
枝垂れ桜:皇居 乾通り
《下》紅枝垂れ桜

新年度が始まりました。
今年も美しく咲き誇った桜を楽しまれたでしょうか。
春の訪れを告げる圧倒的な美しさと、儚く散る潔さ、桜たる最大の魅力なのでしょう。

SPIRING AND SUMMER, 1934
The Tailor & Cutter Limited(英国)
・・・・・当時の紳士達が装っていたエレガントなスタイルは様々なT・P・Oに応じ多岐に渡ります。
クラシックな紳士服には歴史がり、それらのルーツを辿れば やはり大英帝国に辿り着きます。
日本がアメリカのアイビールックに惚れ込み とても大きな流行を生みましたね。
ですが、そもそも米国の学生たちは英国の学生たちに影響を受け、真似ていたのです。
英国への憧れを更に高めたのは紛れもないプリンス・オブ・ウェールズ(後のウインザ―公)であり、イングリッシュドレープスーツを着こなした往年のハリウッドスター達でした。
美しき完成された物やスタイルはいつの時代でも心に響き、揺るぎない説得力を持ち合わせます。
偉大なる作曲家によるクラシック音楽の旋律はいつも時代でも色褪せる事はありません。
良い意味で紳士服のクラシックスタイルは良い形で良いままに 淵源を重んじながら残していきたいと願い精進しております。
さて、今週はご新規様となる H様のご注文 をご紹介させて頂きます。

・・・・・多くの才能を持ちあわせたエレガントなC.ビートン卿。
英国の美しきスタイルを語る上でも欠かせぬ御方です。
大変クラシックでエレガントな三つ揃いはシングルブレストの三つ釦、6釦‐5掛けのウエストコートは襟付きをお召しです。
その三つ揃いには揃ってエッジにハイピングが施されていますね、手の込んだ意匠です。

・・・・・さて、今週の主役である H様 にご登場頂きます。
長きに渡り『誂え』を嗜まれてきたご経験値の高き御方で御座います。
この誂えの世界に入った切っ掛けは靴であったそうです。
フランス靴に始まり、イタリア靴、そしてテーラードクロージングにも波及し、海外で誂えてこられたそうです。
今では日本国内でも腕のある複数のテーラーで誂えを楽しまれております。
どちらかと言えばお手持ちな靴のテイストに合うようなスタイルのお店と言えるでしょう。
甘いものがお好きな方でも たまには辛いものを食べたくなる、それに似たお気持ちであったかどうかは別と致しまして、、、御縁あって当店のお仕立てする三つ揃いにご興味を持たれ 光栄なるご注文を頂いた次第です。
辛いものでも 様々な種類があり、それぞれに深き奥行きが御座います。
是非ご堪能して頂けましたら幸いです。

・・・・・当BLOGも時折ご覧下さっておられたとの事で大変光栄な限りで御座います。
その中で頭の片隅にあった生地、、、在庫が御座いましたので生地は直ぐに決まりました。
【 VINTAGE MOXON A 】
あのモクソンのヴィンテージです、低速織機が当たり前の時代に 今より何倍も時間を掛けてフィニッシングされた生地です。
渋きブルーグレーはとても複雑な織柄が施されています。
今ではもう見る事のない織柄であり、当時の拘りと豊富なバリエーションには驚かされます。
この生地を使って「英国的でクラシックな三つ揃いを」。
デザインや仕様面は至ってベーシックですが、H様のお誂え経験においてもハイライズの本質的な吊り用トラウザースは始めてとの事でした。
そんな所も遣り甲斐を感じます!
そもそも美しき調和のとれた三つ揃い、
スーツはそもそも三つ揃いがあるべき姿であり、三つ揃いたる調和を持って全てが設計されているのです。
此度は良いご機会を頂戴致しましたので、H様の素敵な三つ揃いと共に
『 三つ揃いの美学 』についても少しお話させて頂ければと思います!

・・・・・流石はモクソン、コテも良く効いて仕立て映え致します。
三つ揃いが当たり前であった流れは世界大戦時より崩れ始めます。
戦時中ですからウエストコートが省かれるようになってきたのですね。
トラウザースの帯位置は身体を上半身と下半身に分断する位置となります。
この位置を高くする事で脚長効果と共にスタイルを良く魅せる事に貢献します。
ゆったりとしたクラシックな2-プリーツは内向き、ブリティシュはINですね。
帯の持ち出しは前カンではなく釦留めをご選択されました。


・・・・・個性的なカラーリングとデザインの靴ですね、その個性に負けぬ素敵な ODD JK にて御来店下さりました。
1st仮縫いを経て、2nd仮縫いまで漕ぎ着けております。
ガラッと精度は上がっておりますが、更に細かな所も含め必要たる補正を確認致します。


・・・・・ウエストコートはC.ビートン卿に同じく衿付き、ハ刺しを行い上着のラペル同様に返す仕様です。
ウエストコートの丈は、トラウザースの帯を隠す位置で設定されます。
故にウエスト丈となりますのでウエストコート!
このトラウザースの帯が伴う上・下半身の分断線を隠す、これは美意識的な意味合いも強く、そんなウエストコートと同じ役割を担うのがブラック・タイでのカマーバンドなのです。
深き股上のトラウザースは吊っているからこそ そのポジションを維持しています。
吊る事を放棄したのであれば 股上はそのポジションを維持出来ませんから落ちます。
当然の如く股上は低くしなければならず、リアルな腰位置付近までグッと下げる事になります。
であればウエストコートの丈も追従させるように丈を伸ばさねばなりませんね、もとの丈のままではシャツが覗いてしまいます!
この写真のバランス(WCの着丈)に対し 更に5〜6pと丈を伸ばしたバランスのウエストコートを想像してみて下さい。
どれだけ胴長になるのか、、、お分かりですね、本来でのデザインされたバランスは崩壊します。
また、ウエストコートは釦を留めれば身体のラインが浮き出るようなフィッティングである事、仮に腰穿きなベルト用のトラウザースであった場合、ベルトのバックルはどれだけ膨らみ、見栄えと共に邪魔になるでしょうか。
この様に順当に見ていけば、三つ揃いのトラウザースはそもそもハイライズな吊り用であるべき事がご理解頂けるでしょう。


・・・・・H様は右肩下がりの度合いが強め、配慮の上で型紙が引かれていますが もう少しですね。
起点から右ネック、そして右肩傾斜を修正しますね。

・・・・・凄く素敵でお似合いで御座います。
エレガントなシェイプがとても映えます。
シングルブレストの3釦という括りの上着でみれば H様お手持ちのスーツやジャケットがそれなりにある事と思います。
ですが今回は結構印象が違う事でしょう。
先ずは本返りなラペルによる3釦である事、いつもの感じよりVゾーンはコンパクトで「包まれている感」が増し、スッと落ちる直線的なフロントカットも印象を分けます。
打合いも現代的な上着よりやや深めに設定されています。
軍服をイメージされてみて下さい、身体が服に包まれる面積が大きければカチッとした印象を与え、これを段返りにすればVゾーンは広がり 急にリラックスした感じが出ます。
こう見るとスーツのルーツを辿れば軍服ですから、その系譜を踏まえたブリティシュライクな雰囲気を硬過ぎるとすれば、良い意味で砕いた解釈で展開を進めればイタリアンな感じに流れ着く事が分かります。

・・・・・クラシックな範疇におき、上着の丈はやはりお尻をホールドしていなければなりません。
同じ身長だとしても人それぞれに腰位置が違いますから 見合う・似合う適正な着丈自体も人ぞれぞれと言えます。
着丈が決まればウエスト位置の設定です。
やはりスタイル良く、見栄え良く的な要素も踏まえ ウエスト設定位置はやや高めに設定されます。
これはリアルなウエスト位置より随分と高めになるのですね。
3釦で言うとセンター釦がウエスト設定位置であり、一番クビレの出る・シェイプされる位置となります。
軍服であれば ここに上から締めるベルトが来るわけです。
(2釦であれば上の第一釦がそこにあたりますが、パドックカットは例外です。)
実は、この上着のウエスト設定位置に三つ揃いの中下は当然連動している・させているのです。
JUSTではないにせよ、このセンター釦付近にトラウザースの帯があり、その帯位置でウエストコートの丈が設定されている訳です。
これが三つ揃いに美しき調和をもたらし、三位一体で一つの SUITS として設計・構成されているのですね。
では、、、ここで疑問が生じてしまいます!
近代ではウエストコートが省かれ、トラウザースはもう吊らない!
昨今の2P-SUITSをイメージして下さい。
吊らなければ維持できないハイライズのトラウザースはリアルな腰位置まで股上を低く落とす事になります。
ここで下物は ウエスト設定位置がグッと下げられました。
スーツである以上、上下での調和を考えれば上着も合わせてウエスト設定位置を下げなければ調和がとれませんが、そんなローウエストの上着なんて見た事が無いでしょう。
そう、格好悪いしバランスも崩壊しますので下げられないのです。
結論的にスーツである上下でウエスト設定位置が大きく乖離してしまう事になってしまいました!
下げた股上のトラウザースでの帯位置・ベルト(バックル)位置に3釦のセンター釦があれば調和ですが出来ない、ではその乖離したままの間抜けな隙間は、、、、
未だ解決できずに現代に至り、その矛盾したバランスに慣れさせられているとも言えるのですね。
スーツは本来三つ揃い前提に設計され、あるべき姿であるからこそ美しい。
2Pでも吊り用のトラウザースで良かったのに、、、という考え方も一つですね。
(吊らなくてもハイライズでの設計・仕立て方は古より存在しております。)
クールビズでスーツ姿のお父様方がネクタイだけを外します、、、これも何か足りない感満載で間抜けですね、実はそれに近いものがあるという風に見受けられます。
難問なので御座いますよ!


・・・・・いよいよ仕立て上がり、改めてご足労頂きました。
タイの小剣よりチラッと見えるそのマークは、、、H様らしいです!
はじめての吊り用トラウザースは如何でしょうか。
走っても、しゃがんでも、どんなに動いても帯位置は常にそこにいる。
プレスの効いたクリーズラインは常に吊り上げられており、シャキッとシャープに流れ落ちるのです。
吊り用TRのウエストサイズはJUSTではなくユトリを加えますので楽でもあります。
ベルト用ならベルトで、ベルトレスならアジャスターでウエストを締め付け 固定しますね、吊り用では もうウエストを締め付けなくて良いのです!

・・・・・ハイバック仕様にアクセントとなるバックアジャスター(吊っているので事質上は飾りです)、尻ポケットは左右にリクエスト通りお付けしております。

・・・・・本日はシックなスーツでの御来店でしたからダークシューズですね。
見事なフィッティング、靴の履き皴を見れば分かりますよね。

・・・・・中下の連動性も綺麗で調和し、バランスもバッチリです。
そうなる様 仮縫いをして参りましたので当たり前ではあるのですが、凄く素敵です。
後ネックにミツ布を使った仕様はシャツのカラーに沿わせ、首周りも美しく寄り添いホールドさせます。
背中はアクセントに背ベルトをリクエスト、これも絞らずともボタンを留めればこのフィッティングですから ほぼ飾りではあります。
H様。背中もスッキリと綺麗になりました。


・・・・・とにかく素敵です、美学に伴う三つ揃いは美しい。
胸部のドレープからキュっとセクシーなウエストシェイプ、そして腰へと広がるアワーグラスなシルエットは英国の、紳士服の一番エレガントであった頃に系譜します。
これこそ裁断(型紙)と縫製の融合により生み出されるハンドメイドな仕立て術です。
何も言葉はいりません、ただただ美しくエレガントな三つ揃いが本当にお似合いであり 素敵です。
そもそもテーラードクロージングを長きに渡り嗜み、誂えを堪能してこられたご経験値は高く、スーツが本当にお似合いで御座います。
H様が求めて下さった三つ揃いは如何でしょうか。
パリッとプレスの効いたスーツは出来立てホヤホヤであり とても緊張状態です。
H様が着用されることで緊張もほぐれ、馴染みつつ寄り添って参ります。
着用という対話をこなして下さい、着なければ分からぬ事も多分にあります。
それにしても素敵ですね、、、、惚れ惚れ致します!


・・・・・如何でしたでしょうか。
H様におかれましては既にデビューされ、吊り用トラウザースの魅力についてもご理解が進んでおられるご様子で嬉しい限りです。
スーツにはスーツの役目と魅力があります。
どの様に着るかはご自由ですが、主役はあくまでも御本人様であってスーツは額でしかありません。
しかし、その額次第でより一層に主役を引き立て、御着用自身にも自信含め何かしらの力を与えてくれるテーラードクロージングが本当の意味では本物なのではないかと思います。
手仕事でしか成し得ぬ技術は多分にあり、様々なテクニックや知識は全て顧客様のご満足を叶える為に注がれます。
次のご注文も着用を重ねながら悩まれるとの事で、、、次はどんな生地で どんなご注文でしょうか。
楽しみにしております。
H様、素敵なご注文を賜りまして 誠に有難う御座いました。

では、皆様のお気持ちがこもったテーラードを誂えるべく
御来店を心よりお待ち申し上げております。
今週も最後までお付き合い頂きまして、重ね重ねお礼申し上げます。














































