2025年03月25日

【 VINTAGE:ROYAL NAVY - WORK DRESS TROUSERS 】






 皆様 こんにちは。
今週の東京は最高気温20度越えが連日で 夏日さえ含まれるほどに上昇する予報です。
もう少し春の装いを楽しませてほしいですね、、、桜の開花も一気に進んでしまう事でしょう。




 さて、今週はオタッキーな私の楽しみにお付き合い頂ければと思います!





















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・・・・・プリンスがROYAL NAVY(王立海軍)へ5年間在籍されていた折、海軍提督の立場であり父君でもあるエディンバラ公が訪問された時の1コマです。

イギリスは日本と同様に島国のため海軍の歴史は古く、多くの国々では陸軍が序列の最上位になるそうですが、イギリスでは形式的とはいえ海軍が最上位の存在とされているそうです。



 紳士服の発展におき 軍服の存在は絶対に欠かせません。
リアルな戦闘服だけではなく、セレモニーなどでのフォーマルウェアまで幅広く存在します。

今回はそんなミリタリーウェアより、今にも通ずる、いやむしろ市場に売っているものよりエレガントで魅力的(私にとって)、味わい深いトラウザースをご覧頂きます。



















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= VINTAGE ROYAL NAVY P/C WORKING DRESS TROUSERS =



・・・・・おそらく60年代から70年代初頭製との事です。
ワーキング⁉ ドレス!? 分かり辛いですよね。
専門の古着屋さん曰く、英国海軍にて支給されていたトラーザースであり 甲板作業時などにも穿かれていたであろうユーティリティーなポジションとの事です。


P/C とは素材であり、ポリエステルとコットンの混紡生地と成ります。
やや薄地で柔らかく、詳しき混率は分かりませんが とてもソフトで穿き心地良く、かつ このシルエットですから快適極まりないのです。
 ポリ感さもほとんど感じません!















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・・・・・NATOナンバー(13桁)もありますね。
このナンバーは国やアイテムなどで割り振られています。

このリアルな古着は私とほぼ同世代なのです!

軍服も進化を繰り返しますし、このポジションのトラウザースもディテールなどが変わって参りますので そういったディテールからも時代を逆算する事が出来ます。
(これはもうプロレベルですが、、、)














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・・・・・とてもシンプルで簡易に仕立てられ、素材自体もポリ混ですから耐久性も高くて安い、洗濯にも強く 縮みすら抑える事が出来ます。
 そういう意味で見ても大変 理に適ったアイテムであり、優れた商品開発でもあるユーティリティートラウザースな訳です。

尻ポケットは右側のみ、サッパリと片玉縁なあたりが よりGOOD!
そしてこのトラウザースはベルトレス スタイルであり、ベルトもブレイスも使用しませんのでサイドアジャスターでウエストサイズを調整できます。

このサイドアジャスターは初めて見ました!
かなり感激した事を覚えています。















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・・・・・フロントは比翼仕立てですが、前立てすら付けず前端を三つ折り始末で薄くシンプルにサッパリ、そしてホールのある比翼布が前立て止めステッチで固定されます。
 フロントの開き止まりも深くて 今は無きあるべき姿であると同時に機能を確りと尊重されている時代です。

















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・・・・・幅広で太目なウエストバンド、軍トラでは良く見受けられますね。
上前には持ち出しが付き、正に英国トラーザースの顔です。

ホールも無く、前カン⁉ でも下前バンドには釦が!












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・・・・・これも初見ディテールでした!
持ち出しの比翼仕立て⁉ ナイスアイディアでありこれまた素晴らしいです。















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・・・・・帯芯無しの仕立てであり、とてもソフトな穿き心地。
その帯(BAND)が二重になるので内側だけにホール、外側は蓋となり釦を隠します。

ただしデメリットもあります、控えがとられていないのでホールの付く内側だけ引っ張られて表から覗き見してしまいますし、表裏での帯生地が捻れます。
また、決して釦開閉がしやすい訳でもありません。
 ですが、安く大量に必要であり 耐久性や性能自体も高くなければなりません。
そんな落としどころを考えれば採用するに相応しい仕立てであり、素晴らしいアイディアだと思います。















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・・・・・官給品の類は基本前提として既製服でもあり、サイズ展開も広く 大量に生産されるものです。
そんな事もあり、その服のポジションによっては『ウエスト出し』というお直しなども前提とされていない作りになります。

写真で見る中心辺りにある縫い目が尻グリの縫い目なのですが、ワークウエアなどにみられる巻き縫いで余分縫代は勿論なく、ウエストバンド自体もセンター接ぎ自体が排除されています。
 この個体は随分と綺麗でありつつ、感激して購入しましたが 本当はお腹周りが少しキツイ(汗)!
ウエスト調整出来れば良かったのですが、、、残念。


 ですが本当に上手くバランスを取り、理に適った総合デザイン力の頗る高いアイテムである事に変わりはありません。

● 洗濯頻度も高く、耐久性と生地値安価を考えればポリ混は強し。
洗濯するからこそ金属を限りなく減らしてシンプルに、それらはバンドの持ち出しやサイドアジャスターの意匠にも見て取れます。
 比翼の持ち出し含め、それら部分はスマートな『DRESS』という要素にマッチしますね。

● サイズ展開が豊富だからこそ サイズ調整という概念すら排除され、シンプルで丈夫な仕てられ方をしており、ポリ混生地と共に質実剛健な辺りは『WORK』という要素にマッチします。




こんな魅力的なミリタリーウェアですから是非自身のMYサイズで欲しくなってしまいます(笑)。
 それが実際に既製服化まで行った BUSH JACKET だった訳ですね!






















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・・・・・昨年 仕立てちゃいました!

先の軍パンは裾幅25pで緩やかな美しいテーパード、私は24pにしておき緩やかなテーパード具合は尊重です。

生地は良いP/C生地が無く、、、適当にネットで探したらかなりお安く国産生地が出て参ります。
ですが『コレだ!』というのは 色、混率、ウエイト共になかったので 取り急ぎ300g以下でネイビー地を探しました。
 ポリエステル65% 結論的に私の使ったこの生地自体はお勧めできません、、、他に良いのをまた探そう!














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・・・・・バンドの持ち出しは2連釦でありつつも留め外し優先含め 貫通にしました。
BANDの接ぎ目を利用したシームホールと釦、フロント開閉は楽ちんにファスナー、帯芯は使用しませんが腰裏くらいは小奇麗に付けますよ。


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・・・・・さて、感激したサイドアジャスターです。
先ず 既製品含めトラウザースのサイドアジャスターはウエストバンドに乗っかっているのが多く見受けられますが、これは低い股上にも関係があります。
 そもそもハンド内には通常帯芯があり 絞り込むには矛盾が生じます。
この軍トラはそもそもソフトで帯芯無しですからその矛盾は無しです!

小さなシルバー色の金具が見えますが、日本では『小判カン』と言います。
アジャストベルトで巻かれているので金属露出も最小限です。


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・・・・・このサイドアジャスターベルトは 帯自体を接ぎ足しで挟み込む事によりスマートに段差自体抑えられています。
ディテール自体は小ベルトとして独立した作りにより帯に縫い付ける事も可能ですが、その段差軽減 + スマートさ以外ではどんなメリットがあるのでしょうか。
 それは 帯(ウエストバンド)は長い = 用尺を食う と言えます。
わざわざその長いパーツを取る(裁断する)為に確保する必要があります。

しかし、接ぎにより帯自体を分散すればパーツ自体が小さくなるので 大量生産では頗る効率の良いマーキング(型入れ・裁断・裁ち合わせ)に貢献すると言えるのですね。
 そこまで考えているかは分かりませんが、、、単純な後付け式サイドアジャスターバンドより俄然スマートでドレッシーです!
















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・・・・・じゃーん、実は内側で釦留めされているのです。
釦留めは 留めるか否か、そのホールド力は抜群に良いのです。
 自前は釦自体も碁石のような薄型で こういった用途に適する釦を使用しています。

この2つ穴13oボタンはBESPOKEでの上着に付けられる内ポケット用の釦、そしてトラウザースの比翼フロント釦などにも使用しています。

下の写真では 絞った時用の釦へとめた場合です。
2連で付いていますが、釦スタンス分が絞られる事になります。
 ほんの少しで良ければ片側を、確り絞り込みたい時は両側でどうぞ!


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・・・・・誂え服です、確りと調整出来るように尻繰り縫い目に縫代、そしてバンドにも縫代をつけ、スリットも欲しいよね!














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・・・・・勿論膝裏なんて排除、ポテンシャルとなる余分縫代は必要箇所のみ、内・外脇の縫代は膝上のみ足せるよう縫代を内蔵。
前身頃には力芯として三角シック、股にはボロ隠し兼 股シックもね。


では早速穿いてみましょう!













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・・・・・英国軍トラらしく股上は深め、シルエットは太目、特にバンドの幅広さに『らしさ』が出ますね。
 チラッと小判カンが程好いアクセントにも!
こんな些細なギミックにマニア心もくすぐられたりするのです。
















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・・・・・もう上着の着用が厳しい盛夏でも清々しく穿く事が出来ます。
ポリ混なので汚れは付き辛く、落ちやすく、梅雨のシーズンでも気にしない!
強度もあるので薄地にしても大丈夫、家庭洗濯機で気兼ねなく洗う事が出来ます。

ポジションやディテールはお勧めなのですが、、、、
主体となる生地、お勧め出来得る良質なポリ混コットンを探してみますね。
 勿論 お好みであればコットン100%からリネン、ウールでも!
ただし悪しからずBESPOKEでしか扱えませんのでご了承頂けましたら幸いです。




あ〜〜〜楽しかった!
洋服バカはストレス解消や趣味自体も洋服作りなのでした(笑)。








・・・・・如何でしたでしょうか。
それなりに学んだ仕立て職人であれば、見れば大抵のものは作る事が出来ます。
再現する事に当たり再発見やメリット・デメリットの明確性も上がりますし、この様に皆様へお見せできるサンプルにもなるのです。

 皆様から見れば専門知識を持つ専門職種な私は良く知っていると思うかも知れませんが、実は全然まだまだであり知らない事だらけです。
だからそれも楽しく遣り甲斐に繋がります。

古着への研究はそんな夢が広がっているのですね。

今の時代でも色褪せる事なく、いやむしろ隅に追いやられてしまった様々なデザイン(仕様・ディテール)やスタイルをもっと学ぶべく精進致します。
 これら経験は全て顧客様へのご注文に対し 必ずやエキスとなって注がれるのです!



 では、今週は私の趣味⁉にもお付き合い頂きまして
誠に有難う御座いました。

皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。












・・・・・誠に恐縮ではございますが、来週のBLOG更新はお休みとさせて頂きます。
近々 朗報をお伝え出来るかも知れませんが、限られた時間の配分におき どうしても優先順位を動かさなければなりません。

次回は 4月8日(火)を予定しておりますので
どうか引き続きよろしくお願い申し上げます。








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2025年03月18日

【 キツネさんより 春夏のお勧めファブリック 】





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・・・・・皆様 こんにちは。
三寒四温な時期を経て 明後日には『春分の日』を迎えます。

3月も後半となり 気温は20度レベルに差し掛かるとかなり温かく感じられますので この時期は服選びが難しい時期ですよね。
 早めに春夏ものを仕込んで下さった顧客様方の仮縫いや御納品も始まっております。



今週は FOX BROTHERS より、今期春夏用にデビューの新しいコレクションと共に、定番地からもお勧めな生地をご紹介させて頂きたいと思います。




















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≪ MIDSUMMER FOX ≫



・・・・・こちらは 2025 SS にデビューとなる新しいコレクションで御座います。
夏真っ盛り、、、そのままのネーミングにあまり考えたくないような気も致しますが、せめて装いの上では気分を盛り上げて参りましょう。











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・・・・・春夏地には欠かせぬリネンをウールとブレンドして互いの良さを引き出しあった混紡のスーチングとなります。

特筆すべきは ツイル である事!
涼しさを求めれば綾織りより やはり通気性の良い平織地になりますが、そこはダグラス社長率いるFOX社ですから狙い目も違うのでしょう。










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・・・・・リネンが醸し出す素朴感がとても良い感じ、ウールの混紡されたツイル地ですから 日本では春秋メインでお考え頂けると良いでしょう。

こんな素敵な生地でブレザーも欲しくなってしまいますね。
確りとしていますからODD TROUSERS にもお勧めです!


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51% WOOL

49% LINEN


230/260g



・・・・・このMIDSUMMER FOXは大きく2種に分かれ展開されています。
先ずは欠かせぬ平織地ですが、全10色の展開です。

定番のダーク系だけではなく、鮮やかな軽いトーンも揃います!

結構ライトなウエイトですし 平織地ですから涼しさを優先すればコチラに軍配が上がります。
 生地が薄くなれば皴も目立つところ、ウールをブレンドする事により柔軟性が加わりつつ、復元力も持ち合わせていますので 入った皴は一晩吊るしておけば3割程度は復活しますよ!


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56% WOOL

44% LINEN


320/350g




・・・・・先にご覧頂いたネイビー地のツイル、それがこちらのシリーズとなります。
ウール比率がやや高く、ウエイトだけで見れば十分に確りとした存在感です。

綾織りとしての特徴である艶感はかなり抑えられ、こちらもリネンのもつ素朴さが良い感じで表現されています。

ツイルの320g超えは都会の日中ミッドサマーには厳しさもあるでしょう。
故に ご旅行先など避暑地や夕暮れ以降に如何でしょうか。
 この織り、そしてこのウエイトでなければならぬ魅力があるからこそ 自信もって企画されているのです。

先に申したように、春秋メインで考えるのであれば かなりお勧めなシリーズです。


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・・・・・これらはスーチングですからODD JKからODD TRに至るまで幅広くご検討頂けますね。
リネンの放熱効果を頼りに スポーツ(カジュアル)、リゾート系にもマッチしますので是非ご覧頂けましたら幸いです。


 では次に、今期 春夏を見越して私の仕込んでおいた別の FOX BROTHERS をご覧いただきましょう。
















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・・・・・欠かせぬグレーのオッド・トラウザース、春夏用ですしサープラスなオフィサートラウザース宜しく 太くてゆったりとしたシルエットにて!

単純ソリッドは手持ちもありますので次の一手は、、、⁉










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≪ FOX AIR ≫



100% WOOL

285/315g




・・・・・FOX社の展開する フレスコ地 のシリーズです。
少し前にご紹介させて頂きました GOLDEN FOX もフレスコ地ですが、あちらはFOX社の展開する最薄なフレスコのシリーズでした。

フレスコは強撚糸を使った平織地であり、皴に強めでハリコシも持ち合わせます。
ザラッとした触り心地は肌離れも良く、通気性に特化した織り地となります。

この FOX AIR は FOX JOURNEY や FOX CITY などの企画でも展開されておりましたのでGOLDEN FOXを引き継いだ 2-PLY の定番的なフレスコと言えますね。











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・・・・・吟味を重ね 今回選んだのはド定番な古典柄でもある 『 ハウンドトゥース 』です!

ベーシックで言えばモノトーンな配色となりますが、それだとコントラストが強過ぎて目がチカチカしますから個人的にはあまり好みではありません。
逆にダークグレーの様にコントラストが弱まれば格子柄感が薄れてしまいますので、このミッドグレーが私にとって丁度良い塩梅だったのです。

細かな小格子柄ですから、ソリッドに比べて 存在感を感じられます。
とは言え、離れれば無地範疇に溶け込んでしまいますので 柄物という事に躊躇する事無く幅広く合わせられます。
よりスポーティーでオッドアイテムにも大変お勧めですよ!

ハウンドツゥース柄だけでも これだけ色バリエーションがありますので選びたい放題ですね。


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・・・・・裾は折り返し付きですが、前後で3pの傾斜が付けられています。
この有無は絶大であり、後ほど着用写真で具合もご覧下さいませ。










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・・・・・この日は好天に恵まれ 日中は18度まで上がりました。
そろそろデビューをとばかりに履いてみました。


平織特有のマットで素朴な感じが良いのです。
強撚糸によるハリコシもあるので フワッとした軽い着心地がご堪能頂けます。

IRISH LINENのスーツをバラシて、はたまた BUSH JACKET にも相性抜群です。
 当然見越しておりますゆえ!


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SPENCE BRYSON


TROPICAL

370g




【 LINEN SUITS 】



・・・・・トラーザースを変えるだけで随分とリラックスしたスタイルとして落ち着きます。
共に平織で素朴な顔立ち、パワーバランスもボチボチに相性はGOODです!










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・・・・・このトロピカルシリーズは不朽の定番ながら、370gですからミッドサマーには厳しいですね。
ですから もうそろそろ着始めましょう! 暑く成り過ぎる時期まで、、、そしてまた秋口に再登場です。


因みに この上着は 100% リネンですね。
シワシワに成りますし、それが魅力でもあるのです!
 また、その皴の入り方がウエイトにより まるで違いますので、、、拘るお好きな方々はやはりトロピカルを選ばれます。
一旦入った皴はプレスをしない限り皴のまま、これがリネンです。
履き込んだジーンズの様にその皴から退色や擦れなどエイジングが進むのです!

逆に今回ご紹介した MIDSUMMER FOX は約半分がウールですから着心地自体ももう少しソフトでリネンらしい清涼感と皴は十分に楽しめます。
楽しめつつ、ウールによりある程度皴を抑えつつも 入った皴は多少復元されるのです。














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・・・・・折り返しの裾上げに付き、一般的には脇の縫い目に対して直角に上げられます。
筒に対し、単純に考えれば斜めに折る事は不可能ですよね。
それを可能にするのが技術でもある訳です!

これは前後3pの傾斜が付いていますが、縫い目に対し直角で上げた場合、、、
前裾の具合(クッション具合など)が良くて股下を確定した場合、後裾側は写真の位置から3pも上がってしまう事になります。

逆に踵部のホールド感を良しとして股下寸法を確定した場合、前裾に+3pも付いてしまいますのでグニッとそれなりのクッションが入ってしまう事になります。
その様に見れば価値が歴然と見えてくるでしょう。

 当店では前後差3pをベースに、お好みであれば傾斜も緩く、もしくは強くする事も可能ながら、程好いバランスとは裾口幅にも連動しています。


 では最後に この『 FOX AIR 』を一部ご覧いただきましょう。

















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・・・・・グレナカートチェックがお好きなダグラス社長らしい素敵な配色のファンシーグレナカートですよね、こんなタウンスーツも是非来てみたい。

グランドがモノトーンベースでない事もGOOD!











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・・・・・欠かせぬソリッドシリースは色バリエーションも豊富であり、一部MIXも含まれています。
 スーツは勿論、オッドアイテムで差し色としても選び甲斐がありますね。











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・・・・・ストライプも御座いますのでビジネススーツにも是非如何でしょうか。
春夏地ではフレスコは欠かせぬ存在です。











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・・・・・激渋なガンクラブチェック、、、おっさん臭さもそれまた魅力!
こういった伝統的な古典柄をどう味付けして素敵に着こなすかが楽しいのですよね。

ガンクラブチェックと言えば、英国王も皇太子の頃に着用されていた この強烈にブリティッシュなインパクトが脳裏に残っています。
 凄く素敵です、、、、。







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・・・・・下の写真 インナーはP.O.Wチェックのシャツにレジメンタルタイ、そして靴はBLACK!




















・・・・・以上で御座います。
着てみたいと思われる様な生地は御座いましたでしょうか。

素敵な相棒を見つけに 是非とも皆様のお越しをお待ち申し上げております。
 今週も付き合い頂きまして、誠に有難う御座いました。









posted by 水落 at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 生地について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年03月11日

【 DINNER SUITS:N様のご注文 】






 皆様、今週は服飾史のお勉強から始めさせて下さい。
歴史を知れば納得の度合いがまるで違ってきますので、時代の流れの中で生き残ってきたスタイルへ親近感さえ感じて頂けるかもしれません。
 同時にそれらを見る目も今までと変わるのではないでしょうか。

先週はお休みでしたし、今週は少し長いので頑張ってお付き合い頂けましたら幸いで御座います!


















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・・・・・エレガントな夜の礼装ですね。
現代におけるフォーマルウエアは DAY FORMAL / EVENING FORMAL に区分けされ
日没前か日没後 という時間枠での括りとなります。

左に正礼装となる EVENING DRESS COAT(EVENING TAIL COAT=燕尾服)は
ホワイトのコットン・マルセラで仕立てられたボウタイ、ウエストコートを合わせて着用致します。

この正礼装に対し、準礼装の位置付けになるのが DINNER SUITS(DINNER JACKET =
TUXEDO=晩餐服≒SMOKING JACKET)となり、ブラックのシルクで仕立てられたボウタイを結びます。
(ディナースーツとの呼称は、1912年頃からとされています。)

 上記スタイル(ポジション)により、招待状に記載されるドレスコードはホワイトタイ、もしくはブラックタイとなり、単にその色のタイを締めれば良いのではなく、会の格式度合いにより正礼装が必須なのか、準礼装で良いのかなどスタイルを指定しているのですね、

ディナースーツ(ディナージャケット)にはシングル型とダブル型があり、ダブル型は1920年代に流行りだして一般化致しました。
双方はピークドラペル(剣衿)ですが、ショールカラー(へちま衿)もシングルとダブルで御座います。















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・・・・・1936年 フォーマルなウエストコートのバリエーションとなる一部です。
特徴としては胸元が大きく意図的に開けられています。
Vゾーンに対し(一番右側)、Uゾーンと仮に呼称するとして シングル型だとしても釦は腹部のみです。
 この意匠の最優先たる目的は、下着であるシャツとトラウザースの帯位置におき それら上下アイテムの分断線を隠す事にあります。
故に同じ目的となるカマーバンドも所謂 腹巻きで分断線を隠している訳です。



≪ Full Dress or Tuxedo Vest ≫ と記述がありますが
右以外は冒頭のイラストでいう正礼装か準礼装どちらにも採用されるスタイルという事です。


『クラシックは歴史そのものである』 というお話は当BLOGでも良くお伝え致しますが、テールコート(現代の正礼装)は少なくともWW2前まで 夜間の正宴、観劇、舞踏会などでの第一礼装として上流人士たちに着用されて参りました。

そう、夕食の際にはわざわざテールコートの着用が必須だった訳です。
そんな時代では食後に部屋を移し(ラウンジルーム)シガーなどを楽しみながら寛ぐ際、上着のみ着替えられたのです。
それがテールの無いラウンジジャケット型であり、その状況下よりスモーキングジャケット(ディナージャケット=ドレスラウンジジャケット)と呼ばれるようになりました。

 その後、エドワード7世より 夕食の際にはテールコートを省き、尻尾の無いディナージャケットでも良いとし、その流れが一般化されて参ります。
なので『夕食の際に着用する服』と呼称されるのですね。



という事で、この歴史的流れから見ても分かる様に、正礼装と準礼装は 上着のみを着替えただけ というのが分かります。
 故にインナーのウエストコートは Full Dress or Tuxedo (正礼装or準礼装)となっているのです。

ただし、その後の流れでは正礼装と準礼装で本来同じような仕様の中下もそれなりに区別化が進む事になります。
















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・・・・・上記の話からも、ディナースーツ(晩餐服)と呼称するのがご理解頂けたかと思います。
ディナースーツ(ディナージャケット)はブラックを筆頭に、ミッドナイトブルー、そしてチャコールグレーなどでも仕立てられますが、共に深く濃い色であるという事です。


上着のインナーにはウエストコートを着用か、カマーバンドが着用されていますが
共に腹部を隠す意図によりデザインされ、胸部が広く開くUゾーンスタイルゆえに 上着の釦を留めていればあまり見えませんね。

トラウザースの外脇にはシルクのブレード(側章)が付けられます。
昨今では正礼装は太いブレード、もしくは細ければ2本。
準礼装では細めなブレード、もしくは1本 という事で差別化されています。


ラペルを覆う贅沢な拝絹地は、主に腰ポケットの口布や、釦を包む事にも流用され、理想ではボウタイやカマーバンドなども同じ拝絹地で一緒に誂えられます。
 その拝絹はサテン地でツルっと光沢のあるもの、もしくはグログラン地(コード地=横畝地)で光沢感は落ち着き、マットなイメージとなる2種が主体となりクライアントにお選び頂きます。













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・・・・・1932年 C.ゲーブル氏の着用されるディナースーツはシングル型の三つ揃い。
ウエストコートにはショールカラーが拝絹であしらわれています。
衿の返りは直線的Vゾーンですが、Uゾーンは仕立てによる手間と難しさも伴います。

 釦はやはり腹部に集中しているのが分かりますね。












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・・・・・ウェルドレッサーの極みであり、ブリティッシュスタイルを語る上では現英国王から学ばせて頂く事は多く、同時に現代というリアルな状況や解釈さえ垣間見る事が出来ます。

このダブルブレストのディナースーツはモヘア混の生地ではないかと思われます。
2枚衿のシャツにパネルフロント、スタッズも敢えて省略されているのかも知れません。
この辺りはウインザー公のブレーキングルールに因んでいると言えなくもありません。

しかし なんてお似合いなのでしょう、、、こういった方々にとってディナースーツは生活に密着し、着馴染みと共に着こなされるご経験値が醸し出す説得力を感じさせてくれます。













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・・・・・おそらく同じディナースーツでありチーフやブートニエールが違いますが、教科書通りに白無地のシルクチーフでない辺りが既に超玄人です。

袖口にはラペルに同じ拝絹で仕立てられたターンバックカフがあしらわれていますね。
ディナージャケットでは腰ポケットにフラップは付けず、バックはノーベント、そして総裏で仕立てられます。
(これらの何故⁉ はまた別の機会に!)

 トラウザースの側章は1本、裾は必ずシングル仕上げ、靴下はハイゲージであればコットンでも可ですが 理想は英国王の様にシルクのソックスを履くのが本来では理想です。





 では ここからが本丸で御座います!
ここまでの予備知識の有無により見る目も少し変わって見られる嬉しいです。

今週は大変な御贔屓を頂戴しておりますN様より、とても素敵なディナースーツのご注文を頂戴致しましたので是非ご覧頂きたいと思います。
 その魅力的なディナースーツと共に、N様の粋な御心までをも感じて頂ける事と思います。





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・・・・今回お選び頂きました生地、これまた素晴らしい生地であり N様らしい審美眼を感じさせてくれます。


STANDEVEN

100% PURE ESCORIAL WOOL
250/270g

http://dittos.seesaa.net/article/500794032.html
【 ESCORIAL : SUITING 】



 かなり細かな格子柄のようにも見える織柄、ピケのダークネイビー。
ピケ≒マルセラ でもありフォーマル地としての繋がりもあり、敢えてブラックではなく、ミッドナイトブルーでもない 深きダークネイビーをご選択されました。


前提と致しましてN様はディナージャケットの類だけでも複数着はお持ちですから 今回のご注文は春夏でも着用出来るラグジュアリーで遊び心も加味されたポジションと言えるのではないでしょうか。

 ただ、この地薄で原毛の細いエスコリアル地はただでさえ仕立てが難しい部類に入りますが今回は拝絹(シルクフェイシング)が付きます。
これがまた密で織られ結構確りとしていますのでパワーバランスが全く合いません!

それを承知でどの様にバランスを考え調理するのかが腕の見せ所でもあり 遣り甲斐高きご注文で御座います。














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・・・・・この日のコーデはパープルがポイントですね!
穿けばとても軽い春夏地のウエイトであり、仕様はいつものシャープなシルエットの1-PLEATです。
裾は勿論シングル、側章は一番最後 仕立て上がってから縫い付けます。









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・・・・・春夏着用を考え ウエストコートはバックレスに!
N様お気に入りの裾剣付ダブルブレスト型を今回は更にリデザインし釦を腹部にまとめ、胸部を広くとります。
カーブの効いたショールカラーは拝絹でお作りしますが、傷や汚れも怖いので仮縫い時は切り躾で上がり型のみ確認頂きます。











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・・・・・特筆すべき事なく至ってベーシックで洗練されたダブルブレストは正にクラシックの極み、N様らしくとてもお似合いで御座います。

この仮縫いではラペル含めフロントのエッジに至るまで既に出来上り線で仕立てられています。
拝絹は絹ですから傷や汚れに注意、シルクゆえ冬のガサガサな指さえ引っかかります。
 更に水滴がついてしまったら水染みになりますし、コテあたりはとれません!

全て総手縫いで掛けていくのですが、その前に一手間掛ける事と、何かあった場合 高価な拝絹の買い直しも痛いですから やはり仮縫いでは拝絹を付けません!
 なので全然ディナージャケット感がないかも知れませんが、、、。

唯一この時点では 腰ポケットの口布として拝絹地が使用されています。


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・・・・・さぁ、ほぼ修正無しで仮縫いを終え これからFINISHへ向かいます。
仮組みされた上着を分解し、いよいよ拝絹掛けに入ります。

拝絹を迎える上で、実はわざわざ布団(ドミット)を敷くのですよ!
ドミッドはフワフワでガーゼの様な織地?編地?であり イセ込みながら躾で据えて参ります。


 拝絹が付く(掛かる)であろう面積一杯に布団を敷いて拝絹をお迎えです。
据えられたドミットはシルクの細い糸でハ刺しにて緩めにとめ、エッジは表地の縫代(折代)に 対し突合せでカットして千鳥縫い。
 唯一ゴージライン部はドミットが無く 端打ちテープ(伸び止め)が見えていますね。
剣先やその他エッジは既に前身頃の縫代が折り返され、その縫代と高さ合わせ含め突合せなのですが、ゴージラインにはその様な縫代は現状では無く 拝絹の縫代(折代)がこれらか発生しますので見越して拝絹縫代と突合せになる様 ドミットを控えてあるのです。

同色ゆえ、、、ハ刺しも千鳥も全然見えませんね、、、、
手間を掛けて手縫いで敷かれた布団なのですが(笑)。


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・・・・・片面終了です。
これで躾(白糸)を外し、馴染ませたらいよいよ拝絹を据えます。

もう拝絹掛けは超慎重で集中モードですから中間写真なんて撮っていられません!
切り込みや剣先も慎重に、、、、。



と いう事でいよいよお仕立て上がりです。






















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・・・・・側章(シルクブレード)はサテンかコードがあり、ラペルに採用された織りに合わせますので今回はコードの側章となります。

シルクは水に弱く、プレスしたらアタリが付いてテカってしまいます。
シルクでなければ付いてしまったアタリは取れば良いのですが、シルクは特性上とる事がかなり困難です。

 故に、仕立て上げ、最終の仕上げプレスを行った後
湯通しして縮絨したブレード(単体時ではプレス出来ます)を丁寧に手縫いで縫い付けて参ります。

ピリが出ないように、、、ブレードの両端を縫う訳ですが片側を裾まで行って折り返して帰り道の逆側を縫ってくると微妙にブレードが捻れる懸念があります。
 なので、、、片側15p縫い進めたら針をおき、逆サイドをもう一本の針で15p縫いすすめ、それを交互に繰り返して上から下まで、裾まで到達すれば折り返してヘムにも縫い付けていきます。

確りとした秋冬地のドスキンやバラシアなどであれば随分と楽なのですが、生地が薄くなれば、原毛が細く成れば難易度は増します。

 こってりと時間がかかる訳ですし、そもそもシルク地(拝絹・ブレード)は本当に高価なのでどうしてもイブニングフォーマルは高額になってしまうのです。


お尻のポケットにもフラップは付けませんよ、シルクの包み釦が見えるでしょうか!














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・・・・・ウエストコートも良い感じで仕立てあがりました!
美しいカーブを描くショールカラー、返り止まり前端のエンドがゼロになっていますが これもここまで綺麗に卒なく処理するには高度のテクがいるのですね〜。
 実際にここをゼロにせず 畳まれ角張ったエンドであれば沢山見受ける事が出来るでしょう。


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・・・・・上着も完成しました、、、傷も汚れも付けずにここまでたどり着き、あとは御来店を待つのみ!











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・・・・・表地ピケ(エスコリアル)の織柄がとても素敵ですね。
腰ポケットの玉縁には畝の方向をラペルに合わせて拝絹地を使用し、ポケットとして作ってはいますが あまり使われないので口は控えて中綴じしてあります。
 しかしご使用になるのであれば解けますからいつでもご使用頂けます。












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・・・・・拝絹はコード(グログラン)をご選択頂きました。
横畝が見えますでしょうか。
同じ生地で包み釦は畝方向を合わせて付けてあります。

この高価で繊細なシルク地にラペルホールをかがるのが本当に怖い!
針も新品に、手も洗いつつガサガサではないか注意し汚れと傷、皴に気を付けながらかがります。


布団(ドミット)の上に鎮座する拝絹、それなりのボリューム感が出ますしアタリなどの軽減含め段差をフラットにすべくドミットがその役割を担います。
 このほど良きボリューム感は触るとポフポフしています!

この拝絹掛けにおける所謂 『本仕立て』、本来BESPOKEでは昔ながらに当たり前の仕立て方ですが、昨今ではかなり省かれてしまっています。
 同時に縫製工場さんではこういった本仕立ては勿論無理ですから 簡易仕立て用には拝絹に工夫を施すのです。

拝絹地の裏に接着芯を貼るのですが、その接着芯自体がドミット状(スポンジ付き)になっていてボリューム感を持たせた接着芯をベタっと貼るのです。
 その拝絹地を通常の身返しを返す様にミシンで縫ってひっくり返します。
このやり方では段差軽減が本仕立て並みに出来ないので段差やアタリが出やすく様々なデメリットがあります。
雰囲気や触り心地も本仕立てとはまるで別物です。

ですが、大いなるメリットとして早くて簡単にできる、だから安価で済む という側面があるのですね。
既製品や貸衣装の類は全てソレとなります。

 ですから技術者であれば例えばウエルトポケット(胸箱ポケット)、やジェッテッドポケット(腰玉縁ポケット)、上襟掛け、拝絹掛けなど 所謂昔ながらの本質的な『本仕立て』で仕立てられているか否かは直ぐに分かります。
それだけ機械化や接着芯の仕様、そして機械化が進んでいるのです。

昔の服は逆にその殆どが本仕立てですから、、、
良くも悪くもベクトルの違う技術の発展、効率化により安価で大量生産も出来るようになったと言えるのです。


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・・・・・上から下まで拝絹が鎮座していますが、これが標準です。
ですが、中にはラペルの返り止まりより下は表生地と接ぎ合わせる事もあるようです。

安価な仕様で考えれば、少しでも高価な拝絹の面積を減らせます。
ですがデメリットの方が多く、本来ではNGであり、意味合いから見てもNGなのです。


今回の裏地は英国製のヴィスコースであり、シルクではありません。
シルクライニングも良いのですが、、、シルクは摩擦と水に弱いので汗含め裏地としては本来不向きです。
ただ、ビジネススーツなどと違い着用頻度は下がりますから贅沢着としては全然アリですね。

耐久性や滑りなどもヴィスコースの方が勝りますので実用的で考えるとコチラに軍配が上がります。












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・・・・・テールコートやモーニングコートの親でもあるフロックコート。
最早 ご先祖様レベルになってしまいましたが、このフロックコートは現代の様な昼夜に分かれず着用されていました。

スリムなチャーチル氏が着用するフロックコートのラペルをご覧下さい。
エッジから半分は表に共地、途中から拝絹たるシルク地になっていますね。
 こんなデザイン(仕様)を古い写真では多く見る事が出来ます。

そもそもテールコートやディナージャケットのラペルに付くシルク(拝絹)、あれは何で突然別布が、、、とお考えになった事があるでしょうか。
拝絹の由来につき ネット検索で出てくる説はいまいち信頼度が低くて、、、。

 その答えはご先祖様に聞いてみましょう!



上着の衿とは 上衿と下衿 に区別され、その分断・区分け線は襟ぐり線であるゴージラインです。
下衿 = 返り(折返り)衿 = ラペル そう、本来ではラペルとは内側を表側に捲られているのですね。

 捲られて見えている内側部分は 『身返し』 というパーツであり、一つ上の写真では拝絹部分全てが その呼称対象となるパーツです。
そして更にその身返しの奥に裏地(今回ではヴィスコース)が縫い付けられていましたね。
(身頃)を折り返して下衿となり、ラペルと呼称されます。



ラペル(返り衿)を起こせば(元に戻せば)学ランの様な立ち襟(スタンドカラー=詰襟)ですね。
そのスタンドカラーの第一釦、更には第二釦を開け 開襟シャツの様にネック部を捲り返して着用した場合 見えるのは身返し(共生地)と、チラッと見える その奥のライニング(裏地であり、当時の多くはシルク)なのです。
 故に見えている半分のシルクは『ライニングが見える』という体をリデザインしていると言えます。

このハーフシルクを更にリデザインし、前面にシルクで覆ってしまったという流れがテールコートであり、その更に流れをくむドレスラウンジ(ディナージャケット)ではないかと推測できるのです。


どうでしょう、この考え方が理に適う筈であり、歴史的繋がりを感じる事が出来ます。
この繋がりこそ歴史であり、進化を繰り返した本当のクラシックな紳士服なのです!




 はい、お疲れ様で御座いました。
今週の授業はここまでと致します!







では、大変長らくお待たせいたしました。
最後に美しくエレガントなN様のお姿をご覧下さいませ。













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・・・・・ドレッシーな内羽根のプレーントゥ、なんと穿き口にはシルクのトリミングが、、、。
この日は着用を想定してきて下さりました。

実はこの日の夜、早速今回のディナースーツをデビューする御機会があるとの事。
その時は本式にオペラパンプスにも履き替えられるようご持参されているそうです。
 早速のデビューが楽しみですね。









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・・・・・ご着用されているT&AのBESPOKE SHIRTSはパネルフロントですが、スタッズとシェル釦の両方が楽しめる仕様との事。

兎に角エレガントで決まっており、生地も黒ではない辺りがN様らしく思います!


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・・・・・如何でしたでしょうか。
少し語り過ぎましたが、、、説明しだすと中途半端で終えられませんので恐縮で御座います。

今回はイブニングフォーマルな歴史の勉強と共に 素晴らしきディナースーツをご注文下さったN様に心よりの感謝を申し上げます。



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御納品してまだ間もないのですが、既に2回もご着用頂け 評判も良いとの事で嬉しきご報告も頂戴致しました。
 流石にそれだけご着用頻度があるのですからディナージャケットだけでも様々に楽しまれるべきで御座いますね。

昨今では様々なファンシースタイル、それに伴う付属のバリエーションも御座います。
 また拝絹自体もシルクにブレンドなどの交織や化繊地など品質も様々です。
お値段がピンキリになるのも少しはご理解頂けましたでしょうか⁉




フォーマルウェアを誂えるのであれば、お店選びも重要です。
それなりに歴史含めた知識、そして経験が必要ですあり、その有無により生み出されたフォーマルウェアは 服の発する説得力自体が俄然違う筈であると私は思っています。




N様 この度も素敵なご注文を賜りまして、誠に有難う御座いました。

 そして長きに渡り最後までお付き合い頂きまして 重ね重ねお礼申し上げます。






posted by 水落 at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | クライアント様の洋服 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする