2014年08月19日

【 COAT < OVERCOAT @ 】


 こんにちは。
まだまだ暑さ厳しく、湿度も高いので過ごし辛いですね。
先週は神宮花火大会がありました。むなしく音だけ聞いておりましたが、、、。

今週より仕事がスタートされる方も多い事かと思います。








 さて、今週は久しぶりに技術的なお話をしたいと思います。




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ヘリンボーン柄のクラシックなオーバーコートを着た紳士、
ラペルには花を飾り、手にはグローブとステッキ、頭にはボーラーと 正に英国紳士といった感じです。












・・・・・スーツは基本的に三つ揃いが前提であり、昨今では上下のみの 2P-SUITS が主流と成っております。
本来では略式となる 2P-SUITS が政権を担っていると言えますね。

3P-SUITS のそれぞれアイテムですが、英国的な呼称では
上着から COAT ・ WAISTCOAT ・ TROUSERS となります。

 一般的に『 ジャケット 』と呼ばれる上着はコートと呼ばれ、そのコートの上に羽織るからこそ『 OVER COAT 』となります。



 であれば、そのオーバーコートはサイズ的な部分も含め、基本的には上着に準じているべきであり、共にインナーとアウターとしての相性がとても重要と言えます。
(オーバーコートと言っても、様々なスタイルやデザインがありますが、チェスターFコートやカバートコート等 比較的体のラインに合ったテーラードコートを前提にお話致します。)


 スーツは誂えたとしても、オーバーコートは既製品を着用されている方もいらっしゃる事と思います。

それら既製品は、どんなインナー(スーツ)が着用されるのか分かりません。当然色々な体形の方もおります。
 であれば、ある程度はどうしても『大は小を兼ねる』といった理論で設計されていなければ多くの人に着てもらう事は出来ません。

当然アームホールは大きく、深く、腕など上がりませんし
袖も直線的で太く、、、もともと手足の長くない日本人が自身の袖丈に合わせれば かなりアンバランスな袖になってしまう事も否めません。


 それらはシルエットやデザインバランス等にも言える事です。









【オーバーコートをTAILORで仕立てる】


 これはどういった事なのか、、、
その TAILOR では、スーツやジャケットをご注文下さった方々の型紙があります。

補正(仮縫い含む)を施し、その御注文主様の為だけに設計され 誂えられる服。
当然お好み的な要素も反映されております。



身長も様々、同じ身長でもそれぞれの腰位置は違いますよね。
他にもお痩せに成られていたり、お太りに成られていたり、
撫で肩や怒り肩、反身体や屈伸体、
例え同じ胸囲の方がおられたとしても、その胸の厚さや肩幅は違います。


そして、左右対称の身体をされている方は極稀です。
どちらかに傾いていたりします。どちらかの肩が下がっていれば、その歪みを支えようと腰の高さも高低差が付くものです。
(勿論個々での度合いの差や例外はあります。)


テニス等の様に 利き腕を酷使されるスポーツを長くされている・いた方は、当然腕の太さや胸の厚さまで左右違ったりもします。

その他、骨折された経験があったりと本当に様々であり、挙げていけばキリがありません。



それだけ人間の身体は複雑でもあり、十人十色という訳です。




どんなに素晴らしい生地であろうと、どんなにデザインや仕立てに拘ろうとも
身体に合っていなければ無意味であり、それら拘った仕立てでさえ そのポテンシャルが生きないという事に成ります。





 専門技術により苦労して作り上げられた型紙には、そのお客様の体系的な情報が隅々まで内蔵されております。



であれば、インナーと成るコート(ジャケット)の型紙から オーバーコートを導き出せば、自ずとそれら沢山の情報が予め詰まった型紙が自動的に引ける事に成ります。

それがTAILORでオーバーコートを誂えるという事です。


 適正なユトリを与えれば良いだけですね!
勿論様々なオーバーコートのスタイルもありますし、お客様のお好みもありますので
単純に言えば それらに応じてユトリ量を加味する訳です。

故に、採寸や仮縫い無しでも精度の高きオーバーコートを仕立てる事が可能であると言えます。
 ただ、そうはいっても 丈のバランスや身幅のユトリ感、デザインバランスなどはお好みもありますので、そういった部分を確認する作業を行う事は必要と成ります。




 この様に仕立てられたオーバーコートのインナーとアウターとしての関係は
正にパズルやブロックを組み上げるが如く 合致性の高いオーバーコートとなる事が御理解頂けますでしょうか。






 技術論は文字ばかりに成りますね、、、しかも分かり辛いかも知れませんがお付き合いくださいませ!!






 では、ここで BESPOKE のご注文による型紙展開を通じ、どんなに適合性が高いのかご覧頂きたいと思います。











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 先ずは、お客様の情報がふんだんに詰まった上着の型紙をトレース致します。


見え辛いですよね、、、すみません。上着の前身頃です。
(写真をクリックして頂くと拡大致しますので、宜しくお願い致します。)

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大体の輪郭がお分りに成るでしょうか。
型紙を構成する上で、欠かせぬ構築的な線があります。

縦方向である前中心線や、横方向のバスト、ウエスト、ヒップなどを構成する線ですね。










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上半身の部分です。
肩傾斜はそのままに、適切なユトリを与え
アームホールは当然少し下げ、幅も広くします。これら加減が重要です!

インナーに対し、肩線含め 首元の上部方向へも高さを足しています。
この足した分は着用し肩に乗れば、もう少しカマ深(アームホール)も落ちてくると言えます。
しかし、これはアウターである以上 インナーを覆うに必要な『外回り量』、そして『生地厚』などが加味されてもおりますので、足した分量そのまま落ちてくる訳でもありません。

アームホールの傾斜、胸幅、クリのカーブに伴うRのバランス。
お客様方には分かり辛いと思いますが、、、
ほぼ同じ線をトレース致します。どこを基準とするのか、それが大切です。



そうですね、、、ロシアのマトリョーシカ人形の様だと思って下さい。
人形をカパッと開けたら、少しだけ小さな同じ人形が出てくる! 

原型にのっとり、正確に縮小・拡大されているという事に近いです!!

腕の動きに対する追従性含めた機能性、インナーとの適合性
既成品や他店でオーバーコートを仕立てた場合、ここまで精度を追い掛ける事が出来る訳がありませんよね。

 しかし、デカければ問題も無い(表面化し辛い)、
先の人形に例えると、例えば3連で人形が内蔵されているとすれば、2番目の人形を抜き
一番大きな人形の中に、一番小さな人形が入っているという事です。

スペースはゆるゆるになりますので、中で小さな人形は随分遊べてしまうと言った所です。







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奥がフロント側に成ります。
手前側が脇線となります。
左には裾線が見えます。

どこもかしこも線が二重(二連)と成っているのが分かりますでしょうか。
インナーを覆うアウターの線が外側になります。

インナーであるコート(ジャケット)の
ウエスト位置やポケット位置等も綺麗に連動されます。

当たり前の事なのですが、インナーとアウターで、エレガントなウエストシェイプが適合していなければ どんなに台無しに成ってしまうでしょうか、、、。
見栄えも歴然として違ってまいります。










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はい、大体引けました。

これで大体ちょい膝上丈です。
ラペルはノッチですが、腰ポケットは冒頭のイラストの様にスラントのリクエストで御座います。

首元にネックポイントという重要なポイントがあるのですが、
設定の仕方により、同じ身幅だとしても随分着用感も変わる所です。

 色々と勉強や経験踏まえた事がこの型紙に良かれと思う塩梅で落とし込まれています。
勿論 お客様との打ち合わせの上での設計と成りますが、やはり私の提案的な要素も多分にある為、BESPOKEであれば仮縫いという行為において答え合わせをする運びと成ります。


これが HOUSE STYLE ORDER であれば、サンプルを着用して頂きますので、
そのご試着自体が仮縫いであり、そのサンプルの丈やユトリ感でご確認して頂く事に成ります。
 ただ、この時点でのご試着に付き、インナーは誂えでもアウターのサンプルは既製という事に成りますので、FITTING の適合性は良くありません。
故に、それがどの様な状態で、どの様に成るのか、、、分かり易くご説明させて頂く事も私の役目で御座います。











・・・・・・・・・今回の話題は文字ばかり、、、写真も見辛く、シロート様にはチンプンカンプンかも知れません(汗)!!

どうしても説明に多くの文字を有してしまいますので、2週に分け
前半戦はここまでとさせて頂き、来週完結する事と致します。

ご興味無い方には恐縮では御座いますが、、、宜しくお願い致します。






・・・・・・・・・何故 今回の様な話をいちいち一生懸命書いているのでしょう。

それは、皆様の多くがご存じない事だからです。
私はこれらを学んだ時、どんなに感動し衝撃を受けたでしょうか。

聞いてしまえば至極当然!! 当たり前と言える事ではあります。



オーバーコート自体のインナーにライナー付の物がありますね。
当たり前ですが、そのコートより導き出し設計されます。
でなければ上手く合体出来ませんよね!



 誂える事が一般的だった時代から、
どんどん機械化が進み、大量生産出来る様になり 既製服が台頭して参りました。


多くのメリットがあるからこそ、ここまで普及した訳ですが
逆に失ってしまった事も多く御座います。


 装う事を楽しみ、重要視される・出来る方々、
誂えるという事を尊重して下さる方々には、本来あるべき姿というものをお伝えしたいと思っているからです。


ユトリ多きカジュアルなAラインのコート等であれば、そんなに高度な適合性は必要ないとも言えます。

しかし、逆を言えば そんなAラインのコートでさえ この様に設計されているとしたら如何でしょうか。
見栄えから着用感、インナーとアウターのそれぞれの落ち着き方など全てが違って参ります。



 結論的には皆様の価値観の持ち方次第と成りますが、
御判断される為の材料と成る情報として少しでもお役に立てる事が出来ましたら
書かせて頂いた甲斐が御座います。


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 最後までお付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。


また来週も…
頑張って書きますので、是非宜しくお願い申し上げます。





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2014年03月04日

【 衿 A 】


 こんにちは。
先月 2月24日に 集英社様より 【 UOMO 4月号 】 が発売に成りました。

まだまだ寒いですが、もう春号です。

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ファッションという括りで見れば、もう何でも有です!
本当に様々な洋服、小物、様々なブランド、、、、洪水の様でお腹一杯に成りました!

デザインから着こなしまで本当に幅広く、ファッションを、そしてお洒落を楽しまれております。

私もお声掛け頂き、光栄にも載せて頂きました。
撮影の日、とても寒い中 トロピカルスーツで出向いた事を思い出します。
しかし、あんなに何枚も何枚も写真を撮り、掲載された写真の私は、、、、お恥ずかしばかりです。


30年後、今のファッションを振り返った時
どんな形容をされるのでしょうか。それはそれで楽しみではあります。

 皆様も宜しければ是非ご覧になってみて下さい!!














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 さて、今週は衿作りの続編を御紹介させて頂きます。
前回は地衿を作って身頃に付け、上衿掛けの手前まで進行致しました。
http://dittos.seesaa.net/article/386269701.html
( 衿 @ )

これから上衿(共生地)を、立体的になった地衿に据え付け、手縫いで縫い上げて参ります。










 先ずは上衿のパーツを残布より裁ち合わせします
柄があれば身頃の背中心(衿が折返って身頃と重なる位置)に合わせ、縦横の柄が合う位置でとります。
柄物でも無地物でも 生地方向は身頃の向きに合わせます。

生地の織りによっては天地違えば随分と光の反射と共に見え方が変わってしまいます。
上衿は折り返りますので、勿論返った状態で向きを合わせる訳です。

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大目に縫代・折代を付けて荒裁ちされた上衿です。

上端 これが衿のエッジライン(外枠の出来上り線)です。
横地を正確に合わせているのが分かりますね。
しかし、フラノ等の起毛系の場合は地の目が良く見えません。
その場合は、横糸を端から端まで通るまで抜いていき、裁ち揃えて横地合わせをします。


大まかに切躾(白糸の印)が打ってありますが、肩や折返り線を表しており、これがクセ取りを行う際に具合の目安になります。
また、上衿を地衿に設置する際には やはり目安と成りつつ、左右のバランス確認にも役立ちます。

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 以前にも書いた事がありますが、クセ取りとは 水・熱・圧力により生地の目を動かし成形する事です。

例えば、直角平行なウインドーペーン柄で考えると、直角で構成される四角形を平行四辺形に動かすというと分かり易いかも知れません。










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 ハイ、出来ました!
UFOの様な形に成ります。身体に、首に添う衿(地衿)の形状に合わせると こういう形であるという事です。

重要なのは、自身から見て縦地方向は常に並行で自身に対し直上である様にしなければ成りません。(赤色矢印が縦地方向であり、矢印と平行に地の目が走る様にクセ取りします。矢印・縦地の目が扇型に成らない様に!)

故に、縦地は元のままに、横地のみ移動させUFOの形状に動かします。
柄で考えると、直角の四角形が 平行四辺形に成ると言いましたが、部分によりその菱形具合の角度が違う事に成ります。

では、何故縦糸は基のままなのでしょう、、、!?  これにも確りと具体的な理由がありますが、図解無しで説明すると絶対に伝わり辛いので省きますね。
(ご興味ある方は是非店頭にてお尋ね下さいませ!)


上衿パーツの中腹 横方向に折山線(返り線)の切躾があり
この下側が衿腰部となります。
この衿腰部を伸ばすと より上衿掛けがスムーズになります。が、しなくても上手く掛けられるのであえてしません。





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 次に、エッジの部分は1縫代(0.7p)で折込みます。
勿論柄があれば地の目を揃えます。バーズアイであれば、鳥目の一列を拾って折ります。
これで準備OKです。

いよいよ地衿にかけます!












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・・・・ハイ、掛かりました。中間の写真が無いです、、、真剣に集中していると写真を撮る事を忘れてしまいます(汗)。 上衿掛けは結構神経使う工程です!

内回り・外回り・反ったりしているインカーブに合わせ、地衿に無理なきよう躾を順番に打ち、据えて参ります。

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・・・内回り・外回り、これはとても重要です。立体的な服とは何層もの積み重ねで出来ています。分かり易くは表地・芯・裏地といった具合ですね。
様々な部位を、身体を包み込む服を円柱と考える訳です。

 これは、車でいう内輪・外輪差も近いですね。
例えば、お札を綺麗に角を合わせながら 半分、更に半分と5回以上畳んでみて下さい。
1回目の畳みなら良いですが、それ以上は100%角がズレてしまいます。
 当たり前!? これが内回り・外回りであり様々な個所に考慮され、生かされています。

身頃の芯据えもそうですし、肩パット等を作る時もその考えが生かされますが、場合によっては その理論を逆に利用したりも致します。


 技術とは、親方に手法を習い それを真似ているだけでは ただの『組み立て』であり、一向に『洋服を仕立てている』という技術には成り得ないと思います。

何故!? どうしてそうするの!? 単純で、純粋で、、、これが一番大切な技術の習得という事かも知れません。勉強でもそうですが、基礎が確り出来ていれば幾らでも応用・発展が出来るのです。






話が少し逸れましたが、これが上衿掛けという工程です。
複雑な立体へと成形された地衿、これは前回ご説明した様に 織り芯のバイアス地の目を使うので馴染ませやすくはあります。

むしろ、その複雑な加減で立体に成形された地衿に対し、横地でとられた生地を馴染ませ、皺やツレ等が出ない様に上手く据える方が何倍も難しいと言えます。

 融通性が低いキッドモヘアやシルク、強撚糸系等の生地はより難しいですよ!!



あとは、据えた上衿を縫い止めて参ります。













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ラペルと上衿を繋ぐゴージライン、ここは【 ハシゴまつり 】という縫い方を使います。
拡大してみましょう!

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ハシゴ状に糸が渡っているのが見えるでしょうか。
少しずつ縫い進め、絞ります。

縫いが緩すぎると縫い目が笑ってしまいます。(パカッと離れる)
強く縫い過ぎると生地の地の目は歪み、ツレてしまいます。

据え具合もそうですが、『 丁度良い塩梅 』 これが手縫いの『 加減 』により行われています。











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エッジラインは、【 星縫い 】を施します。
飾りステッチ兼 エッジの固定であり、生地と芯とを止めています。


裏側にはカラークロスというバイアス地で フエルトの様な物が使われています。
カラークロスは、上衿のエッジの様に折代を取り 織り込んだりせずに裁ち切り(切りっ放し)で使います。

周りは全て【カラゲ縫い】で縫い止めて参ります。

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カラゲ縫いは、空(カラ)でも行いますが、解れ止めの効果を持たせた縫い方です。

折代を持たせず、切りっ放しである截ち切り線では解れてきてしまいますので この縫い方が使われます。

裁ち目を糸で巻き込む様に、そして止め付ける生地をすくいながら縫います。


刻みの角はチョン丸に成形。
刻み部から、裏側に折り返った共生地部分をヒゲと言いますが、
これは大手術!?(大きな補正:極端に体形が変わった方が着用する場合など、仕立て直し等のレベルで行う直し)で衿のサイズが変わる場合、対応出来る様に大目に残してある訳です。

トラウザースの尻縫い目、ウエストを調整できる様に既製服でも縫代が大目に付けてありますね! 用途は同じで御座います。











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出来上がりです!!

地衿と上衿のマッチング、そして衿として首(シャツのカラー)に程好く沿うのが望ましい衿作りです。
地の目も自然で微塵の歪みも無く安定しています。

ラペルの返りに繋がる極上の衿作りが出来上がりました!!



弊店では、ハンドメイドである以上 接着芯などは一切使いません。
それこそ生地の素で持っている風合い、そして融通性やその個性までをも尊重するからこそです。

 大量生産を前提に考えれば、それこそこんなに技術的な工程含め、手縫いなど手間暇をかけられません。 という事は、何かを犠牲にしなければ成りません。
ただ、犠牲伴うが故 お値段もお安くなり、早く出来る事もメリットとなる訳です。


大量生産=効率化 であると言えなくもありません。

本来あるべき手作りの技を、どう工程分解し、簡略化・分業化、そしてムラ無く画一的に作れるか。
ある意味では研究が積み重ねられて 今ある大量生産に伴う既製服やそれに近いオーダー服があります。


 では、品質という仕立てのステージを上げる為にはどうすれば良いのか、
単純に今まで辿ってきた道を逆行します。


そんな単純な事柄から設定させて頂いたのが
HOUSE STYLE ORDER の部分的なハンドメイドOP でもあります。

BESPOKE ORDER によるフルハンドメイド、、、、
何故その技術を使い仕立てられているのか、理由が確りあるからです。





 そして私が一番感動するのは、感謝と共に先人達の技術による軌跡です。
技術である以上は発展もあります。
生地の移り変わり、服としての価値観の持たれ方などによっても、伴う様に技術は発展し 移り変わっていかなければ成りません。

しかし、根底と成る仕立て術は 大きく変わる事がありません。
多分変える事が出来ても また元に戻ってきて、「やっぱり、、、」と気付くのではないでしょうか。その位の根本的な完成度を誇っていると思います。



そういった見方をすれば、イギリス流、イタリア流、日本流、、そんな括りはとても小さいとも言えます。
技術の答えは一つでは無く、価値観により何通りもの答えがあると言えます。

だからこそ難しくもあり、楽しくもあるのが技術です。











・・・・・・・・・・・如何でしたでしょうか。
どうも技術的な話題は独りよがりに成り易いですが、

何でもそうだと思いますが、物事にはステージというものが存在し付きまといます。
そのステージをほんの少しでもお伝え出来る事が出来ましたら幸いで御座います。










 流石にそろそろ春が恋しく成って参りました。
コートを着ずとも、スーツ姿で丁度良い春。

是非 軽やかな装いをイメージされ 素敵な春夏用の誂えを楽しまれては如何でしょうか。

皆様のお越しを心より お待ち申し上げております。

 今週も誠に有難う御座いました。






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2014年01月28日

【 衿 @ 】


 こんにちは。
年始の御挨拶がつい先日の様に思いますが、1月もそろそろ終わりです。

まだ寒い日はもう少し続く事と思いますが、少し寒さが和らぐ日も御座いますね。

先日、光栄にもある雑誌社から撮影の依頼を頂戴致しました。大抵はお店(自店)の中での撮影が多いですが、今回の企画は複数人で一緒にスタジオで撮影との企画だそうです。

その雑誌が発売される時期や内容を考えれば、当然 もう春号です!
この寒い中ではありますが、ペラペラのウールトロピカル・スーツで出向きました。
 上にコートを着用の上で向いましたが、移動の時、そして自店にいる時も 流石にかなり寒かったです(汗)!!


スタジオでは、同業の有田氏、根本氏と3人で仲良く(笑)の撮影でした! それぞれ個性が違いますので三者三様ですよ。
詳細につきましては、また改めてご連絡させて頂ければと思います。














 さて、今週は分かり辛いと不人気ではありますが
久しぶりに技術のお話をさせて頂ければと思います。




 弊店の HOUSE STYLE ORDER では、より高品質なスーツをお求めの方々に応えるべく
BESPOKEで行われるフルハンドメイドとほぼ同様の技術によるお仕立てを、オプションとは成りますが部分的に御用意させて頂いております。

上着では仕立ての『キモ』となるのは、やはり衿、肩、袖付けと言えます。
(まぁ、芯据え、ポケット、クセ取り等もそうですし キリがありませんが、、、。)

袖付に際し、H.S.ORDER においては肩作りに直結していますので、ある意味では双方連動したお仕立てと成りますので、一括りの OP と成ります。





その中で、今回は2回に分けて【 衿作り 】を御説明させて頂ければと思います。





 御紹介する内容は、私が普段 BESPOKE で行っている事です。
これとほぼ同等の事を『 衿ハンドOP 』では行っているという事に成ります。

もともとを考えれば、全て手作りしか御座いませんでした。
大量生産を念頭に置けば機械化含め合理化が進むわけですが、やはり『手』でしか到達出来ないステージというものが存在致します。











 先ず上着のゴージラインを境に、
上を『 上衿 』、下を『 下衿 』と呼ばれたりします。 下衿とはラペルの事ですね。

その上衿とは、更に地衿・上衿と本来区別されます。

『 地衿 』とは、衿の中に入る芯、そして裏側と成るカラークロス(フエルトの様なもの)が主体と成る衿の土台の事を指します。

その土台があり、その土台に BODY と同じ生地を縫い付けて行く訳ですが、その共地(BODYと同じ生地)の事を『 上衿 』と指します。

故に、地衿作り → 上衿掛け となって 初めて衿が出来上がります。

本当にお安い既製服などでは、本来地衿である裏側の生地に接着芯を貼り、表側に来る上衿と先に合体させてから BODY に付けられます。

 衿の作り方だけでみても本当に様々なやり方があります。
それらは当然ながら 労力(時間・コスト)、技術、品質、身体への馴染み(着心地)が大いに変わります。

下を見ればキリがありませんが、これからご紹介する作り方は本当に古くから行われてきたハンドメイド・テーラーリングです。
 多少のやり方に違いはあれど、逆を言えばこれ以上がありません。





 では、早速参りましょう。













中に入る『 芯 』、これは 高級なアイリッシュリネン です。
麻織物をバイアス(生地の縦・横方向に対し、斜めの方向を指します。)で使用する事により、グニャグニャとゴムの様に融通性が高く いくらでも成形が効くのが特徴です。
 故に 昔はエラスティックからくる『 エラス 』とも呼ばれていました。



その融通性高き芯に追従出来る様、カラークロスも同じくバイアス方向で その生地を使用します。
衿にも部分的には、その特性である『 伸び=動き 』を止める必要がある部分もあり、
伸び止めや力芯として更に芯も増されて使います。




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はい、有名な『 ハ刺し 』です。見るが如く、ハの字に掬い縫いするからですね。
基本的にハ刺しとは、A と B(とC等)というもの同士を合体させる為(一体化させる)に 双方を縫い止める行為であり、掬い縫いの事を言います。

更には、その縫い止める行為に対し、部位やパーツによって様々な工夫やテクニックを用い、様々な効果を意図して持たせる訳ですが これがとても重要な要素です。
この辺はいつか詳しくお話する事に致しましょう。


しかし、とても地味な作業でもあります。


部位により 縫い密度、縫い方向を変えていますが、別に変えなくてもイケます!
イケますが、変えるのは狙う理由があるからという事ですね。

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やっとハ刺しが終わりそうですよ!






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出来ました! 増芯もサンドイッチされており、衿芯の特徴をコントロール下においている状態と成ります。
因みに、下側が BODY に縫われる側です。

あえて裏のカラークロスが芯のエッジからはみ出していますね。
芯の裁ち端から解れた麻芯のケバが飛び出たりするのを防ぐ為となります。

衿芯の赤矢印 これが『 返り線 』であり、折山線という事に成ります。
(返り線から下側は衿腰と呼びます。)

この返り線上に(折山線)、先ずは芯とカラークロスを止める為に、躾により縫い止めてあり、それからハ刺しを施していくわけです。
ここ、後で関係してくるので 良く見ておいて下さい!!

増芯には、後付けでも先付けでも効果は基本的に同じです。あとは何を狙ってそれを増すのかという事で変わります。
先付の場合は現時点でセットします。







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出来上がった地衿を簡単にクセ取りし、BODY に乗せ、先ずは地衿のみ BODY に付けてしまいます。

BODY に付け、ラペルやネック周りをプレスし安定させたところです!
インカーブ・アウトカーブ、そして伸びる所、縮める所 首周りの立体加減は本当に複雑です。
この複雑怪奇な部分に対し、上手く馴染ませようとすれば やはりバイアスの効果が無ければ厳しいでしょう。


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また、かなり大きな衿と成っていますが
周りには裁ち落す予備分が付いているのです。大きめに作り、平面では無く 立体と成った物に対し 一番の理想線を導き出し、そこでカットする事が狙いです。

ある程度の動きは経験により計算がたちますので導けますが、ここまで立体に成りますと計算による誤差が発生します。
 それを補う為にも この様なやり方をする訳ですね。








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衿が首に添う為には 大体写真の様に湾曲した形に成形されます。
この写真も良く覚えておいて下さい! 次回の話ではとてもリンクする、しなければ成らない形状と成ります。



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指の所を見て下さい!
最初の写真を思い出して下さい。地衿をハ刺しする前は当然平面でした。

返り線に芯とカラークロスを縫い止めていた 赤矢印部分の躾糸。
ピンと平らに張っていた糸が、ここまで来ると こんなに糸に緩みが生じています。

単純な事です。 返り線の距離がこれだけ縮まっている事を意味します。









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地衿を 着用されている形状にセットした上で 『 出来上がり線=裁ち落とし線 』 を引いて参ります。
上衿幅、刻み、各カーブ線の具合を良く確認!!



引き終わりましたら、必ずトルソーに着せて また確認!

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左右対称バランスなのは当たり前、デザイン的な線のバランス(ヘコミやハラミは?)は?

前から肩、後ろにかけての線のつながりは??

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ほんの ちょっち修正!!
こんなの、、、完成してしまえば殆ど分からないでしょう。

ですが、この数ミリが重要な拘りでもあり、私にとってはとても大切なのです。
私の頭の中には理想形態が確りあるからです。
当然 衿周りは上着の顔でもありますからね!








線が上手く引けましたら、その線通り慎重にカット!
刻みの角は落とし、、、、ハイ 完成です。

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これで衿の土台と成る地衿が無事に付きました。


しかし、地衿のエッジの部分までハ刺しが施されていませんね。
不思議に思われた方、素晴らしい洞察力です!!


これはですね、、、
この隙間に、上衿の縫代を差し込む為 あえて隙間を開けています。
故に縫代幅分だけあえて指していないという事に成ります。



・・・・ハ刺しの細かさ、糸の強さ、指し方、型の取り方、増芯の種類、加え方など 技術には様々な手法があります。

技術は一つでは無く、正解!? というのも考えや価値観により変わります。
私が理想とする衿の FITTING、そしてデザイン、強弱などバランスを踏まえた上での理想像があり、そこへ到達する為に どの様な技術を用いるか、、、これに尽きる訳です。

だからこそ技術は難しくもあり、楽しくもある。 (少し自己満もある(笑))






 次は出来上がった地衿に対し、共地である『 上衿 』を据える工程と成ります。
その内に続きを書きますので、お付き合い頂けましたら幸いで御座います。















・・・・・・・・如何でしたでしょうか。
自分なりには噛み砕いて書いているつもりですが、やはり分かり辛いかも知れませんね。

いろいろ考えて作っているんだな〜 くらいで結構です!


プロとして、お代を自信持って頂けるという事が どれだけ大変で難しい事なのか
自分自身深く理解しているつもりです。日々精進に他なりません。

また、技術は進化するものであり、そうでなければ成りません。
Dittos を開店し、5年目に入りました。

 この約4年の中で、裁断含めいくつかの改善や『 気付き 』、そして『 ひらめき 』がありました。そこに発展があります。

という事は、自身で喜んで着ている自分の服も、5年前、10年前の技術は古いとも言えます。(ここまで来れば、そんなに大きな違いはありませんが、、、。)

技術者は一生勉強 というのは、こういう事だと思います。
100点を狙っても、100点が取れない。 必ず何かある! それを次に生かす。

言い換えれば、自己満足してしまえば そこがある意味ゴールと成ってしまうと言えるでしょう。


 BESPOKE で得た経験値が、HOUSE STYLE ORDER へ還元されます。
こちらも進化しています。


Dittos ならではの、Dittos でしか味わえない誂え服を 少しでも多くの方々へお届け出来る様に頑張りますので、どうかこれからも宜しくお願い致します。














・・・・・・・・・もう直ぐ 2月

まだまだ寒いですが、お店の方は2月より生地なども春夏に切り替えます。
今年買い付けた素晴らしいネタも御座いますので、徐々にご紹介させて頂ければと思います。

 今月末には新作タイも届きますし、シャツ地含めシーズンファブリックも2月位から届き始めるでしょう。




春・秋がベストシーズンと成る 弊店5周年記念生地 
そろそろ そのベストシーズンを迎えます。

これ以上の生地はそうそう無いです。
拘りをもってわざわざ別注し、それを仕立てている私が言うのですから間違いありません!! (勿論、我が子可愛さも多分に含まれますが(汗))

これから色々と具体的に御紹介させて頂く予定です。
http://dittos.seesaa.net/article/369343341.html
http://dittos.seesaa.net/article/369975398.html


現在 一番人気は、ダークネイビーのプレーンなウーステッドです。
それからシャークスキン、ミッドナイトブルーの順番ですね!

 大変光栄にも この計5種より 既に3種・3着目をお考えの方もおります。
着て頂ければ この子達の説得力が、、、、お分り頂ける事と思います!!








 では、今週も誠に有難う御座いました。
また来週も宜しくお願い致します。






posted by 水落 at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 仕立てについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする