皆様 こんにちは。
今週の東京は最高気温20度越えが連日で 夏日さえ含まれるほどに上昇する予報です。
もう少し春の装いを楽しませてほしいですね、、、桜の開花も一気に進んでしまう事でしょう。
さて、今週はオタッキーな私の楽しみにお付き合い頂ければと思います!

1976
・・・・・プリンスがROYAL NAVY(王立海軍)へ5年間在籍されていた折、海軍提督の立場であり父君でもあるエディンバラ公が訪問された時の1コマです。
イギリスは日本と同様に島国のため海軍の歴史は古く、多くの国々では陸軍が序列の最上位になるそうですが、イギリスでは形式的とはいえ海軍が最上位の存在とされているそうです。
紳士服の発展におき 軍服の存在は絶対に欠かせません。
リアルな戦闘服だけではなく、セレモニーなどでのフォーマルウェアまで幅広く存在します。
今回はそんなミリタリーウェアより、今にも通ずる、いやむしろ市場に売っているものよりエレガントで魅力的(私にとって)、味わい深いトラウザースをご覧頂きます。

= VINTAGE ROYAL NAVY P/C WORKING DRESS TROUSERS =
・・・・・おそらく60年代から70年代初頭製との事です。
ワーキング⁉ ドレス!? 分かり辛いですよね。
専門の古着屋さん曰く、英国海軍にて支給されていたトラーザースであり 甲板作業時などにも穿かれていたであろうユーティリティーなポジションとの事です。
P/C とは素材であり、ポリエステルとコットンの混紡生地と成ります。
やや薄地で柔らかく、詳しき混率は分かりませんが とてもソフトで穿き心地良く、かつ このシルエットですから快適極まりないのです。
ポリ感さもほとんど感じません!

・・・・・NATOナンバー(13桁)もありますね。
このナンバーは国やアイテムなどで割り振られています。
このリアルな古着は私とほぼ同世代なのです!
軍服も進化を繰り返しますし、このポジションのトラウザースもディテールなどが変わって参りますので そういったディテールからも時代を逆算する事が出来ます。
(これはもうプロレベルですが、、、)

・・・・・とてもシンプルで簡易に仕立てられ、素材自体もポリ混ですから耐久性も高くて安い、洗濯にも強く 縮みすら抑える事が出来ます。
そういう意味で見ても大変 理に適ったアイテムであり、優れた商品開発でもあるユーティリティートラウザースな訳です。
尻ポケットは右側のみ、サッパリと片玉縁なあたりが よりGOOD!
そしてこのトラウザースはベルトレス スタイルであり、ベルトもブレイスも使用しませんのでサイドアジャスターでウエストサイズを調整できます。
このサイドアジャスターは初めて見ました!
かなり感激した事を覚えています。

・・・・・フロントは比翼仕立てですが、前立てすら付けず前端を三つ折り始末で薄くシンプルにサッパリ、そしてホールのある比翼布が前立て止めステッチで固定されます。
フロントの開き止まりも深くて 今は無きあるべき姿であると同時に機能を確りと尊重されている時代です。

・・・・・幅広で太目なウエストバンド、軍トラでは良く見受けられますね。
上前には持ち出しが付き、正に英国トラーザースの顔です。
ホールも無く、前カン⁉ でも下前バンドには釦が!

・・・・・これも初見ディテールでした!
持ち出しの比翼仕立て⁉ ナイスアイディアでありこれまた素晴らしいです。

・・・・・帯芯無しの仕立てであり、とてもソフトな穿き心地。
その帯(BAND)が二重になるので内側だけにホール、外側は蓋となり釦を隠します。
ただしデメリットもあります、控えがとられていないのでホールの付く内側だけ引っ張られて表から覗き見してしまいますし、表裏での帯生地が捻れます。
また、決して釦開閉がしやすい訳でもありません。
ですが、安く大量に必要であり 耐久性や性能自体も高くなければなりません。
そんな落としどころを考えれば採用するに相応しい仕立てであり、素晴らしいアイディアだと思います。

・・・・・官給品の類は基本前提として既製服でもあり、サイズ展開も広く 大量に生産されるものです。
そんな事もあり、その服のポジションによっては『ウエスト出し』というお直しなども前提とされていない作りになります。
写真で見る中心辺りにある縫い目が尻グリの縫い目なのですが、ワークウエアなどにみられる巻き縫いで余分縫代は勿論なく、ウエストバンド自体もセンター接ぎ自体が排除されています。
この個体は随分と綺麗でありつつ、感激して購入しましたが 本当はお腹周りが少しキツイ(汗)!
ウエスト調整出来れば良かったのですが、、、残念。
ですが本当に上手くバランスを取り、理に適った総合デザイン力の頗る高いアイテムである事に変わりはありません。
● 洗濯頻度も高く、耐久性と生地値安価を考えればポリ混は強し。
洗濯するからこそ金属を限りなく減らしてシンプルに、それらはバンドの持ち出しやサイドアジャスターの意匠にも見て取れます。
比翼の持ち出し含め、それら部分はスマートな『DRESS』という要素にマッチしますね。
● サイズ展開が豊富だからこそ サイズ調整という概念すら排除され、シンプルで丈夫な仕てられ方をしており、ポリ混生地と共に質実剛健な辺りは『WORK』という要素にマッチします。
こんな魅力的なミリタリーウェアですから是非自身のMYサイズで欲しくなってしまいます(笑)。
それが実際に既製服化まで行った BUSH JACKET だった訳ですね!

・・・・・昨年 仕立てちゃいました!
先の軍パンは裾幅25pで緩やかな美しいテーパード、私は24pにしておき緩やかなテーパード具合は尊重です。
生地は良いP/C生地が無く、、、適当にネットで探したらかなりお安く国産生地が出て参ります。
ですが『コレだ!』というのは 色、混率、ウエイト共になかったので 取り急ぎ300g以下でネイビー地を探しました。
ポリエステル65% 結論的に私の使ったこの生地自体はお勧めできません、、、他に良いのをまた探そう!

・・・・・バンドの持ち出しは2連釦でありつつも留め外し優先含め 貫通にしました。
BANDの接ぎ目を利用したシームホールと釦、フロント開閉は楽ちんにファスナー、帯芯は使用しませんが腰裏くらいは小奇麗に付けますよ。


・・・・・さて、感激したサイドアジャスターです。
先ず 既製品含めトラウザースのサイドアジャスターはウエストバンドに乗っかっているのが多く見受けられますが、これは低い股上にも関係があります。
そもそもハンド内には通常帯芯があり 絞り込むには矛盾が生じます。
この軍トラはそもそもソフトで帯芯無しですからその矛盾は無しです!
小さなシルバー色の金具が見えますが、日本では『小判カン』と言います。
アジャストベルトで巻かれているので金属露出も最小限です。

・・・・・このサイドアジャスターベルトは 帯自体を接ぎ足しで挟み込む事によりスマートに段差自体抑えられています。
ディテール自体は小ベルトとして独立した作りにより帯に縫い付ける事も可能ですが、その段差軽減 + スマートさ以外ではどんなメリットがあるのでしょうか。
それは 帯(ウエストバンド)は長い = 用尺を食う と言えます。
わざわざその長いパーツを取る(裁断する)為に確保する必要があります。
しかし、接ぎにより帯自体を分散すればパーツ自体が小さくなるので 大量生産では頗る効率の良いマーキング(型入れ・裁断・裁ち合わせ)に貢献すると言えるのですね。
そこまで考えているかは分かりませんが、、、単純な後付け式サイドアジャスターバンドより俄然スマートでドレッシーです!

・・・・・じゃーん、実は内側で釦留めされているのです。
釦留めは 留めるか否か、そのホールド力は抜群に良いのです。
自前は釦自体も碁石のような薄型で こういった用途に適する釦を使用しています。
この2つ穴13oボタンはBESPOKEでの上着に付けられる内ポケット用の釦、そしてトラウザースの比翼フロント釦などにも使用しています。
下の写真では 絞った時用の釦へとめた場合です。
2連で付いていますが、釦スタンス分が絞られる事になります。
ほんの少しで良ければ片側を、確り絞り込みたい時は両側でどうぞ!


・・・・・誂え服です、確りと調整出来るように尻繰り縫い目に縫代、そしてバンドにも縫代をつけ、スリットも欲しいよね!

・・・・・勿論膝裏なんて排除、ポテンシャルとなる余分縫代は必要箇所のみ、内・外脇の縫代は膝上のみ足せるよう縫代を内蔵。
前身頃には力芯として三角シック、股にはボロ隠し兼 股シックもね。
では早速穿いてみましょう!

・・・・・英国軍トラらしく股上は深め、シルエットは太目、特にバンドの幅広さに『らしさ』が出ますね。
チラッと小判カンが程好いアクセントにも!
こんな些細なギミックにマニア心もくすぐられたりするのです。

・・・・・もう上着の着用が厳しい盛夏でも清々しく穿く事が出来ます。
ポリ混なので汚れは付き辛く、落ちやすく、梅雨のシーズンでも気にしない!
強度もあるので薄地にしても大丈夫、家庭洗濯機で気兼ねなく洗う事が出来ます。
ポジションやディテールはお勧めなのですが、、、、
主体となる生地、お勧め出来得る良質なポリ混コットンを探してみますね。
勿論 お好みであればコットン100%からリネン、ウールでも!
ただし悪しからずBESPOKEでしか扱えませんのでご了承頂けましたら幸いです。
あ〜〜〜楽しかった!
洋服バカはストレス解消や趣味自体も洋服作りなのでした(笑)。
・・・・・如何でしたでしょうか。
それなりに学んだ仕立て職人であれば、見れば大抵のものは作る事が出来ます。
再現する事に当たり再発見やメリット・デメリットの明確性も上がりますし、この様に皆様へお見せできるサンプルにもなるのです。
皆様から見れば専門知識を持つ専門職種な私は良く知っていると思うかも知れませんが、実は全然まだまだであり知らない事だらけです。
だからそれも楽しく遣り甲斐に繋がります。
古着への研究はそんな夢が広がっているのですね。
今の時代でも色褪せる事なく、いやむしろ隅に追いやられてしまった様々なデザイン(仕様・ディテール)やスタイルをもっと学ぶべく精進致します。
これら経験は全て顧客様へのご注文に対し 必ずやエキスとなって注がれるのです!
では、今週は私の趣味⁉にもお付き合い頂きまして
誠に有難う御座いました。
皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。
・・・・・誠に恐縮ではございますが、来週のBLOG更新はお休みとさせて頂きます。
近々 朗報をお伝え出来るかも知れませんが、限られた時間の配分におき どうしても優先順位を動かさなければなりません。
次回は 4月8日(火)を予定しておりますので
どうか引き続きよろしくお願い申し上げます。