のでケンポロを作る事で無理やり袖開き位置を移動させた経緯があります。

そのシームを利用した袖開き部の処理につき、畳まれた織り代は なんと表側に畳んじゃってますよ! あれ、こちらが表側ですよね⁉

もう耐性が付いてきたので驚かないよ(笑)。













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・・・・・裾始末は三つ折でステッチ留め、一般的な始末です。
今ではミシンの座金を専用の物に替えれば 綺麗に自動で巻きながらステッチが掛けられます。
 丁寧なシャツであればあるほどに その三巻やステッチさえ 細く、かつ細かくステッチされ、綺麗なRを描きます。


キミは昔から自由だよね〜
幅もルートも、パンクさえお茶目に知らんぷりっ‼




はい、もうこの辺にしておきます!














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・・・・・如何でしたでしょうか。
ポケットも釦位置に対してホール位置が伴っていないから フラップが捻れてしまっていますが 勿論こんなところもご愛敬です。
正確な裁断、正確な縫製を軽んじるとこうなる事を教えてくれています!

将校さんに「一日で作れ」とでも言われたのでしょうか⁉
確かに頑張れば一日で出来そうではありますね(汗)。

将校さん方も本国(ロンドン)に帰ればお抱えのTAILORがあるでしょうし、同等レベルを求めてもいないのでしょう。
 全てでは無いですが、こういった背景は昔のナポリのサルトリアに近い部分もありますね。
バカンスを楽しみに来たブルジョアな方々が、現地で、現地の空気に合った、現地で着る服を仕立てる。
されど帰郷すればお抱えのTAILORは勿論ある訳です。




こういった当時のインド製サープラスガーメントはマジの手作りで本当に味わい深い。


インドの職人さんと私、生きている時代も違いますし言葉さえ通じ合いませんが、こういったリアルな古着を介し対話さえ出来るのですね。
多分 今の私が当時そのお店へ行っても雇ってくれないでしょう(笑)。
何故だか分かりますか?



オタクなマインドは理解されがたいかも知れませんが、素晴らしきリアルな歴史を堪能しつつ とても楽しめました!
良い・悪い、綺麗・雑 など超越しており、そのモノ作りから価値観を感じる事も出来ます。

検品してリアルを堪能したら今度は着る楽しみもあります。
 このシャツに私が仕立てたサンプルBUSH JACKETを敢えて重ね着しようかしら!
リアルなAIRTEXに復刻AIRTEX、インド職人さんの価値観とクオリティー、そして私の価値観とクオリティー、時代を超えた掛け合わせの妙!




服作りは深く、難しく、時には難解なパズルの様でもあります。
難しいからこそ楽しく遣り甲斐もあり、探求する喜びさえ御座います。

感性を磨き、頭を柔軟に、かつ思いやりをもって皆様より頂戴致しました服と向き合って参ります。



今週はTAILORである私のささやかな楽しみ(独り言)にお付き合い頂きまして 誠に有難う御座いました。
そろそろ店頭も春夏生地と入れ替えの時期で御座います。

 皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。








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2024年11月19日

【 Baby Cashmere:K様のバックベルトコート 】




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Jan. 1938 




ロンドンの冬、帽子にオーバーコートが欠かせぬ中、行列を作るクラシックな出で立ちの紳士たち。
アーセナルFC(フットボール)のもと本拠地であるハイバリー、アーセナルスタジアムでの観戦に並ぶサポーターの方々なのだそうです。
 現代の観戦スタイルとは大違いですね、現代までの月日は随分ガラリとカジュアル化が進行した事が見受けられます。

スポーツ観戦と言えば有名な『ポロコート』が頭に浮かびますが、こちらは19世紀後半 ポロ競技における英国チームの選手たちが着用していたウエイトコート(待ち時間に着用)が原型とされています。
 これをアイビーの選手たちが自分達もと取り上げ、広がりました。

また、観戦という部分では「スペクテーターシューズ」は正にその名の通りですね。
1900年代初頭より紳士たちが競馬観戦などに好んで穿かれていた所謂コンビの靴です。
つま先や踵、羽の部分などには確りとした革で仕上げ、歩行時に屈折する部分には柔らかな鹿革を使用していました。
 機能性重視ゆえのコンビな靴はスポーティーでもありつつも 決してエレガントさを損なわせぬ魅力があります。
















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・・・・・師走まであと僅かに迫り、そろそろオーバーコートも必要になる寒さを前に 着用出来る事を楽しみにされている方々もおりましょう。

オーバーコートには独特な魅力がありますよね。
防寒着である前提であり、ストールやグローブ、そしてハットを被ってスタイルとしては理想的完結です。


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 さて、今週は至高のカシミアでオーバーコートをご注文下さった K様のコートを紹介させて頂きます。

















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・・・・・ダブルブレストの6釦‐3掛け、ダブルはもともと打合いが深く、Vゾーンもコンパクトでより温かいとも言えますね。
生地はこれ以上なき至高のベビーカシミア、そこにセーブルをブレンドしてリップルフィニッシュ。
カラーはドレッシーでエレガントな ミッドナイトブルー であり、誰しもがそのオーラ―と存在感に頷かざるを得ないでしょう。


http://dittos.seesaa.net/article/451681604.html
【 至高のベビーカシミア 】



 こんなにもドレッシーでエレガントな生地だからこそ、王道的なチェスターフィールドコートを誂えたくなります。
 しかしK様は敢えてドレス度合いを下げ、普段使いにも着用しやすくしたいとの事。

着丈はドレス度合いにも大きく関係しますので、膝上丈にするだけで随分と軽快感が出ますが、丈は膝丈までは欲しいとの事、、、そして打合いはダブルブレストをご所望です。
希少で貴重、この生地が持つ品位を損なわせぬよう柔らかく砕いて料理しましょう。



チェスターフィールドコートの様に誰しもが分かるエレガントなシェイプを構築せぬよう胸ダーツは省き、ややナチュラルなシルエットにしつつもバックベルトを付けてデザイン的なアクセントと共にウエストラインも緩やかな絞りを感じさせてくれるようにしましょう。

カフはターンバック、背中はアクションプリーツを畳む事で機能性と共にスポーティーな要素が加味されますので こんなポジションでは如何でしょうか!
















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・・・・・オーバーコートに付けられるバックベルトは、左右脇よりのベルトを釦によってセンターで結合するスタイルが多いですね。
これがスポーツジャケット(ピンチバック)になると そのベルトは大抵身頃に縫い付けられ固定されています。

今回は敢えて釦結合無しのワンピース・バックベルト、そしてユトリを与えたナチュラルなシルエットをそのベルトで絞り込みます。
 ベルト自体もフラシにして(固定せず)後身頃の優雅なドレープを、この美しき生地が持つ妖艶なドレープを活かす事にしましょう。


仮縫いでは閉じてありますが、背中心にはインバーテッドプリーツが裾まで畳まれております。

このオーバーコートを見た時、前からの印象と、後ろから見た印象はガラッと変わるそのギャプこそが今回のポイントです!


ではじっくりとご覧下さいませ、とても魅力的なオーバーコートに仕立てあがりました。














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・・・・・寒く感じられる日も出始め、いよいよお仕立て上がりです。
ライニングはネイビーとグリーンによる交織のヴィスコースをお選びになりました。
丈は膝までありますので裾は表裏結合させず『フラシ』 にさせるのが理に適った丁寧な始末ながら、その分手間は増えます。

インバーテッドプリーツは多くの布を使うので、その分重くなります。
プリーツ内の奥で釦開閉する仕様もありますが、デメリットとして更なる重み、厚みも生じますので開閉は切らず、それなりに贅沢なプリーツ量を確保して素直でシンプルな仕上げにしています。
 これだけ開閉量があれば足さばきにも十分ですね。


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・・・・・オーバーコートは脱いで手持ちも想定されるため、内ポケットの中身がこぼれぬようフラップをお付けします。











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・・・・・リップルたる正にさざ波感、妖艶な光沢感は美しき光の陰影を投影します。
この生地のウエイトは、コーティングとしては中肉級ながら 最高のカシミアですから軽くて暖かい訳であり、セーブル君の性能も10%分は含まれているので+αですよ!













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・・・・・お仕立てを大変楽しみにお待ち下さっておりました。
この日、当店での 1st-BESPOKE SUIT を着てこられての御来店です。
オーバーコートですから インナーたる上着の型紙より導き出された設計(型紙)であるからこそ、マトリョーシカの様に完璧な相性が生まれるのです。
 であれば、仮縫い含めフィッティング確認は原型となるインナースーツにて。

御納品後はお手持ちの様々なスーツにも合わせてお楽しみ下さい。

1stスーツも随分と馴染んできており、K様色に染まりつつありますね。
とてもお似合いであり、キマっております!

http://dittos.seesaa.net/article/502852133.html
【 VINTAGE MOXON:K様のご注文 】











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・・・・・深く赤味の強いブラウン、バーガンディーをご所望にてお決め成さったそうです。
英国王はオックスブラッドで誂えられていましたね。
BESPOKEで誂えられたこの靴は、かの名店におられたM氏に御注文されたとの事です。
英国靴らしき顔立ち、クラシックですね。
















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・・・・・ではご試着頂きましょう。
内部芯も軟らかに、インナーのスーツが芯となり支えとなります。

動いてフィット感や機能性の確認です!


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・・・・・とても綺麗にフィットしていますね、当たり前ではありますが!
お仕立て上がりでプリーツの一時中綴じは解除済みですが、動かなければ開きません。
ここが大事です、例えば着用しただけでプリーツが開いてしまうという事は、その部位に対する必要距離が足りぬ証拠です。

動いてこそ襞が開き、機能として性能が発動されます。

(今回の場合は敢えて与えた過剰ユトリもあるので、それ自体も機能面への効果に繋がります。)


そのエレガントな後ろ姿は残念ながらご自身では見えませんが、、、。












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・・・・・この御納品日に際し このコートを意識して誂えられたハットとグローブ、これらもダークなネイビーで揃えられたとの事であり、とても光栄であり嬉しき気合で御座います。

折角持参したとの事でフルコーディネイトでご堪能も!

やはり帽子があると締りが違いますね。


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・・・・・K様、素敵です、、、、完璧な装い、これをイメージに周辺アイテムも揃えられ 此度コンプリートを迎えました。
グローブやハットは当然 このオーバーコート以外にも合わせ、活躍してくれる事も前提ながら、一つの重衣料に対し ここまでトータルで揃えられる拘りっぷりは流石であり、お気持ちも凄く分かります!


今月にはデビューを目論んだご着用予定があるそうです。
月末に向かい寒さも増すと思いますので是非ともデビューを飾ってくださいませ。
 素敵なご注文を誠に有難う御座いました。


















・・・・・如何でしたでしょうか。
やはりオーバーコートは男心をくすぐりますよね。

最近ではかなり久し振りにカシミアの出物仕入れが御座いました。
BESPOKEでは来冬への仕込みとなりますが、H.S ORDERでは年明けの一番寒い時期へ間に合いますので是非如何でしょうか。

 皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

今週も最後までお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。







posted by 水落 at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする