・・・・・古き Savile Row での裁断風景です。
私達テーラー(CUTTER)はこのようにクライアント様の型紙を引き、ルールに伴ってパズルのように効率よく蜜に型紙を並べ 裁断して参ります。
この風景は今でも変わりようがありませんが、大量生産を前提にみれば機械化は進み 型紙レイアウトもPC内で行い、レーザーで綺麗に素早く裁断が出来ます。
ですが、この写真の様に格子柄になると二重に畳まれた生地を裁断する際 上下の生地で柄合わせが必要になるので 工場さんでも手裁ちは残っています。
この写真に使われている生地はグレナカートチェックでしょうか。
前身頃と後身頃で逆さま、山袖と谷袖も逆さま、JKとWCでも互いに逆さま、この方が効率よく蜜に裁断出来るとの優先順位であり、昔の一着分に伴う用尺が短いのは こういった要因も含まれているでしょう。
ですが、カシミアなど毛並みのある生地含め方向性のある生地は必ずや一歩通行で生地方向を全パーツ合わせなければなりません!
触り心地は勿論の事、生地方向で見栄え的な色味さえ変わるのですが コーデュロイやベルベットなどは特に顕著ですね。
写真で裁断されている生地はグレナカートチェックと仮定した場合
厳密に言えばグレナカートチェックには天地(柄の上下)があります。
故に本来では一方裁ちが望ましく、特に丁寧な日本では重要視されているとも言えます。
その分 生地用尺は増えるのでコスト高ではありつつも、、、
業界人でない限りは そんな一方裁ちなんて なかなか気付かれないかも知れませんね。
・・・・・コート(上着)の襟型製図ですね。
左からノッチドラペル用、ピーク用、ショール用と並んでいます。
根本的な製図方法はどの国においても大きく変わる事はありません。
ただ、衿腰幅や寝かし量、デザイン線的な部分は違うでしょう。
因みに、ショールカラーを頭にイメージされてみて下さい!
ノッチやピークの上襟は、左右でのゴージラインまでがそれぞれの上襟エンドです。
しかしショールカラーの上着はゴージラインが無いですよね!
実は地襟自体はノッチやピークに同じく(上図)ゴージラインで切り替えています。
しかし、上襟となる部分は身返し自体で一緒に補うよう長くとられ、ゴージラインを覆い隠し、首の後ろ(バックセンター)でエンドとなり接がれているのです。
これはエンドライン自体にノッチ(刻み)やピーク(尖がり)が無いからこそ可能な芸当となるのですね。
・・・・・裁断書に関しては 先人たちの遺した貴重な書物が結構残っています。
しかし、縫製書はそれと比べて本当に少ないので貴重です。
上の写真、左中にはBODYの襟ぐりが見えますね。
そこに合わせて『地襟』をクセ取りして付けようとしている所です。
鎌襟、棒襟、そして標準的な襟、、、この辺りは別の機会にしますね。
今週は当店のクラフツマンシップをご覧頂くべく
TAILORINGにおける続編、襟作りに関し 皆様にご覧頂きたいと思います。
当店 BESPOKE は当たり前の事ながら、HOUSE STYLE ORDERによる『上襟ハンド仕立て』のオプションをお付け下さる方々もじっくりご覧頂ければと思います!
・・・・・BODYは襟・袖のな無い『ちゃんちゃんこ』状態になりました。
襟ぐりを整え、型紙を当てて正確な現物距離(付け寸法)を測りますよ。
・・・・・襟の型紙は必ず人それぞれに準備してありますので、型紙よりやや大きく荒立ちして芯地を裁断、裏にはカラークロス、一部伸び止め力芯とでセットし、それぞれの素材を一つの『地襟』とすべく ハ刺し にて縫いまとめて参ります。
地襟の芯地、これは贅沢にも IRISH LINEN を使用しています。
業界では通称「エラス」と言い、これはエラステックからきています。
バイアス(生地の縦横に対して45度の斜め方向)で裁たれた芯地はあたかもゴムの様に伸び縮みするのです。
襟とは人間の首に伴い、ぐるりと覆うカーブ線を描く事、そして縦方向・首に沿うように昇っていく様なカーブを描かせます。
この複雑怪奇な形状を立体的に表現するには この麻のバイアス芯が一番優れているという事ですね!
成形に純真で素直、それなりのハリコシを持って安定的な形状を保ってくれます。
新品時は(意図的に)やや確り感がありますが、着込めば麻の芯地はクタクタに柔らかく馴染んで参ります。
カタカナの「ハ」に見えるからハ刺し、ピッチや方向、指し方に違いはあれど
目的は皆同じです。
ただし、これも価値観により 糸やピッチ、指し方も色々です。
強いてメリットを活かすとすれば、、、と考えるとより良き手法に導かれますが、それらは往々にして時間が掛かってしまう方向に進むのですね。
こんな見えない所でも差が出るものなのですが やはりほぼ気付かれぬ部分でしょう(笑)。
・・・・・ハイ、ハ刺しが刺し終わり、BODYに縫い付ける部分のみ 綺麗に出来上り線でカットしました。
(地襟・下部=ゴージラインから衿腰部)
私自身は地衿の型、サイズを意図に基づき制御しますが、大きめにザックリサイズでハ刺しし、BODYに宛がい適正サイズで切り落とす手法もあります。
ですが後者はハ刺しの糸を切る事になりますし、過剰な面積へのハ刺し自体も無駄となるので個人的には好きではありません。
・・・・・バキューム付きのプレス台へ来ました。
地襟は先ず返り線で折り返し、そしてクセ取りにより UFO の様な形状に成形します。
これで首を縁取るカーブの印象が出てきましたね!
・・・・・裏側、カラークロス側であり、折り返された衿腰部が見受けられます。
このカラークロスはウールの織物であり、やはりバイアスです。
とても柔軟で成形が効き、もう一生 衿芯と共に一体化され 連動します。
オーバーコートの場合は襟を立てたりもしますので、共生地を裏にも使用する事があります。
ただ、共生地の場合は襟裏に特化した性能を持つカラークロスより「その個所では」性能が落ちますのでデメリットが幾つか発生する事になります。
故に優先順位は? が決め手となります。
・・・・・衿腰がベタっと返り線と共に引っ付くほどの状態では、襟ぐりの付け寸法自体はかなり伸びている現状にあるのですね。
故に襟腰のみ 改めてクセ取りで縮めると付けやすくなります。
衿腰部が少し立ち上がりましたね、これが付け寸法が縮んだ証拠であり、距離が短いので座る事(接地する事)が出来なくなったという事になります。
この付け寸法(襟腰)は、どうせ縮ませ過ぎてもBODYの襟ぐりカーブに合わせれば自ずと適切な距離へ戻ります。
・・・・・BODY(襟ぐり)に重要なポイントを優先的に合わせ、躾で縫い留め セットします。
背中心線、肩縫い目、そして返り線(ラペルとの連動)、ゴージラインと言った具合です。
肩傾斜など左右非対称度合いが大きな方は、左右で襟ぐりの距離も変わります。
なので当たり前なのですが、肩パッドや地襟自体も非対称で作られています。
躾で仮止めしたら「カラゲ縫い」という手法でBODYに縫い留めて参ります。
このカラゲ縫いとは解れ止め効果もあり、形状が三角となる千鳥縫いよりも細かく縫われます。
襟芯(麻)は目立ちますので絶対に見えないように隠したいですね、カラークロスのエッジより 0.5〜1oくらい控えて裁ち合わせております。
(正確には襟芯の幅が正しく、+αをしてカラークロスを裁ち合わせます。)
確りと地襟がBODYに縫い付けられましたら簡単に部分プレスして地襟とBODYを馴染ませておきます。
次は上襟(共生地)ですよ!
・・・・・冒頭の写真でご覧頂いたように、身頃や袖など主要なパーツは型紙を当てて裁断します。
その時には必ずロス(隙間)が発生する訳ですが、実は『ここで〇〇をとろう!』と加味しながら裁断レイアウトを決めています。
残った残布より、ポケット作りに伴うパーツや、後に作る上襟などは確保しておかなければなりません。
ターンバックカフス付きのご注文であれば結構な横地を確保しておく必要がりますね、
この写真は上襟用にキープしておいた残布であり、細長い横地です。
チャコで矢印が見えますが、生地方向であり、後身頃の裁断方向でもあります。
後身頃と上襟は連動していますので必ずや方向を合わせなければなりませんから すぐに分かる様 残布には矢印を入れておきます。
(これに同じ行為が必要なのが腰ポケットのフラップや、胸ポケットの口布です。)
おおよそで目で追える程度に横地の目を合わせていますが、まだ正確な100%の横地ではありません。
という事で、、、地味に緯糸(横糸)を抜いて参ります!
端から端まで ピーっと一本の横糸で繋がって解けるまで続けていると、、、だんだんマフラーの様なフリンジ状になってきますよ。
これが格子柄であれば、横縞を追って直ぐに100%の横地の目が導けますが、無地や縞柄、更には起毛されたフラノなど微塵も横地の目を追えませんので この様に地味な作業で100%正確な横地の目を導きます。
・・・・・端から端まで横地が通ったら はみ出したフリンジ状の経糸をカットします。
これで完全・完璧な横地の目が拾えましたね!
・・・・・その整えた横地(写真では上辺)を襟のエッジに見立て、上襟自体を荒立ちで裁ち合わせます。
一部印(切り躾)がありますが、主要なポイントと共に返り線ですね。
これはクセ取りを行う際の目印となります。
正に一直線な上襟エッジ、こんな直線が地襟に付く訳がありません!
そこでクセ取りにより整形して理想的な襟型へと動かすのです。
・・・・・地襟(芯)でも UFO型にしましたが、上襟も一緒です。
一体化させて一つの襟となる訳ですから当然ですね。
カーブの具合、寝かし、それぞれ意識して!
更に、、、
・・・・更に、、、見えますでしょうか⁉
この生地はヘリンボーンであり、縞柄です。
100%の横地であるエッジラインがカーブで曲がりました。(曲げました。)
その際、縦地となる縞柄は綺麗に直下線で落ちるよう強制的にクセ取りで仕向けます。
生地とは縦糸と緯糸の交差であり、本来であれば格子柄は直角・平行で構成されていますね。
であれば、緯糸に対し経糸は直角前提で考えると この様に縞柄は直下線ではなく扇方に向く筈です。
それを無視して強制的に直下線で成形させる、これも正にクセ取りです。
・・・・・次は、エッジ(100%の横地)を一縫代で予め折り畳んでおきます。
ここには出来上り線でカットされた麻の地襟芯のエッジをスポっと覆い隠す事になります。
綺麗なライン、、、、これを経験により身体に覚えさせておかねばなりません!
・・・・・随分と撮影なく進んでしまったようです、、、。
本当は撮影している事自体不効率で面倒ですから ちょっと集中すると直ぐに忘れて進行してしまうのですね(汗)!
順を追って上襟の共地を地襟に躾していき、馴染ませて一体化させます。
「上襟据え」という工程ですが、据えが終わればまとめ(手縫い工程・縫い留め)ですよ。
それが この写真の状況です。
エッジはやはりカラゲ縫い、カラークロス側から針を刺しているのがポイントです!
勿論エッジから指してもカラゲ縫いは出来ますが、その針を刺す方向でさえ意味があるのですね。
・・・・・アップで見辛いですが、右側の衿刻み部『ゴージライン』です。
ゴージラインは縫い方が変わって「梯子まつり縫い」にスイッチです。
緩く縫い過ぎると縫い目は笑い(口が空くように開く)、きつ過ぎると地の目を歪めます。
適度な頃合いで縫わなければなりませんよ!
下の写真では分かりやすいと思います。
縫った糸があたかも 梯子 の様に左右へ渡っていますね!
縫い加減も重要ですが、ゴージラインに対し平行・直角で保てなければ地の目は歪みます。
そんな顔である襟部のコージラインですが、ハンドメイド以外の服は全てミシン縫いされています。
・・・・・まとめ(手縫い工程)が終われば部分プレスで上襟自体を確りと地襟に馴染ませるようにプレスします。
ゴージラインが返り線の向かって上りゆくカーブ線である事が見受けられますね。
ゴージラインとは 本来では「襟ぐり線」であり、カーブ線ですから これがリアルで本当にあるべき姿です。
大量生産ではミシンでゴージを縫いますし、これら曲線を無視して直線に修正され設定・製造されているのですね。
そりゃあ 直線より曲線の方がリアルでありつつ色気がありますよね!
如何でしょう、、、首を縁取る綺麗なカーブ、首に寄り添うような立ち上がるカーブ、
人間がどれだけ曲線かがお分かり頂けるでしょう。
だからこそ難しく、それを成し得るのが職人の技術なのですね。
ここで少し名称(呼称)について一応整理しておきましょう、
襟・衿・・・洋服と和服的な区別もありますが同じで結構です。
上着の衿と言えば 下衿(ラペル)と上衿にて構成されています。
その上衿とは 地衿(裏であり、土台であり、芯地)と上衿(共生地衿)で構成され、まとまり一体になると上衿と呼ばれます。
面倒ですから覚える必要はありませんが(笑)、今回の様な話では分離して呼称しなければならないのですね。
お疲れ様で御座います、、、後もう少し!
・・・・・衿付近までは裏地を既に躾し、据えておいた状態になります。
衿の工程が終わったので、その部分(衿周り)の裏地を最終的に据えて参ります。
・・・・・ここは裏側(内側)の肩縫い目です。
前回 表地は沢山のイセ込みが内蔵されていましたね、当然ながら同等か+α位のイセ込みを裏地にも入れておかなければなりません。
なおかつ、そのイセ込みは乱暴だと直ぐにギャザーの様になってしまいます。
裏地側は直接身体に触れる内側です、少しでも無駄な凸凹は無い方が良いに決まっていますね!
実際 凹凸があれば凸の部分が優先的に摩擦を受けるのでダメージが集中します。
理想的であり、かつ最高とは、、、考え出すとキリがないのが職人の世界でもあります!
・・・・・ふぅー、皆様もお疲れ様で御座いました。
最終プレス、仕上げではフラワーループを縫い付けて!
フラワーホールは第一釦ホールの名残であり、その名残に花が飾られるようになったのでフラワーホールです。
その花の茎やシルバーのフラワーホルダーなどを留めておくのでフラワーループなのですね。
実際に使われる方は少ないでしょう。
ではいらないのか⁉ そうではないのが伝統的な紳士服ですよね!
最後に ウインザー公の格子柄スーツをご覧頂き 締めと致しましょう。
・・・・・ハンドメイドで仕立てられた掛け替えなきBESPOKE SUITS。
その上襟は 今回ご覧頂いたように、100%の横地拾いによりクセ取りで成形され、美しく上襟へと成り立ちます。
格子柄であれば この様にエッジに100%の横地が綺麗に縁取る事になります。
これがあるべき姿であり、仕様となります。
では、大量生産含めハンドメイドではない上襟はどうなのか、、、
1着1着 クセ取りした上襟を躾で据え、手縫いで縫いまとめるなど出来ませんね。
そもそもTAILORではない方々は クセ取りはしない・出来ないという事になります。
故に、残しておいた横地残布に 既にUFO型の襟型で裁断して地衿と結合します。
そうなれば上襟のエッジはカーブ線に伴い 斜めに横地柄が切れてエッジに沿って平行に通らなくなる事を意味します。
そして横地の目は通っていなければ(切れていれば) より生地は伸びやすく、裏側には部分的に接着芯をも貼ってしまうのですね。
横地を通す行為とは、見栄えの為だけに行う技術ではないという事です。
横地を通す事により見栄え的な美しさは勿論の事、生地の安定感が全然違うのです。
勿論BESPOKEでは接着芯も貼りません。
されど 切られた横地(近バイアス)は伸びてしまうので接着芯で留めますが硬くなりますし、剥離の懸念や、クリーニングなどによる縮みの懸念もあり 接着芯自体を出来れば使わない方が良いに決まっています。
1年、5年、10年と着用を重ねた時、その上襟の違いはどうなっているでしょうか。
とても大きな差が付く事は明白です。
ここでポイントとなるのが手作りなBESPOKEは数十年着用する事を前提にして仕立てられます。
大量生産の服は直ぐにくたびれ、型崩れを起こし、へたりやすいと言えます。
だからこそ次が売れる訳ですし 買ってもらわなければなりません。
それ故のお値段とも言えます。
では そう考えると高級なブランド品は品質(仕立てレベル)と値段が見合っていませんが、ここはここで また違った価値観がありますよね。
より良き品質を求めれば不効率なハンドメイドしかなく、それが発祥でもあり 先週のVINTAGE SUITINGなどにも通じる部分も多々御座います。
先人から培われてきた技術は機械化できぬ事ばかりです、だからこそ修行して技術を身につけ、磨き続ける必要があるのです。
掛け替えなき手作りの洋服を纏った時のご満足度は格別である事が当然でなければなりません。
そんな当たり前のことを当たり前に成し得られるよう 日々精進致します。
少しでも高度で手作りな温もりのこもった仕立服にご興味を持って頂けましたら何よりの幸いで御座います。
皆様、どうか引き続き宜しくお願い申し上げます。
今週は特に長く、本当に最後までお付き合い頂き 誠に有難う御座いました。
皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。